見出し画像

【メモ】ブランドの拡張による希薄化のリスクについて

強いブランドの優位性についてHoefler と Kellerによれば、以下のように「強いブランドが持つ利点」について述べている。

1.考慮集合(Evoked Set)に入りやすくなり、選択されやすくなる。
2.情報により気づきやすい
3.別のブランドにスイッチすると損をした気分になる
4.「ハロー効果」によってブランドの広告をポジティブに判定する
5.あいまいな情報に対してブランドの評価が高いものになる
6.ある程度正解に近い解を見つけ出す「発見法」として用いられる
7.商品評価、品質知覚、購買率、市場シェアを高める傾向がある
8.ブランド拡張が成功しやすくなる
9.価格上昇に対する耐性がある
10.ユニークな広告表現はよく知られたブランドほど効果が高い
11.流通業に商品を受け入れられる傾向がある

以上のように強いブランドは投下したリソースの効率的な回収や有効性、ブランドロイヤルティ、価格、ブランドの拡張、競争優位性、交渉力を向上させる。

このように事業に有効な働きをもたらすブランドの強さについて、それを向上させる視点のほかに、「しないこと」を明らかにすることも重要な視点であると考えた。

そこでブランドの希薄化という、ブランドの強さを低下させる概念について調べた。

一般的に、ブランドの拡張により特定製品カテゴリーとの一体感が弱まったり、既存ブランドのイメージが拡散してしまうことを「希薄化」と呼ばれている。

希薄化は何らかの形で既存ブランド・イメージが弱まることを意味し、その原因の多くががブランド拡張によって、拡張した新製品の連想と既存ブランド・イメージとの不一致にあるとされている。

希薄化のタイプ

・「異なる」意味の付与による既存ブランド・イメージの拡散
(ばらけて弱まる)

・「反する」意味の付与による既存ブランドイメージの中和
(0になる)

希薄化の影響要因

・情報処理に対するモチベーション
高い状態→拡張新製品が既存製品と類似しているか否かにかかわらず、拡張新製品の不一致が既存ブランドの希薄化をもたらした。

低い場合→希薄化をもたらさない。

・情報へのアクセシビリティ
高い状態→既存ブランド・イメージと拡張新製品の連想との不一致によって評価する。

低い場合→既存製品と拡張新製品の類似性が高いほど拡張新製品の情報の不一致度が高まる。

・ブランドを保有しているか否か
ブランド所有者→既存ブランドに好意的でありそれとの不一致に強く反応する。

非保有者→ブランドに対しそれほど多くの情報や思い入れを有しておらず相対的に不一致を低く認識する傾向にある。

希薄化の発生形態

・既存ブランドと異なる連想
┗既存製品と異なる領域にブランド拡張するほど生まれる可能性が高まるためこの種の希釈化は拡張新製品が既存製品と異なる製品カテゴリーで展開されるほど高まる。

・既存ブランドと反する連想
┗拡張製品が既存製品と類似しているほどその際が際立つため製品カテゴリーが類似しているほど不一致が明確になる。

希薄化のモデレータ要因

・拡張新製品情報へのアクセシビリティ
高いとき→既存ブランド・イメージと拡張商品の連想との不一致すなわち拡張新製品が既存ブランドに反するか否かで判断

低いとき→既存製品と拡張新製品の類似性すなわちブランドと異なるか否かで判断するためアクセス可能性は希薄化発生形態のどちらを選択するかを決める要因になる。

・消費者のモチベーション
高いとき→既存製品と拡張新製品が類似しているか否かにかかわらず、既存ブランドと拡張新製品のイメージの際に注目する

低いとき→既存製品と拡張新製品が類似している場合のみ両者のイメージの差異が考慮される。

気になったこと

・情報処理に対するモチベーションが高いときとは具体的にどんな状態の消費者・企業なのか。
(例)消費者がブランドを初回認知した且つ何らか興味を抱いているような状態とか

・情報へのアクセシビリティは外部要因でどのような評価なのか、内部でコントロール可能なのか
(例)2010年度時点の文献を参考にしたが、現在ではEC需要の高まりとともに情報へのアクセシビリティは全体的に高まっている印象を受けるが。


参考
洪廷和.ブランド拡張のフィードバック効果(2010).経営研究;61(2):43-58
https://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/contents/osakacu/kiyo/DBa0610203.pdf

田中洋.ブランド戦略論


この記事が参加している募集

最近の学び