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「ワタシ文系だから数字が苦手」というセリフをこの世から完全に消滅させたい教育者の独り言

深沢真太郎です。ビジネス数学教育家です。

この肩書で活動しているのはおそらく日本で私だけだと思います。普通に仕事をしている人、普通に教育をしている人、普通の思考回路をもつ人はこんな肩書きは思いつかないだろうし、このテーマで独立してそれを専門に(ちっとも儲からない)教育ビジネスを始めようなどとは思わないでしょう。

私について知りたい方はどうぞ。不要な方は華麗にスルーして続きをどうぞ。


「ワタシ文系だったので数字は苦手なんですぅ」

本題に入ります。

仕事柄、たくさんのビジネスパーソンと研修の現場でお会いします。研修とは企業が自社の人材育成を目的としてセミナーやワークショップをすること。簡単に言えば、私は「数字」をテーマにしたそれを提供するプロである。

で、私は参加者からこの言葉を幾度となく聞いてきました。タイトルにもなっているそれです。この記事を読んでいるあなたも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。


「ワタシ文系だったので、数字は苦手なんですぅ」


うん。本当に数えられないほど聞いてきた。これを聞くたび、私は表面上はこう笑顔で答えている。


「そうなんですね〜^^ でも大丈夫。苦手意識は克服できます。誰でもビジネスで数字をうまく扱うことはできますよ^^」


私の仕事は、これを言うこと(伝えること)が9割なのかもしれない。それくらい、このやりとりを何度となくしてきました。この「自称文系」の方は何も悪くありません。彼は(彼女は)、ただの被害者です。だから私はこの方の役に立ちたい、救いたいと思って今日も教育の仕事をしています。研修に登壇したり、書籍を発表したり、動画や記事で世の中にメッセージを伝えたり。

しかしこの笑顔の裏で、私はいつも憤りを感じていました。怒りというよりは悲しさでしょうか。私にしては珍しい感情。それはある考えが根底にあります。


「この人に、このセリフを言わせている奴は、いったい誰だ?」


という考えです。先ほどの「ワタシ文系だったので、数字が苦手なんですぅ」と言った人を仮に安室(あむろ)さんとしましょう。別に意味はありません。たまたまいまパッと思い浮かんだ固有名詞が安室さんだっただけです。

安室さんに「ワタシ文系だったので、数字が苦手なんですぅ」と言わせているのは誰だろう。安室さんは悪くない。いや、誰も悪くないのかもしれない。それでも、私の心には犯人探しのような思考が働いてしまう。よくないかもしれないね。でも止められない。


「安室さんに、このセリフを言わせている奴は、いったい誰だ?」


文系、ゆえに、数字が苦手。そう言っている。本当にそんな論理は存在するのだろうか。どう考えてもNOだ。なのに、このどう考えてもNOな論理を平気で(ドヤ顔で)発する大人があまりに多い現実。これはいったい何を物語るのか。

ひとつだけ確かなことは、誰かがこの安室さんに「数字が苦手」という認識をさせた人がいるということです。「数字」というものに対してイヤなイメージを植え付けた人がいるのです。で、はっきり言います。

それはおそらく「教師」と呼ばれる誰かである。

私は、これがとても悲しいし憤る。

教師だろ?

教育者なんだろ?

その仕事で給与をもらっているんだろ?

嫌いにさせてどうする。苦手意識を植えつけてどうする。好きにさせるのが仕事でしょう。数字と戯れることが楽しいと思わせることが仕事でしょう。

ビジネス数学教育家という私の活動がビジネスとして成立するのは、「深沢先生」がいまこの世に存在できるのは、残念ながら私がすごいからではありません。私の能力などウンコみたいなもの。私の仕事が存在する理由。それは、どこかで誰かが人々を「数字嫌い」にさせたうえで、その人たちをそのまま社会に出しているからです。





学校の教師に知ってほしい現実

学校教育で頑張っている教育関係者の皆様。ご存知ないことかもしれませんし、興味がないことかもしれませんが、今から私が目の当たりにしている現実を話します。


いま大学生は「%」の計算ができません。
ビジネスパーソンの10人のうち2人は、手書きで75%の円グラフを描かせると「9時」の配分になっていません。

(誤)

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(正)

