永遠のにぶんのいち、あげる。
栞はその時、読んでいた本の言葉を
思い出していた。
「ひとが、存在していることの根っこには
欠落がある。あらかじめ、欠けてしまった
ままの姿でうまれてくるんです」
栞の手の中には苺の匂いのするろうそくが
あった。
半分だけろうそくの姿をしている。
でもあと半分は、言わない。
それの形をしている。
わたしがその姿を見た時に、あっと
息を呑んだ
キャンドル売り場の店主に言われた。
お客さんには見えるんですね、って。
みえますって言おうとしたら、口元近くに
その人の指がやってきて、言わないでの
仕草をした。
その時その指先から紫色の匂いがした。
恋に落ちた。
はんぶん溶けそうだった。
栞は頭の中でページをめくる。
「損なってしまったものは、スペアがきかないことも
ある。ただ欠けるしただなくなるけれど。なくした
半分に出会えることもある」
この言葉を栞はこのキャンドルとじぶんに捧げた。
ずっと失い続けてきたものとやっと出会えた瞬きを
感じた。
じぶんの命が半分永らえている理由を栞はその時
知った。
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土曜日なので毎週ショートショートnote書いてみました。
お題は「半分ロウソク」です。
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