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伊藤緑
2024年6月28日 22:30
人が夏を見ているときに自分は春を見ています 人が秋を見ているときに自分は夏を見ています 人が冬を見ているときに自分は秋を見ています 人が春を見ているときに自分は冬を見ています季節の死体を見ています
2024年6月27日 22:30
汗かく瓶のラムネのビー玉が畳の上で朝日を浴びて僕はそのきらきらをぼんやりと見ている持てば冷たくころんと透明が鳴る始めないことの美しさとはこういうものではないかと飲み終えた瓶を見ながら汗を拭う
2024年6月26日 22:30
切り落とされたナスの頭がもうそれ以上老いることなくゴミ捨て場のすぐ脇ですうすう眠っておりました 起こしちゃいけないそう街灯が月の光を力強く遮ってでも虫たちはその濃い色を気にすることなく話しています 淡い夜風に溶け込む寝息はしわしわ鳴ってそのしわしわが私の喉へ手を突っ込みひゅうひゅうひゅうと息を引っ張り出すのです
2024年6月25日 17:30
想像と観念を愛することができてしまうだから子どもは産まないとそう空想は言いました本当に大切なものそれが遠くにあるのなら手繰り寄せようとなんてせずあるがままに遠ざけておくと存在しないものを愛せるはずがないなんて言われても空想は微笑む存在しないものしか愛せないのですともし存在するものを愛しているとすればそれは全て自己愛ですと空想は絶えず微笑むのです
2024年6月19日 23:45
青くて若い夏の細くて熱い腕に後ろから抱きつかれながら道を歩けばカマキリが胸で口づけするように押しつぶされている 汗のとろりという声はほとんど聞こえず蝉の声だけが響いて淡く揺れる灰色に黄緑がよく映えている あれは自分の成れの果て生誕を否定した自分の 踏みつぶされた言葉となって夏の燃える足元でぎらぎらと濃く溶けていくふらふらとやってきた目玉にじっと見つめられながら
2024年6月13日 22:00
太陽がうなだれてその金色の髪がやわらかく広がっていく その毛先をくすぐったがるモザイク窓の黄緑の声が大きい 扇風機と戯れつつ葉擦れの笑声を聞いている悲しそうに微笑みながら空想の中のその人
2024年6月11日 22:00
カゴから選ぶ好きを幸せを そうして腕の中には自分らしさがいっぱい カゴの中身は補充されてくるくるゆったり変わる変わる そこから好きに選んでいい選んでいいけれどカゴ以外から選んだら自分らしくはありません
2024年6月8日 22:30
二十四という数字のなかの最初の十六から二十その大半が否定でいくつかが肯定あとの残りがそれらを超えた空想の数字奪われたものに近づける数
2024年6月7日 19:30
言葉を積み上げてつくられた舞台その上で動き呼吸する存在を今日も光で追いかけ照らす