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「単なる数字遊び」と酷評された日の話

こんな人に読んでもらいたい記事です。

・数学が好きな人
・数学が嫌いな人
・これから起業したり新たなチャレンジを予定している人
・講師やコンサルタントなど誰かを指導をする仕事をなさっている人

興味を持ってくださりありがとうございます。

ビジネス数学教育家・深沢真太郎です。


数字に強いロジカルパーソンを育成するビジネス数学教育を広めています。ビジネス数学教育と聞くと「??」と思われる方も多いでしょう。

「つまり数学教育のことかな?」 
「数学はビジネスにも役立つんだぜー!って言うことかな?」

そんな印象を持つことが自然でしょう。詳しくは、そして興味ある方は(この記事を最後までお読みいただいた後に)私のWEBサイトなどを眺めてみてください。無料メールセミナーの登録、SNSやyoutubeのフォロー大歓迎です。リアクションはほとんどしていません。ご了承ください。

「単なる数字遊びですね」

本題に入ります。
今回ご紹介する話は十数年前に起こった実話です。私の提唱するビジネス数学教育とはこういうもの、と決定づける出来事があった時の話です。

自分の広めたい教育を知ってもらうため、共感してもらうため、私は十数年前に様々な研修会社やコンサルティング会社にアポイントをとり、ビジネス数学教育を一緒に広めていきましょうと提案をしていました。まだ何者でもない、実績もない私。「お前誰やねん」「なんやねんそれ」な空気を出す相手に、それでも私は必死に自分の広めたいものを訴えていました。

ある研修会社が興味を持ってくださいました。そして私に「では実際に深沢先生のやりたい講座を実演して見せていただけませんか」と提案が。嬉しかったですね。チャンスを頂けたわけです。芸人に置き換えれば、情熱だけはある芸人の卵が必死に事務所の担当者にアピールしているようなもの。「じゃあちょっとネタを見せてよ」となるのは当然のことです。

そしてある日、私は自分がやりたい講義の内容を担当者の前で実演しました。数字を活用するということかいかに面白いものかを訴えました。数学というものがいかにビジネスでも役立つものなのかを表現しました。四則演算を駆使するだけで可能な、ビジネスに役立つ仕事術があることを表現しました。数学のアプローチで作ったモデルを使えば分析や意思決定ができることを解説しました。研修会社の担当者は黙ってそれを聞いていました。時間にして30分程度だったと記憶しています。

私の実演が終わり、黙っていた担当者が言葉を発します。おそらく私はこのフィードバックを一生忘れないと思います。

単なる数字遊びですね

耳を疑いました。単なる数字遊び。そのときは意味がわかりませんでした。結局、この研修会社とビジネス上のご縁はありませんでした。はっきり言えば、ビジネス人を育成すること、ビジネススキルを提供すること、企業が人材育成の観点で価値がある(お金を出しても欲しい)とは思えないものであること、つまり研修会社が自分の大切なお客様に紹介するだけの価値はないと評価されたのです。

なぜだ?

私は迷路に入りました。教育の世界では、人材育成業界では、有識者がみんな口を揃えてこう言っています。

「ビジネスでは数字に強くあるべきだ」
「数学は論理思考を鍛えることができるものであり、それはビジネスでも大いに役立つ」
「ビジネス人は文系や理系の垣根を超えた数学能力が必要だ」
・・・・・・・・・・

私もそう思います。だから私はそのような教育コンテンツを広めようとしています。にもかかわらず、実際のマーケットは私のコンテンツを「価値がない」と評価しました。なぜなのか。迷路の出口はしばらく見えませんでした。

数学への愛をいったん捨てる

その後、幸いにも私はその迷路から抜けることになります。細かいエピソードは紹介しませんが、ある発想を持った途端に、スルリと物事がうまく進み始めたのです。そのある発想とは。

数学への愛をいったん捨てる

あの実演をした頃の私は、無意識に「どうだい?数学ってすごいだろう!?」「数字ってこんなにパワフルなんだぜ!」という気持ちでコンテンツを作り講座のデモンストレーションをしていました。無意識にです。無意識だからこそ、気づきません。とてもタチが悪いですね。

なぜ無意識に「どうだい?数学ってすごいだろう!?」というテンションになってしまうかというと、「数学への愛」が前面に出てしまうからです。教育をしたい、人を育成したい、ビジネスパーソンの役に立ちたいと口では言っておきながら、実際は数学の魅力やパワフルさを理解させようとしてしまうのです。繰り返しですが、無意識だからこそここに気づきません。とてもタチが悪いのです。

数学を愛している皆様には残念なお知らせですが、ごく一般的なビジネスパーソンは数学の魅力やパワフルさなんて理解したいわけではありません。そんなことはどうでもいいのです。来年の給与を上げたい。会議でうまく説明できるようになりたい。できるだけ定時で帰りたい。めんどくさい上司を論破したい。いうことを聞かない部下をうまくマネジメントしたい。彼らはそういうインサイトを持ち、いろんな現実に向き合い、いろんな矛盾を飲み込んで今日も頑張っている人たちなのです。