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多くのビジネスパーソンは、「円周率の定義は?」という私の問いに「3.14です」と自信満々に答えています。(「定義」を尋ねているのに)
多くのビジネスパーソンは、私が研修の資料に数式を表記するとそれだけで露骨にイヤな顔をします。(よほど「数式」でイヤな思いをしたのでしょう)
多くのビジネスパーソンは、自分の数字嫌いを「文系だったから」と言っています。
多くのビジネスパーソンは、「数字とはコトバである」という私の言葉にすぐにピンときてくれません。


ここまでの内容、学校教育の現場で戦っている教師の皆様には、少し攻撃的なニュアンスを感じる文章かもしれません。ごめんなさい。でも、私のようなビジネス人教育の専門家も、学校教育の先生も、分野は違えど目指すものは同じです。それは、

目の前にいるその人が幸福で豊かに生きるための術を提供したい

ということです。学校の先生はなぜ教師になったか。子供が好きだからというのは表面的な理由。大人になってキラキラ輝く人生を送れるように願ってその子に授けるべきもを授けたいから。そうですよね。だから、私は教師のみなさんと本質的には同じ仕事をしていると思っています。

ある学校の数学教師とお話をしたことがあります。その方がおっしゃっていた印象的な言葉をご紹介します。


「僕は職業人を育成するために教師になったわけではないし、ただの公務員です。日々の雑務や保護者の対応や受験指導でいっぱい。無事に卒業させることが仕事。あなたにビジネスが云々言われても、僕には関係ないことです」


なるほど。現実を表現してくれていると思いました。本当に小学校・中学校・高等学校の教師の皆様は大変だと思います。現場は戦場でしょう。でも、私はこの先生のおっしゃることを理解はできても共感は1ミリもできませんでした。なぜなら、そのセリフを教え子が聞いたらどう思うかという視点や発想が、この数学教師には1ミリもないからです。その子供の10年後、20年後に大きく影響する仕事をしていることの認識が1ミリもないからです。「無事に卒業させることが仕事」というセリフに、私は反吐が出る気分でした。

こういう教師に付き合って幼少時代を過ごした子供は、不幸です。



2つの提案

何かを意見するからには、提案がなければ嘘です。そんな現状に私が提案したいのは2つです。


① 数学の授業は、プロのインストラクターに任せるべき

② 数学の他に、「ビジネス数学」の授業も導入し学生が選択できるようにするべき


①は様々なとことで出ている意見だと思います。教務指導とクラスマネジメントや他の雑務は分担するべき。もうスタディサプリを見せればいいじゃないと言うと怒られるでしょうか。でも授業はあくまで理解と習得が目的ですから、誰よりもわかりやすく授業ができる人の授業を聞かせればいいと思うのですが。少なくとも、授業が下手な教師が数学を教えるより、数字が苦手なんて子供は減るでしょう。いい授業をするために寸暇を惜しんで思考や準備をすることができない環境の人は、授業で教壇に立ってはいけません。ちなみに私はビジネススクールの講義や企業研修の前には神経質なほど準備をします。前日は少し興奮して眠れないほどです。プロのパフォーマンスを期待している人たちを前に、ナメた仕事は死んでもできません。


②そもそも「文系・理系」という概念がまず悪であると思っています。そんな分類をして誰が幸せになったのでしょうか。

数学とビジネス数学。

こう分類すべきです。理工系の道に進むための学習もできるし、将来のためにビジネスに必要なリテラシーを鍛えるという選択もある。理工系の言語として学ぶ。ビジネスの言語として学ぶ。この選択なら、「数学は勉強したくないから文系に進む」という概念が存在しません。

私が取材など公の場で「深沢さんの夢は?」と質問された時に真顔で「全国の学校にビジネス数学の授業が当たり前のようにあること」と答えるのは、このような理由によります。



ビジネス数学インストラクター制度を作った理由

実は私の活動や発言やビジネス書の内容(レベル)を見聞きし、「当たり前すぎる内容」「そんなレベルでマウンティング?するな」などいろいろなご意見をくださる方がいます。確かに私は極めて基本的なリテラシーを育成する立場にポジショニングしています。学生時代は正しく数学を学ぶことができいまもデータを使いこなすことが得意な人から見れば、バカにしたくなる気持ちも(本当に)よーーーーーーくわかります。

でも、「そこ」の教育が機能していないからいまの現状があるわけです。誰かが「そこ」にポジションをとって(ある意味では面倒くさい・誰もやりたがらない)教育活動をしないといけないのではないでしょうか。


