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永遠のにぶんのいち、あげる。

栞はその時、読んでいた本の言葉を
思い出していた。

「ひとが、存在していることの根っこには
欠落がある。あらかじめ、欠けてしまった
ままの姿でうまれてくるんです」

栞の手の中には苺の匂いのするろうそくが
あった。

半分だけろうそくの姿をしている。
でもあと半分は、言わない。

それの形をしている。

わたしがその姿を見た時に、あっと
息を呑んだ

キャンドル売り場の店主に言われた。

お客さんには見えるんですね、って。

みえますって言おうとしたら、口元近くに
その人の指がやってきて、言わないでの
仕草をした。

その時その指先から紫色の匂いがした。

恋に落ちた。

はんぶん溶けそうだった。

栞は頭の中でページをめくる。

「損なってしまったものは、スペアがきかないことも
ある。ただ欠けるしただなくなるけれど。なくした
半分に出会えることもある」

この言葉を栞はこのキャンドルとじぶんに捧げた。

ずっと失い続けてきたものとやっと出会えた瞬きを
感じた。

じぶんの命が半分永らえている理由を栞はその時
知った。

🕯   🕯   🕯   🕯   🕯

土曜日なので毎週ショートショートnote書いてみました。
お題は「半分ロウソク」です。
最後までお読みいただきありがとうございます🕯☜みえてますか?

 


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