そんな彼らに私の「どうだい?数学ってすごいだろう!?」な講座など、まったく求められていないことです。企業がお金を払ってでも学ばせたいなどと思うわけもなく、つまりは研修会社やコンサルティング会社がビジネスとして興味を持つはずもありません。

恥ずかしながら、私はあの実演からしばらくしてからそのことに気づきました。


数学の美しさや論理体系なんて必要ない

数学への愛のある人は、どうしても数学の美しさや論理体系を伝えようとします。そしてそれが数学を正しく理解することであり、それを正しく理解できた自分は素晴らしい人間なんだと、無意識に思い込んでしまいます。かつての私もそのひとりでした。

しかしあの厳しいフィードバックが大切なことに気づかせてくれました。

単なる数字遊びですね

そうか、数学の話をしてもダメなんだ。求められていることはそういうことではないんだ。とてつもなく大きな気づき。私の活動方針を大きく変えた出来事であったと思います。

ビジネスの世界においては、数学の美しさや論理体系なんて全く重要ではありません。それが数学の学問的に正しいかどうかも関係ありません。それは来年の給与がアップするために使えるのかどうか。会社の業績アップに貢献するものかどうか。必要な視点はそれだけです。

私は徹底的に「ビジネス人へのFIT感」を追及するようにしました。ビジネス人とはどういう人種か。何が欲しいのか。何が嫌なのか。何にお金を使うのか。何が楽しいのか。何に憤るのか。徹底的に追及し、数式や論理体系の美しさやパワフルさ、理論の厳密さは一切無視するようになりました。このようなマインドに変えたことによって、私のコンテンツ作りや講義の内容、進め方、話し方、すべてが劇的に変わりました。私のビジネス数学教育の輪郭がはっきりしたのです。やっと私のやりたいことがスタートできたということかもしれません。

以降、私のもとには誰もが知る大手企業から研修オファーがあったり、ビジネス書NO.1の大手出版社から初の著書が出ることになり、様々な取材オファーが入り、企業研修だけではなく大学やアスリート教育の現場からもお声がけいただけるようになりました。おそらくは「単なる数字遊び」だったものが、ビジネス人や企業がお金を出してても必要だと判断していただけるものになったのでしょう。

残念ながら数学は数学のままでは(ある文脈において)無力である。ビジネス人に求められていない、嫌われている、不要だと思われているものである。本質的には彼らを幸せにはできないものである。私はそう結論づけました。これが「数学≠ビジネス数学」と私が公言する背景です。世の中にたくさんいらっしゃる「数学を愛している方々」は憤るかもしれません。価値観はそれぞれ。私は異論反論にまったく興味ありません。

加えてもうひとつ、この経験から思うことがあります。それは何か新しい価値を創造するためには、既存のものを破壊したり、これまで大切にしてきたものを捨てる覚悟や勇気がなければならないということです。このような精神論的なこと、自己啓発書で書かれていそうなこと(笑)がお嫌いな方は申し訳ありません。しかしこの記事で書かれている実例がそのことを証明しています。もしこの記事を読んでくださっている方の中でこれから起業をしたり、新たなチャレンジを予定している方がいたら、そのことだけはお伝えしたいかなぁと思っています。余計なお世話かもしれませんね。

フィードバックの力

最後に余談を。
いま思えば、あの研修会社の担当者にデモ講義を見てもらったことは幸運だったと思います。

単なる数字遊びですね

というフィードバックに今は心から感謝しています。人材育成や教育を本気でやるということは、コンテンツや講義はその対象者がお金や時間を使ってでも欲しいものであることが大前提です。

この仕事で成功するためには、デモ講義をし、ちゃんとした人に見てもらい、フィードバックをもらうしかありません。少なくとも私はそう思っています。この記事でご紹介したような実体験があるので。

私がマネジメントするBMI(ビジネス数学インストラクター)制度はまさにビジネス数学教育を推進する(しようと思っている)講師のための制度です。頑張ってる講師もたくさんおり、できるだけ応援したいといろんな仕掛けをしています。

ただひとつ残念なのは、彼らは私の指導現場での講義を見て勉強しようとはしますが、彼らが自分の講義を見てフィードバックをもらおうという発想が乏しいことでしょうか。そりゃ誰だってフィードバックされるのは嫌ですから当然なのですが、いい授業、いい研修、いい教育をしたいのなら、フォードバックを受けることは最低限です。「深沢の講義を見たい」よりも「深沢に講義を見てもらいたい」と言ってくるインストラクターが増えるよう私も頑張らなければなりませんね。

勇気が必要とか、捨てなければダメとか、嫌なことから逃げるなとか。人間には難しいことばかり申し上げた記事(笑)。申し訳ございません。

しかしそれでも私はこの価値観でこの先も頑張っていきます。もしこの記事を前向きに捉えることができる方がいたら、お互い頑張りましょう!

最後までお読みくださりありがとうございました。


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