10年間ビジネス書を書き続けてきた著者のひとりごと
ビジネス数学教育家・深沢真太郎です
数学的な人材を育成するビジネス数学を提唱し、主に企業人やトップアスリートの人材育成に従事しております。活動を始めたのが2011年でしたが、幸運なことに2013年1月に初の著書『仕事に使える数学』(ダイヤモンド社)を発表することができました。
気づけばあっという間の10年。その間に30冊ほどのビジネススキル本を世に送り出すことになりました。
書籍は私ひとりで完成できるものではありませんし、私ひとりで書店に並べられるわけでもありませんし、私ひとりで売れていくものでもありません。とてつもなく雑に申し上げますが、「実に多くの方々の応援と尽力」によって実現したものです。この場を借りて、心よりお礼申し上げます。
ありがとうございます。
もしいまインタビューや取材などで「著者として今後の展望は?」などと質問されることがあったら、私は実につまらない答えをすることになるでしょう。
この記事は、上述の「これまで通り」とは何なのかを少しだけ表現したものです。興味ある方はぜひ最後までお付き合いください。
「私にとって著書とは何か」
いい機会なので「私にとって著書とは何か」という問いを自分にしてみました。
人間は問うことで考えます。もちろん私も人間ですから、常に自分自身に「良質な問い」を投げかけることを大切にしています。
答えは2つあります。まずひとつは、「救いたい人を救うためのツールである」ということ。これは誰でも理解できるごく一般的な答えではないでしょうか。誠実な著者ならば誰もが「誰かを救いたくて」自分の時間(=命)を使い、原稿を書くのだと思います。
もうひとつの答えは独特かもしれません。それは「読者との対話である」ということです。私は原稿を書くとき、常に読者との対話をしています。書いているのではありません。対話しているのです。
私は人材育成が本業です。ゆえに企業研修やセミナーなどの「現場」があります。その「現場」では参加者と実に様々な対話があります。データ分析手法の解説。定量的なコミュニケーションの肝。問題解決に役立つ構造的な思考法の訓練。これらを提供することは、参加者と対話をしていることに他なりません。
Aという主張をすれば相手はXという疑問を持つだろう。
Xに答えるためにはBという事例をお伝えするのが適切だろう。
最後に相手が聞きたい(言ってほしい)言葉Yはなんだろう。
そのYはどんなトーンでお伝えすることが相手にとって幸せだろう。
・・・・・・・・・・
そんなことを想像しながら講師をすることで、相手の反応をリアルに体験できます。そこで得た体験や感じた空気は、この仕事で最前線に立っていなければ得られないもの。ここで得たものが、私の書籍の内容をほぼ決めてます。つまり、私の書籍は学習者との対話の結果が、(自分で言うのもアレですが)実にリアルに描かれているはずなのです。
もし私のことを少しばかりご存知の方は、私の著書にはストーリー形式のものや小説がいくつかあること、そしてそれらの書籍が(いわゆる)売れた作品であることをご存知でしょう。この記事でここまで表現したことがその理由を説明しているのではないでしょうか。
10年間、著者であり続けることができた理由
そういう意味で、私が10年もビジネス書の著者でい続けることができた最大の理由は、その10年間ずっと現場でチャレンジをし、救うべき人とたくさん対話し、そこでしか得られない体験や感じれない空気を持って帰ってきているからでしょう。シンプルに言うなら、こういうことでしょうか。
現場(本業)で誰よりもチャレンジし結果を出してきた人にだけ、ビジネス書なるものを書く資格がある。
私が10年著者でい続けられた理由はライティングを学んだからではありません。コネがあったからではありません。ビジネス数学という未開拓な新しい分野を旗上げし、無我夢中で救うべき人の前に立ち、徹底的に対話をしてきたからだと思います。
これまで周囲からこのようなご質問をいただくことが何度かありました。
正直に言って私には答えはわかりません。方法論で10年間書き続けてきたわけではないので。もしどうしても答えらしきものが知りたいと思う方は、その質問は私にではなく、出版とか著者とかコンテンツ作りとかブランディングとかそういう分野の専門家に聞いた方がいいと思います。客観的な視点が得られるでしょう。ちなみに私にはゴーストライターはいません。これまでの30冊すべて、一字一句、自分で書いています。
「売れ」を気にしなくなった
5年前くらいまでは書いた書籍が「売れる・売れない」をとても気にしていました。売れないと悔しい。売るために必死でSNSで発信したり献本したり。もちろんそれは著者として正しい姿勢だと思います。
しかし近年は(実は)あまり気にしなくなりました。出版社が数百万を著者に投資する商業出版ですから、本当は気にしないといけないのかもしれませんが(笑)
少しだけ数学的に表現すると、書籍が売れるかどうかはあまりに多くの変数によって決まるものです。たかがひとりの著者がすべてをコントロールできるものではありません。しかしその変数の中でひとつだけ著者がコントロールできるものがあります。
原稿です。
