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伊藤緑
2021年4月30日 00:30
見えてるんは人が言っとる単語の意味で見てるんは人の声とか動きとかそういったもんに対する自分の解釈その人見るとかその人自身に触れるとかそんなんどうやったってできひんし無理や目にはなんも映ったりせん
2021年4月25日 00:30
明日が来ること信頼しご飯を食べて勉強し働きサボったり人と話して約束をして多くを望んだりやりたいことがあればやりやらなきゃいけないことやってお風呂に入って寝床にもぐるお酒を飲んだりもする人には言えないことだってそうでも明日は明日は来ないかもしれない次の瞬間すべては消えて崩壊するかもしれない無への還りは一切が一切がただ内包してるこう胸の内を晒したらだから一日
2021年4月21日 00:30
したら立派というのならせぬまま未熟で構わないするのが普通というのならせずに異常を選び取るやるのが義務というのならしないで首を捧げようそれが自然というのなら不自然歌って微笑むことを幼い子どもの戯言と指差されるなら幼い子として断ち切るための言語の刃先を絶えず自分に向けている
2021年4月19日 00:30
ビー玉拾いの夢を見たビー玉拾いは手のなかでビー玉かちゃかちゃ言わせてたおはじき集めの夢を見たおはじき集めは陽にかざしおはじきさらさら透かしてたトランプめくりの夢を見たトランプめくりは背を丸めトランプひらひら合わせてたブロック遊びの夢を見たブロック遊びはくち広げブロックぱくぱく含んでた繰り返される夢のなかどの人物もひとりきりひとりで黙々騒がしく目の前ずっと触って
2021年4月17日 00:30
水を飲んだらごくっていうけど言葉を飲んでもなにもいわない喉って不思議喉は正直に嘘をつく震えるしひゅうひゅう鳴るしでも産み落とす言葉はどれも逆子で未熟児でなんなら生まれないように生まれないようにってさ今にもあふれて裂けそうなのにね赤く荒れて焼けてるのにね喉って不思議それでも気づけばこうやって好き勝手いってる音じゃないものをひとり出してる
2021年4月16日 00:30
ねぇ君は言葉を書いてるのそれとも書かされてるの要請された表現求められているもの血と骨を抜かれて防腐剤を注入されてあるのはただ生ぬるさだけ透けた水に顔をつけても言葉はごぽごぽ言うだけで澄んだりしないなのに君が疑わないのなら僕が代わりに疑うよ君の言葉は本当にほんとに君のかけらなの君はほんとに書いてるのそれともただ書かされてるの
2021年4月15日 00:30
強い風が吹いてびゅうと町の声がする窓の向こうの葉桜は激しく揺れて僕の足はまっすぐ立ってる重たく波打つ分厚い雲をじっと見たまま開いたら風に前髪持ち上げられて思わず目を閉じておっかなびっくり開いたら前髪があの枝のこずえの緑のように揺れていてかかとが甘く甘く上がった
2021年4月12日 00:36
くる日もくる日も時間をざぶざぶすすいでた水でふやけた指の先がお湯で泡で荒れた皮ふが時間を洗った証拠だったそうやって時を浸してごしごしこすればこするほど瞳の水面に浮かぶのはただ手元ばかり首の肩の腰の痛みを噛みつぶしながらそうしてあるとき肩で浅く息をしながらふっと顔を上げれば鏡面に知らない顔が映ってたしぶきのあとが顔中にびっしり白く浮かんでたそれは証だった
2021年4月6日 00:30
役に立つこの言葉の支配下におかれて久しいものたちそう一切は役立つかどうかという目で点検されて役に立たなければ役に立たなくなればたとえ検査を通ったとしても次で殺されるその繰り返し役に立つこの言葉を振りほどいて一切に目を向けたときあらゆるものは瞳が見えなくなるほどまぶしくそうして深い闇をまとっていた豊かさもまた同じ心を生活を豊かにしてくれるかどうかという点検を
2021年4月4日 16:07
凍っていた土がほどけ、雨は絡まるようになり、自然の体臭を、大気は風で絡げ始めた。 においと一緒に運ばれていく意識は、どこまでも遠くへと流れていく。 孤独は切符だ。 あの、弱くて強い風に乗るための。 肉体を阻むこの無限の距離でさえ、孤独を破ることはできない。 踏みにじられては転がっていく、淡くて小さな花びらと共に。 足では決して向かうことのできない、あの深い緑と大木の根元まで。 大気