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HPVワクチンの安全性 ミスリードした夕刊の見出しに厚労省が関与!?

2016年12月26日付の夕刊各紙は、厚労省のHPV研究班による調査結果として、接種後に出ている健康被害はHPVワクチン接種との因果関係がないかのような報道をしました。2017年3月に行われた国会質問で日本共産党・高橋千鶴子議員は、調査結果がほぼ同じ見出しで一斉に報じられたことについて、記者たちに事前説明があったことを厚労省に認めさせています。


2017年3月17日の国会質問

前回の記事(後半)で、HPVワクチンに関する意見交換会について、日本共産党・高橋千鶴子議員のサイトで公開されていた国会質問の議事録を掘り起こしました。

国会質問の後半では、厚労省とメディアの関係について追及しています。

質問日:2017年 3月 17日 第193国会 厚生労働委員会
HPVワクチン問題について(2)

国会質問の概要

2016年12月26日付の夕刊各紙は一斉に、厚労省のHPV研究班がHPVワクチン未接種でも接種後に表れる症状と同様の症状があるなどと、ワクチン接種との因果関係がないかのように報道しました
 高橋氏は、調査結果では頭痛や倦怠(けんたい)感などどれか一つでもあれば症状にカウントしており、ワクチン接種と接種後の症状とに因果関係があるとは言えないというのが研究班の結論であることは議事録を見ても明らかだと指摘。厚労省の見解をただしました。同省の福島靖正健康局長は、両者は比較できないというのが研究班の結論だったと認めました。
 12月26日の審議会終局前に同日夕刊が研究班の結論を一部のみを報じたのは、厚労省が事前に記者に内容を説明していたからだとも認めました。

https://chiduko.gr.jp/kokkai/kokkai-5384

厚労省研究班の調査というのは下記の全国疫学調査です。
祖父江班による全国疫学調査(厚労省のHPにて公開)

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000147016.pdf

「母集団の年齢構成が異なることに加えて、多数のバイアスが存在するため比較できない」と書かれています。

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000147016.pdf

「多様な症状」と、まとめてしまっていることも大きな問題です。

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000147016.pdf

頭痛や腰痛にはそれほど差が見られませんが、全身の痛み、光や音、においに対する過敏、歩行障害、脱力発作、握力の低下などは明らかに差があります。

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000147016.pdf

月経異常や認知機能の障害にも、かなり差があります。

それにも関わらず、これを報じた夕刊では各社同じような見出しをつけました。

2017年3月17日厚生労働委員会提出資料
高橋氏が提出した資料に、新聞のコピーも入っています。

https://chiduko.gr.jp/wp-content/uploads/2017/03/8c30672aa07b5c00c11bec829c9d88e8.pdf


https://chiduko.gr.jp/wp-content/uploads/2017/03/8c30672aa07b5c00c11bec829c9d88e8.pdf

各社、「未接種(非接種)でも同じような症状がでている」ことを見出しにしています。それぞれ違う記者が書いているのに、こんなにも似通った見出しになることは通常では考えにくいです。

記事には、「研究班は、今回の調査だけでは未接種者と接種者の比較はできないとしている」「因果関係は判断しなかった」などと書かれていますが、この見出しでは「健康被害は接種によるものではない」という誤解を与えます。この調査では比較できなかったのですから、「因果関係がない」とも言っていないのです。つまり、「安全」とは言っていません。

このことについて、高橋議員は国会質問で追及しました。以下は、福島政府参考人が、2回の答弁で異なる説明をしたことに対する発言です。

○高橋(千)委員  そうですね。今、さっき言った答弁と同じだと言いながら、違う答弁をしましたよ。つまり、最初は、一回目の答弁は、接種した人もそうじゃない人も多様な症状を呈する者が一定数存在した。しかし、二回目の答弁には、そのほかに、結果が、これは審議会の配付資料の中に、こう書いてあります。祖父江氏のまとめです。「本調査によって、HPVワクチン接種と接種後に生じた症状との因果関係は言及できない。
 二つ結論があるわけですよね。それをちゃんと言わなきゃだめなんじゃないですか。意図的に上の方だけを今言っているわけなんです。 

https://chiduko.gr.jp/kokkai/kokkai-5384


○高橋(千)委員 祖父江氏は最後に、その比較はこの調査から出ない、こう言っているんですね。明言しています。
 だとすれば、先ほど私が紹介した記事は、いかにもミスリードではありませんか。審議会が終わったのは十二月二十六日の午後四時です。ところが、先ほど紹介した記事は十二月二十六日の夕刊です。つまり、審議会が終わる前に、もう発行しているんです。つまり、これは厚労省が審議会の前に記者レクをやっているからですね。

https://chiduko.gr.jp/kokkai/kokkai-5384

夕刊は、審議会が終わる前には発行されていたのです!

