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パンデミック条約(仮称)交渉文書の改訂草案

パンデミック条約(名称はまだ検討中)交渉文書の改訂草案が公開され、海外では「病原体へのアクセスと利益配分 (PABS)」に関して疑問視する声があがっています。


第5回 超党派WCH議員連盟(仮称)総会

3月14日に、第5回 超党派WCH議員連盟(仮称)総会が開催されました。第3回、第4回についても書こうと思っていたのですが余力がなかったので、飛ばして第5回について書きます。気になった方は、最後に第3回と第4回の動画も貼っておくのでそちらでご確認ください。

下記は、会場で藤江成光氏が撮影したニコニコ動画版です。

パンデミック条約(仮称)交渉文書の改訂草案が公開されたので、答弁に入る前に、有識者として参加している及川幸久氏が病原体へのアクセスと利益配分 (PABS)について説明していました。

3月に公開された草案と昨年10月に公開された草案を比べてみると、10月の草案では「Article 12. Access and benefit sharing」は1~4までありましたが、3月の草案では、Article 12が1~12までに増えています。

Proposal for negotiating text of the WHO Pandemic Agreement
30 October 2023

Revised draft of the negotiating text of the WHO Pandemic Agreement
13 March 2024

改訂草案に関して、海外ではすでに様々な意見が出ています。

上記の記事では、改訂草案について全体を解説しています。

以下は、アメリカのメディアプラットフォーム「devex」からの一部引用です。

https://www.devex.com/news/latest-pandemic-treaty-draft-text-still-has-many-weaknesses-107223

Latest pandemic treaty draft text still has 'many weaknesses'
13 March 2024 devex

But K.M. Gopakumar, legal adviser and senior researcher with the Third World Network, who’s followed the negotiations closely, said the revised text lacks the legal guarantees to ensure that countries providing the data would receive fair and equitable compensation or benefits in exchange.

“It is asking developing countries to erect massive surveillance networks and share data without any legal guarantee on equitable access to health products and benefit sharing,” he said.

https://www.devex.com/news/latest-pandemic-treaty-draft-text-still-has-many-weaknesses-107223

ニューデリーにあるサード・ワールド・ネットワーク (TWN) の法律顧問兼上級研究員KM Gopakumar 氏は、新たな草案には、データを提供する国が公正かつ公平な補償や見返りとしての利益を確実に受け取る法的保証が欠けていることを指摘。
「発展途上国に対し、健康に関する製品への公平なアクセスや利益の分配に関する法的保証なしに大規模な監視ネットワークを構築し、データを共有するよう求めている」と述べたと書かれています。

10月の草案については、下記のl記事で取り上げました。


名称の誤訳は意図的なのか?

有識者として参加している深田萌絵氏は、「パンデミックの予防、備え及び対応(PPR)に関するWHOの新たな法的文書(いわゆる「パンデミック条約」)」という名称の訳について、原文では「新たな法的文書」にあたる部分が見当たらないと質問しました。

外務省のサイトより

https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ghp/page23_004456.html

原文

WHOCA+:WHO convention, agreement or other international instrument on pandemic prevention, preparedness and response (PPR)

外務省の訳

パンデミックの予防、備え及び対応(PPR)に関するWHOの新たな法的文書(いわゆる「パンデミック条約」)

これについては、条約の名称も含めて議論しており、まだ定まっていないので仮称だという回答でした。これでは、質問の答えにはなっていませんね。

質問の際に、深田氏が言及した「立法と調査」の論文(2012年)は下記だと思います。
条約の国会承認に関する制度・運用と国会における議論

国際法上、条約(treaty)とは、その表題を「〇〇条約(treaty)」としているものに限らず、憲章(charter)、規約(covenant)、条約(convention)、協定(agreement)、議定書(protocol)、規程(statute)、取極(arrangement)、交換公文(exchange of notes)、宣言(declaration)、声明(statement)などの名称を有するものを含み、広く国家間における法的な合意文書を言う。
こうした広義の条約は、日本の実定法上の用語としては「国際約束」と称され、憲法第73 条第3号により国会の承認を必要とする国際約束(「国会承認条約」)と同条第2号にいう外交関係の処理の一環として行政府限りで結び得る国際約束(「行政取極」)に分けられる。

同じ筆者が2020年に書いた論文に、わかりやすい表がありました。
議員の質問に出てくる「大平三原則」の説明も引用しておきます。
国会の承認を要する「条約」の範囲

憲法上、国会の承認が必要とされる国際約束(国会承認条約)のカテゴリーとして、①法律事項を含む国際約束、②財政事項を含む国際約束、③上記の①②を含まなくても、日本と相手国との間、あるいは国家間一般の基本的な関係を法的に規定するという意味において政治的に重要な国際約束であって、それゆえに発効のために批准が要件とされているもの、という3種類を挙げている。これは一般に国会承認条約の判断基準についての「大平三原則」と呼ばれている。

国会の承認を要する「条約」の範囲 より


国会の承認を要する「条約」の範囲 より

国会承認が必要か不要かは、非常に重要なポイントとなります。


ルールを無視して改正案を承認したWHO

総会の前には有識者として参加した林千勝氏により、第75回WHO総会委員会A(2022年5月27日開催)でのデタラメな承認に関する解説がありました。原口一博議員が、その動画も公開しています。


https://youtu.be/r5x0s-Ozb10?si=uwcFjOiL-snxf7tK

議場はガラガラなのに、定足数を確認せずに承認します。

https://youtu.be/r5x0s-Ozb10?si=uwcFjOiL-snxf7tK

このままでは、このような人たちが決めたことに従わなければならなくなるかもしれません!!


第3回超党派WCH議員連盟(仮称)総会 令和6年1月25日

第4回超党派WCH議員連盟(仮称)総会 令和6年2月27日

第2回超党派WCH議員連盟(仮称)総会に関する記事


厚労省が発信している情報