ある時から私はこの当然のことに気づきました。本業の研修においても私は参加者にこう言っています。
にもかかわらず私自身は著者として、書籍というテーマにおいてこの考え方ができていない時期がありました。著者にとって変数は「原稿」です。他のことは気にすることなく、とにかく著者はいい原稿を書くことに集中する。それが正しい姿であろうと思うようになりました。
そのせいかはわかりませんが、「売れる・売れない」は全く関係ないところで、私の原稿は編集者さんにもとても褒められるようになりましたし、編集側から大きな修正が求められることはほぼなくなりました。これが編集者との信頼につながります。その信頼は「売れる・売れない」は全く関係ないところで存在します。
幸いなことにこの10年で何人かの編集者さんとは複数回のお仕事をご一緒しました。ビジネスの世界では、相手への信頼がなければ二度と仕事をすることはありません。著者として100%の原稿を編集者に渡す。これが著者のすべき仕事であり、10年間も続いた理由のひとつかもしれません。
「本を書きたい」という人へ
そんな価値観で10年やってきた私が、「本を書きたい」という人へお伝えできることは何か。この機会に少しだけそんなことを考えてみました。
実際、私がマネジメントしているBMI(ビジネス数学インストラクター)制度のメンバーの中にも、そして周囲にいる友人・知人にも、「私も本を書きたい」とおっしゃる方がいます。その意志は素晴らしいことだと思います。私はこれまでそんな方と対話になったとき、必ず申し上げることがあります。
すると不思議なことにその相手はほぼ100%、苦しそうな笑顔を浮かべます。私は不思議に思うのです。本を書きたいということは何か救いたい方がいてその人のために時間(=命)を使って文字を綴りたいとおっしゃっているはずです。(少なくとも私はそう受け止めています) 「じゃあ実際に書いては?」という提案はこれ以上ないほど自然なものではないでしょうか。書きたくない人に書けと言っているのではありません。書きたいと言っている人に書いてみてはと言っているだけです。
あくまで持論ですが、1冊分の原稿も書けない人が「本を書きたい」なんておかしいと思うのです。バットを持ったこともない少年がプロ野球選手になりたいと言っていることと同じです。プロ野球選手になりたいなら、何よりすべきはまずバットを握り、下手でもいいから素振りを始めることです。
まずは原稿を書きましょう。文章が上手いかどうかとか、文体がどうとか、そんなことは全く気にする必要がありません。まずはあなたのコンテンツを原稿にするべきです。それが素晴らしいものであれば、誰かを救うものになっているのであれば、見る人が見れば必ずわかるはずです。あとはプロの編集者さんがしっかり本の体裁にし、魅力的なタイトルと表紙デザインを用意してくれます(それが彼らの仕事です)。本来、ビジネス書なるものはそのような形でパッケージ化されていくものだと私は思います。
書きたい人へ。ぜひ書いてください。今は便利なツールもたくさんあります。この記事で使わせていただいているnoteもそのひとつでしょうか。書くツールがない。書く時間がない。めんどくさい。そんなのは言い訳です。それでもどうしても書けないという人がいたら、その人へはとても厳しいかもしれない事実を伝えなければなりません。
あなたは、現場(本業)で誰よりもチャレンジし結果を出していないのです。そして絶望的に「読者との対話」が足りないのです。まずはそこから始めましょう。想いはあるけれど書くのがどうにもめんどくさいという方もいるでしょう。お気持ちはわかります。しかしそのめんどくさいという感情を超える何かがないのなら、やはりあなたは著者ではないのだと思います。書く・書かないより以前に、まずあなたは著者になった方がいいと思います。話はそこからですね。
出版業界の皆様へ
最後に、出版業界の皆様へはひとことご挨拶を。
皆様のご支援があっての10年であったと思います。深沢真太郎という著者を選んでいただいたこと、信じていただいたこと、応援していただいたこと、心から感謝しております。
著者は書籍のオファーをいただくたび、成長します。いただいた企画(テーマ)について徹底的に考え、苦しみ、言葉を搾り出します。それはそのオファーをいただいた者にしか経験できないことです。結果、誰よりも学び、成長します。こんなありがたいことがあるでしょうか。
もしこの10年で私が教育者として、ビジネス人として成長しているとするならば、それは出版業界の皆様にご指導いただいたことも大きく影響していると思っています。だからこそ、恩返しという言葉は適切ではないかもしれませんが、本を作る人、本を読む人のためになるなら、これからも著者として「これまで通り」やっていきたいと思っています。
もしいまインタビューや取材などで「著者として今後の展望は?」などと質問されることがあったら、私は実につまらない答えをすることになるでしょう。
この言葉の裏側にあるものを、少しだけ言葉にしてみました。とりとめのない内容ですいません。そろそろ結びとしましょう。
もし私に「20周年」があったら、またこのような記事を書こうと思っています。
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