「ワタシ文系だったので、数字が苦手なんですぅ」


安室さんのこの発言。誰も悪くはない。でも、誰かがプロの仕事をしてないためにこの世に存在する発言であることは間違いないのです。私はこの発言をこの世から完全消滅させたい。そのためにいまの活動を選び、いまの肩書をつけ、少しばかりの共感者・賛同者を得ながら前に進んでいる。いつか私の仕事がなくなることを願って。つまり安室さんがこの世に一人もいない世界を願って。ちっとも儲からないけどね(笑)

2018年。私はビジネス数学インストラクター制度を創設しました。目的は先ほどの②を実現させるためです。夢物語のようですが、でも始めないことには何も変わりません。

教育の世界は「評論家」ばかりでうんざりします。べき論を声高に語る輩はたくさんいます。算数・数学教育においてもそれは同じです。誰もが「数学は大事だ」「数学教育を海外と同じように充実させるべきだ」「データサイエンスを学べ!」「AI時代だから機械学習が…」といった持論を持っている。それ自体はいいことだし、おっしゃる通りだとも思う。しかし、言っているだけ。実際に何かを変えようとしない。

言うことは立派だけど、何も行動しない。

私はこういう人が苦手です。ごめんなさい。少しマイルドに表現して誤魔化しました。はっきりいいます。私はこういう人が大嫌いです。私は実際に行動し、姿で見せる教育者でありたいと思っています。これは独り言だが、ある種の宣言でもある。たぶん。

設立から2年が経過し、少しずつ認定講師も誕生し、世の中に貢献できるベースができてきたように思います。ゴールを100としたら、まだ0から1にできたくらいですが。

代表理事である私は、認定インストラクターに求める理想がとても高い。メンバーが(おそらく)ついて来れないほど、求めるものは(実は)とても高い。これから少しずつ強めのメッセージを投げるようにしていくことになる。

実際に行動してみてうまくいかない、できないのならそれはOK。でも、口だけで実際に行動しない人、信頼や期待に答えようとしない人は信じない。当然のことであり、どの世界でも言えることだと思っています。


数学教育に関わる全ての人へ

数学教育に関わる全ての人が今よりちょっとでも「いい方向へ」行動をしたら、世の中の数学教育はだいぶ変わると思います。劇的に変えるなんて無理です。だからちょっとでいい。子供や若者、いまビジネスで戦っている戦士たちのためになるのなら、ちょっとでいいから、行動してみましょう。そうすればきっと、


「ワタシ文系だったので、数字が苦手なんですぅ」


というちっとも数学的ではないこの論理は、この世から消えるはずです。それはつまり、私の仕事がこの世に存在しなくなることを意味します。私は困る?かもしれませんが、世の中はそのほうがハッピーです。目指そう。それを。数学教育に関わる全ての人に伝えたい。私の仕事を、この世から完全に消滅させてください。

私がもっとも信頼する職業人は、「その職業が必要ない世の中」を目指してその職業に就いている人です。



自己紹介

深沢真太郎
ビジネス数学教育家。 数字に強いビジネスパーソンを育成する「ビジネス数学」を提唱し、述べ1万人以上を指導してきた社会人教育のプロフェッショナル。日本大学大学院総合基礎科学研究科修了。理学修士(数学)。予備校講師から外資系企業の管理職などを経て研修講師として独立。大手企業・プロ野球球団・トップアスリートなどの教育研修を手がけ、一部企業とはアドバイザリー契約を締結し人材開発のサポートを行っている。2018年に国内唯一のビジネス数学エグゼクティブインストラクター(公益財団法人日本数学検定協会認定)に就任し指導者ライセンス「ビジネス数学インストラクター制度」を設立。さらに2022年には人材育成に従事する人のための「ビジネス教育大学」を設立し教授として指導者育成に従事している。テレビ番組の監修やラジオ番組のニュースコメンテーターなどメディア出演も多数。著作は国内累計25万部超。実用書のほか作家として小説も発表しており、多くのビジネスパーソンに読まれている。
ビジネス教育大学教授
BMコンサルティング株式会社 代表取締役
一般社団法人日本ビジネス数学協会 代表理事
国内初のビジネス数学検定1級AAA認定者
国内唯一のビジネス数学エグゼクティブインストラクター

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