【柿と呼ぶ理由】 旅する日本語 六月柿 ロクガツガキバラキその6

「楽しかったね、山梨のぶどう狩り」

「うん。すごく楽しかったね。いろんなぶどうを食べたね。」

「ねえロクガツガキバラキ、あなたは柿なの、トマトなの？」

「私はトマトなのよ」

「最近元気ないね」

「トマトだからなの。夏が終わるとね、お別れなのよ」

「それはいやよ、せっかく仲良くなったのに」

「ロクガツガキバラキも寂しいよ」

「来年もまた会える？」

「会えるけど、来年は来年のロクガツガキバラキなの」

「じゃああなたはいなくなるの？」

「そうなのよ」

「どうしたらずっといられるの？」

「祈って、言葉に出してね、ロクガツガキバラキが柿でありますようにって。いつか木になったら、夏が終わっても木のままなの。」