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136、水の中で生まれ、水の中で育つものの様に

学校が終わってから、この日はTate Britain(テート・ブリテン)に行った。

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Tate がつく美術館はイギリスに数箇所ある。
このテート・ブリテンはおよそ16世紀(約1500年代)から現代までのブリティッシュアートを中心に歴史を深く掘り下げた作品が貯蔵されてる場所。

大きなコンペティション、ターナー賞展も行われたりする。

多くの画家さんや芸大生が模写に励んでいる姿もぐっとくる。

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この美術館には有名な作品が数多く貯蔵されている。
私の思入れ深い作品はミレイのオフィーリアだ。

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というのも、大好きな夏目漱石の草枕にオフィーリアの絵を見た時の感動が描かれている。
ロンドン留学中、夏目漱石は大きなストレスで日々が曇り空だった。その中で、ロンドンの美術館を巡り芸術と触れ合うことで、その神経を保っていたのだそう。
そしてその一枚がオフィーリア。

彼はこのオフィーリアを見た時の感動、心の揺れ方を元に帰国後、草枕を創作した。


ちなみにオフィーリアは、シェイクスピアのハムレットのヒロイン。
オフィーリアちゃんは、恋人のハムレットから棄てられるわ、父親殺されるわで、精神が病んでしまい(ほんまひどいですよね。)
川に転落して亡くなるのです。
なんだけど、ハムレットのお芝居上ではオフィーリアちゃんが亡くなるシーンは直接描かれておらず、王妃様が言葉だけで説明してるんです。

それで当時の画家たちは、そのオフィーリアの美しくも悲しい死に想像力を膨らませて絵を描いたらしいです。


ー水のなかに生まれ、水のなかで育つもののように。ー
ハムレットより

私がイギリスに来て最初の1人行動では、テート・ブリテンに来た。
オフィーリアを拝みに。

そして、あっという間に6ヶ月が経ちお別れを言いに来た。

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大きすぎない、わりとコンパクトな大きさの絵。
美しい花、草木。水を含んで重たくなるドレス。

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悲しいシーンなのに、間違いなくここには生と死が描かれている。
人は死ぬ時、めちゃくちゃ気持ち良くなるらしい。
その快楽の中に溺れているような表情。

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私はずっと見ていた。
足元には死が迫ることを象徴するドクロがオフィーリアを覗いている。
一瞬怖くなる。

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が、次のことだった。

頭側に目をやると、、、、、
じっとオフィーリアの死を見守る、ロビンがいるではないか!!!!!

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優しさの象徴、ロビン。
悲しみの中にいるオフィーリアを優しく最期まで見護るロビンの姿。


「君、またここにいたんだね。優しいね」

と思わず声をかけたくなった。
一度目、初めてオフィーリアを見たときは、ロビンの存在には気づかなかった。

私はますますロビンのことが好きになった。

「また、絶対帰ってきます。」

と絵に誓って、最後のテート・ブリテンを堪能した。

プロポーズまであと360日


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