○高橋(千)委員 大臣、答弁をそらさないでくださいよ。
 私が聞いているのは、結果が出る前に、研究班が報告する審議会がやられる前に記者レクをやったんでしょうと聞いているんです。イエスかノーか。

https://chiduko.gr.jp/kokkai/kokkai-5384


○福島政府参考人 お答えいたします。
 この審議会におきまして御説明する、報告をいただく内容につきましては、非常に学術的な内容であるということで、事前に記者の皆様方にも、どういう研究を行ったのか、そして結論についてどういうものを出されたのかということについては、私どもの評価を加えることなく中身を正確にお伝えするということで、正確に御理解いただくということで御説明をいたしました。

https://chiduko.gr.jp/kokkai/kokkai-5384

事前に「説明した」ことは認めています。説明しただけなら、記者それぞれの解釈が見出しに反映されるはずです。

○高橋(千)委員 正確に御理解していただいていたら、全部同じ見出しになるはずがないですよ。厚労省がそういうレクをやらなければ、こうならないわけでしょう。四社一斉に、もっとあるかもしれません、私、今これしか持ってこられませんでしたけれども。

 研究会の、いいですか、審議会が終わった翌日の読売新聞には、「「副作用」症状 追加分析へ」という見出しで、比較はできないとの内容だったと、研究班の報告の中身を詳しく紹介しています。それと並べて、弁護団の、調査に問題がある、会見内容も並べて報じています。だけれども、夕刊の一面で報じた翌日に、三十二ページでしたかね、三十一ページだったかな、そういう中で、どっちが目立つかは明らかじゃありませんか。
 どのように説明をしたのか、本委員会に資料を求めます。委員長、お願いします。

https://chiduko.gr.jp/kokkai/kokkai-5384

翌日の読売新聞朝刊では、「調査に問題がある」という弁護団の会見も報じていたようですが、目立たないページだったとのこと。

○福島政府参考人 お答えいたします。
 先ほど、審議会で御説明した中身につきまして、審議会で御報告いただきます中身そのものについて報告したわけでございます。
 これは事前に高橋委員の方にもお届けをしておりますけれども、このときの疫学調査の結論、三枚結論がございますけれども、その特に一番最後の結論は、「HPVワクチン接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の「多様な症状」を呈する者が、一定数存在した。」二つ目が、「本調査によって、HPVワクチン接種と接種後に生じた症状との因果関係は言及できない。」この中身につきまして、これが結論であるということについても、きちんと御説明をいたしております。

https://chiduko.gr.jp/kokkai/kokkai-5384

高橋議員は、説明したという資料を理事会、委員会に提出するように言ったあと、下記のように締めくくりました。

○高橋(千)委員 やはり、さっきも言ったように、ここで報道されていることが、もう結局が、同様の症状を、打っても打たなくても一緒だということが、一番メッセージとしてやられているんですよ。それは厚労省が、わざわざ研究班が報告をする審議会の当日に新聞に出して、審議会の中身は、もっともっと議論しなくちゃいけないねとなったのに、これをまずミスリードのようにやって、それが、その後の新聞各紙、いろいろなことがあるたびに書かれているんですよ。そういうことが問題だと言っているんじゃないですか。全然反省していない。このことを強く指摘して、この資料をしっかりと精査をして、ただしていきたい、このように思います。 以上で終わります。

https://chiduko.gr.jp/kokkai/kokkai-5384

この調査では「比較できなかった」のであり、因果関係は判断していません。つまり、「健康被害は接種によるものではない」という結論もでていないのです。それなのに、推進派は名古屋スタディやこの調査を「安全」である根拠として持ち出します。

同じような見出しでミスリードした、メディアの罪は重いと思います。