54.吾輩はのんびりできない人間である
この日は、あるお城に行くと決めていた日だった。
でもこの旅の第一目的は、とにかくゆっくりすること。
朝はゆっくり起きて、ゆっくり支度して、のんびりとお城に向かいたかった。が、、、目覚ましをかけなくても、習慣で4時には目が覚める。決して早老だからとかじゃない。
この日もきちんと4時に目を覚まして、ベッドの中で時間を持て余した。
意地になって8時まで寝てやろうとしたけど、頭冴えまくり笑
もう一度言います。早老ではない。
5時に起きて、身支度を始めていた。身支度が完了するやいなや、やることをないか探してしまい、やることが見つからないとソワソワする。全く落ち着かない。これがアンジーだ。
7時頃にようやく太陽の光が届くようになって、外がだいぶ明るくなった。
でもまだ7時。B&Bの朝食サービスがあるのでダイニングに行こうかなと企んだけど、お腹もすいてない。
お城以外目的がないので、他にお土産的な名産的なものをネットで検索。
有名なチョコレートショップがあるとのこと。
時間があったら行こうと思って、目星をつけていた。
それと、このPitlochry (ピトロクリー)は夏目漱石がかつてロンドン留学時代に都会の忙しさから癒されるために訪れたのだと知った。実際は知り合いから招かれたそうなんだけど、最終的に癒しの旅・文学とは?と留学時代中の分岐点になったそう。
短編小説「永日子品・昔」にも漱石はピトロクリと呼び、決して華やかではない寂しげな風景とスコットランド人のキルト(男の人が履くスカート)について書かれている。また、漱石にとってロンドン留学は孤独で結構辛かったせいか、文章全体が暗く感じる。彼みたいに、観察力がずば抜けてたら100年前のロンドンなんてもっと異国だろうし、、孤独で苦しかったことは誰でも簡単に想像がつく。
ただ、それでも私は「漱石と同じ場所に来ているんだぁ!」と嬉しくなった。こんな辺鄙な場所誰が来るんだろ?と思っていたから。
余談ですが日本の実家で飼ってるネコの名前は漱石です。^^
8時頃、早速駅に向かう。本当はこの時間に起きるつもりだったのに、もう外に出ていた。笑 まぁいつもよりはゆっくりだからOKと自分に言った。
昨日とは違う道で大回りして駅に向かった。
どこのカフェも、breakfastのメニューが並んでパンを焼く香りや、ビーンズを炒める香りが立ち上っていた。
香りだけでお腹いっぱいになった。ワンコがキュンキュン鼻を鳴らしてよってくる。
駅に到着して、窓口で切符を買う。
Blair Athollまで行きたいと伝えても Blair Athollの発音が難しすぎて、伝わらずスマホで画像を見せながら、往復切符を購入した。
私の英語が片言というのを、駅員さんが気遣ってくれたのか暇だったのかはわからないけど、切符を買った窓口からホームまで連れてってくれた。
外は結構さむいので、駅構内の待合室に案内してくれた
「ここで待ってて。次の電車に乗ればいいからね。1駅だから、電車の中で寝たらだめだよ」
と、まるでお母さんみたいだった。(駅員さんはサンタクロースみたいなおじさんでした)
それから10分、20分しても電車はこない。
すると、さっきの駅員さんがまたわざわざ向こうのホームから線路を跨いで私のいるホームまで来てくれた。
「ストライキしてて電車止まってるみたいだ。多分、動くとおもうけど。正直いつ来るかわかんない。ごめんよ。」
と言われた。
アンジーさんはそんなことでは動揺しない。
「他に、その駅に向かう方法ありますか?」
「歩くか、タクシーかな。でも、タクシーもこの地域は少ないからなぁ。。。歩くにも少し遠いし、山道だから君には向いてない。電車を待つのが一番だと思う。きっと来るよ。でも、もし払い戻しが必要だったら、言ってね。払い戻しできるよ」
と優しく教えてもらった。
幸いやることもないし、ボーッとするために来たのだから全然OKで、待合室でぬくぬくとしながら、座っていた。ストーブの香りが冬の匂いだった。忘れてはいけない、この時は6月。
同じ電車待ちの人が、徐々に駅に集まっていた。
すると、一人のおじさんが「12時に再開するって。多分12時ちょっとすぎたら、電車来ると思うよ。」
と、一体どこから仕入れたのだろうか、有力情報をくれた。
引き続き、ボケッとしながら電車を待つ。
ふと、帰りの電車大丈夫かな?と思ってさっきの優しい駅員さんに聞きに行った。
「うーん、正直わからないけど。電車が来ない可能性もある。」
「なら、往復をやめて片道にしてもいいですか?」
「もちろん。でも、そのまま往復券は持っといていいよ。お金だけ返すよ。」
と神対応なサンタクロース駅員さん。ブラボー。
待合室に戻ると、さっきのおじさんが「電車再開したみたい。よかったね。」と。一体おじさんはどうやって調べてるんだろう。笑
そして本当に電車が来た。駅員さんは、向かいのホームからグッドラックポーズ(エドはるみのグー)をして見送ってくれた。素敵な駅員さんだ。
8時半から待って実に約3時間ちょっと駅構内で待っていたのだ。
この時は、朝みたいにやることがなくてもソワソワしないでぼーっとできた。旅っていいなぁと思ったのだった。
つづく
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