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マリリンと僕

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小説『マリリンと僕』をまとめました。
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#マリリン

マリリンと僕8 ~Merry? Xmas~

マリリンと僕8 ~Merry? Xmas~

12月24日、クリスマスイブ。

繁華街にはカップルが溢れ、至る所に装飾された、イルミネーションの輝きに魅せられている。ファミリーは特製のケーキやチキンを囲んでホームパーティを楽しみ、子どもたちは明日に控えたサンタクロースの訪れを待ち望んでいた。

そして僕は今、東京は品川にそびえ立つ『城山グランドホテル』のメインタワーにある大宴会場にいた。一張羅の黒のスーツとこの日の為に新調したシルバーのネクタ

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マリリンと僕4 ~マリリンに逢いたくて~

マリリンと僕4 ~マリリンに逢いたくて~

7月も終わりが近づき、いよいよ長梅雨が明けると、雲一つない晴天からは、悪意すら感じられるような、強烈な陽射しが大地を照り付ける。
初夏の趣きを感じる間もなく気温は35℃を超え、テレビでは気象予報士が「各地で猛暑日になります。日中の外出は控えて下さい」と伝えている。

近所の公園に行くと、気象予報士の言葉も虚しく、たくさんの子ども達が、きゃーきゃーとつんざくような奇声を発しながら、水風船や水鉄砲を手

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マリリンと僕3〜その黒猫は光を運ぶ〜

マリリンと僕3〜その黒猫は光を運ぶ〜

6月は梅雨の時期。

最近では初夏という言葉が失われたかのように、早々と真夏日が訪れる。そこに不快指数100%の湿度が加わると、外を少し歩くだけで体がじっとりと汗ばみ、心まで陰鬱としてしまう。

近所の公園に鮮やかに咲いた紫陽花は、梅雨の時期にあって、鈍色の僕の心に色彩を与えてくれる。雨に濡れることで、より活き活きとして美しく、華やかに咲き誇る。

半年前、僕は役者の夢を諦めることを考えたが、もう

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