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伊藤緑
2021年2月28日 11:52
使者よ幸福感の使者よあなたは謳っていらっしゃるこの世にぶら下がっている果実の甘みをですがわたくしにはそれが甘いとは感じられないのです使者よ実は落ちて腐るのですその実りが落下が腐敗が何かをもたらすのは偶然なのですあなたやわたくしそれ自体がまったくの偶然であるように使者よ結実だけでなく傷みもまた何かをもたらしてくれるからと言って腕を広げて抱き締めるのですか
2021年2月21日 15:06
年末にふっと吸った冬の歳は十六で年明けにひゅうと飲んだ冬の歳は七つであったそうしてやわらかい日差しに絡んだ冬は三つであるかと思えば宵に浅く横たわる冬は二十七で長いあいだ冬は五十ほどだと思っていたが今朝の冬は米寿であったし夜半がくればゼロであって冬が絶えず告げていると知った歳はそれはひどく目まぐるしいもので今は二つ明ければきっと二十七
2021年2月3日 18:38
価値という木でつくられた艶っぽい杖を振ることで温かいお味噌汁とか自分のことを決して捨てることのない父とかきつく優しく抱擁してくれる影とかそういった一切を生み出せるってそう信じていた魔法使いの子は拍手のふくらみも金属の塊でさえ一度として形にすることができずに代わりにその杖の細い細い先っぽが長い時間をかけて描き出したものは腐った臭いと死だけでそのことに気がついた