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特別企画:わが心の"戦争映画"3選 ④『ディア・ハンター』『地獄の黙示録』『キリング・フィールド』【映画レビュー】

『ディア・ハンター』(1978)

監督:マイケル・チミノ
ロバート・デ・ニーロ
クリストファー・ウォーケン
メリル・ストリープ

第51回アカデミー賞受賞 作品賞/監督賞(マイケル・チミノ)/助演男優賞(クリストファー・ウォーケン)/音響賞/編集賞5部門受賞。
主演男優賞(ロバート・デ・ニーロ)/助演女優賞(メリル・ストリープ)/脚本賞/撮影賞ノミネート。

ベトナム戦争下「生と死」、「日常と戦場」を丁寧に描き出す。戦闘シーンは少ない。
平和で幸せな結婚式。大自然の中の鹿狩り。
そして地獄のロシアンルーレット。
狂気のクリストファー・ウォーケン。抑えた演技のデ・ニーロ。当時ほぼ無名だったメリル・ストリープ。名バイプレーヤー、ジョン・カザールの遺作となった。俳優陣皆が素晴らしい。
当時はPTSDも知らず戦争によって人が崩壊していく様にショックを受けた。
ヒリつく緊張感に心拍数が上がりまくる。
戦争が大切なものを奪っていく。
紛うことなき名作。
 
ラストの皆で歌う「ゴッド・ブレス・アメリカ」が虚しく聴こえる。
テーマ曲「カヴァティーナ」、フランキー・ヴァリ「君の瞳に恋してる」など音楽も素晴らしい。


『地獄の黙示録』(1979)

監督:フランシス・フォード・コッポラ
マーロン・ブランド
ロバート・デュヴァル
マーティン・シーン
デニス・ホッパー

第52回アカデミー賞 撮影賞/音響賞受賞。
作品賞/監督賞/助演男優賞(ロバート・デュヴァル)/脚色賞/美術賞/編集賞ノミネート。
1979年カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞。

初めて観た時(ベトナム戦争のことをよく知らない中学生)の感想は、「わけがわからない、ヤバいものを観てしまった。」

狂気を描き出しているのに美しい。その美の中に危険な空気が漂う圧倒的画力。CGのない時代に生み出されたド迫力の映像。
ワーグナーの「ワルキューレの騎行」をバックに編隊を組むヘリ群の登場。ドアーズの「ジ・エンド」にナパーム弾。サーフィンがしたいだけで虐殺するキルゴア中佐「朝のナパーム弾の香りは格別だ」の名セリフ。
牛の屠殺、偽善と欺瞞、水上スキーの「サティスファクション」、プレイメイトは踊る。狂ってる。戦争がひとを狂わせるのか、狂ってるひとが戦争を始めるのか。
そして後半はカオスに突入。ウィラード大尉同様、観ている側も精神を病んでいきそうだ。
正直いまだに名作と呼んでいいのか分からないが、何度観ても魅入ってしまう。

映画と同様、狂気に満ちた舞台裏を知るとより魅力が増すはずだ。

「スター・ウォーズ」の撮影に行ってしまったハリソン・フォードはちょい役で。役名は「ルーカス大佐」、ローレンス・フィッシュバーンもいる。
 

『キリング・フィールド』(1984)

監督:ローランド・ジョフィ
サム・ウォーターストン
ハイン・S・ニョール

第57回アカデミー賞 助演男優賞(ハイン・S・ニョール)/編集賞/撮影賞受賞。

原作は、ニューヨーク・タイムズの記者として、カンボジア内戦を取材した(のちにピューリッツァー賞受賞)シドニー・シャンバーグの体験がベースの実話。
カンボジア内戦。当時、何の予備知識もないまま劇場で鑑賞。

極左過激派クメール・ルージュによる残虐行為。ポル・ポト政権下、知識人を大量虐殺する。
ベトナム戦争の余波から起こったであろうカンボジア内戦。
しかし映画は歴史的背景を多くは語らない。
派手な戦闘はなく強制労働、理不尽な銃殺、死体の山、夥しい髑髏の河、リアルな描写が重く圧し掛かる。
戦禍の大地を彷徨う姿、夕陽をバックに自然の美しさがより一層悲惨さを増幅させる。
ジョンの「イマジン」が心震わせ余韻を残す。
 
「この映画に感動するのはカンボジア情勢に無知な人々だ」(本多勝一)という言葉が出るほどに、現実は映画の何倍も悲惨であったのだ。

今や世界的な観光地となったカンボジアの過去の歴史、映画というフィルターを通して薄められてはいるが、この事実を忘れてはいけない。

助手のディス・プランを演じたハイン・S・ニョール。俳優ではなくカンボジア出身の医師で、実際に4年間クメール・ルージュの下で強制労働を強いられた経験を持つ。アカデミー助演男優賞を受賞した。

                     (text by電気羊は夢を見た)

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