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新刊『泣ける日本史』/苦しみぬいた人の言葉こそ、生きる力に溢れている。(編集者 曽我彩)

日本史の教科書を読んで「泣いた」ことがある人は少ないだろう。いわゆる「日本史」は大抵、英雄や政治家のサクセスストーリーだ。だがその陰には人知れず流れた無数の涙があり、そこにこそ人間ドラマがある。この冬、その涙に注目した『泣ける日本史』という全く新しい歴史書が誕生した。描かれるのは、過酷な状況を懸命に生きた偉人たちの人生だ。彼らの生き様は、今を生きる私たちに何を語りかけるだろうか。

(語り手)編集部:曽我彩(そが あや)
(聞き手)出版マーケティング部:中西亮(なかにし りょう)

教科書でなく、心に残る「泣ける」歴史

(中西)
編集者が生の声を直接お届けする「編地直送!」。今回のゲストは、11月11日(木)発売の新刊『泣ける日本史』を担当した曽我彩さんです。さて本書は、一言でいえばどのような本なのでしょうか。

(曽我)
この本は「泣ける」をテーマに、日本史上の19人の偉人のエピソードを集めた伝記です。吉田松陰や渋沢栄一といった有名人から、銭屋五兵衛など隠れた偉人まで幅広く登場しています。戦争や飢饉といった理不尽な世の中で、たくましく生きた偉人たちの「泣ける」話が満載です。

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(中西)
著者の真山知幸(まやまともゆき)先生について教えてください。

(曽我)
ベストセラーになった『ざんねんな偉人伝』『ざんねんな歴史人物』(両、学研プラス)などを書かれた偉人研究家の先生です。独自の目線で描く偉人伝や歴史は、ユーモアと学びに溢れています。今作には理不尽で辛いエピソードも多いのですが、真山先生の優しい書き味により誰でも抵抗なく読める作品に仕上がりました。

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「教訓」より「共感」の日本史を作りたい。

(中西)
企画の経緯を教えてください。

(曽我)
2020年6月の企画会議で山本社長が「泣ける日本史を考えてみて」とお題をくださり、企画が始まりました。そこからコンセプトを検討して、7月に真山先生に企画書を送ったところ快諾していただきました。

(中西)
「泣ける日本史」というコンセプトを具体化するのは難しかったのではないでしょうか。

(曽我)
そうですね。一言で「泣ける」といっても、様々な方向性があり得ます。当初は、「〇〇のスキルで、辛い境遇を乗り越えられた」というように、自己啓発書風に「教訓」を前面に押し出そうと考えていました。実際に、先生にもこの方向性で書いていただいていたのですが、次第にこれでよいのかという迷いが生まれてきました。

(中西)
「迷い」といいますと?

(曽我)
教訓ありきだと、どうしても「すごい」人の話になってしまい、自分とは縁遠い印象を与えてしまいます。むしろこの本には、上から目線の「教訓」ではなく、自分と重ね合わせられるような「共感」が必要だと考えが変化していきました。真山先生には既に何本も原稿を書いていただいていたので本当に申し訳なかったのですが、初めからコンセプトを考え直したいとご相談しました。すると先生も「手をかければかけるほど、良いものになると思いますよ」と納得してくださりました。このお言葉には本当に救われました。

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苦しい状況の中での生き様にこそ、感動がある。

(曽我)
改めて原点に立ち返って「泣ける」について考えました。文字通り涙が出る「かわいそう」とは違う何かが必要だという直感はあったのですが、核心は掴みかねていました。そこで参考にしたのが、フジテレビの人気番組「ザ・ノンフィクション」でした。厳しい現代社会を生きる人々にフォーカスしたドキュメンタリーです。この番組がなぜ根強い支持を集めるのかを知りたくて、何本も見て分析しました。

(中西)
どのような気付きを得られたのでしょうか。

(曽我)
「ザ・ノンフィクション」には、辛い状況を乗り越える「勝利の方程式」のようなものはありません。でも、ぎりぎりの状況でも笑顔でいたり、楽な道があるのに自分のやりたいことを追いかけている姿に人間の凄みを感じました。苦しい状況の中で、それでも懸命に日々を生きる営みに人は感動や勇気をもらうのではないか…、その感覚を誰もが知る日本史上の人物で伝えたいと思い、私の中での『泣ける日本史』の輪郭がはっきりしました。

(中西)
特に曽我さんの心に残っている偉人のエピソードを教えてください。

(曽我)
あえて一つ挙げれば「大塩平八郎の乱」です。教科書にも載っている有名な反乱です。大塩平八郎は飢える人々のために立ち上がるもすぐに鎮圧され、命を落としてしまいます。この乱の根本には飢饉がありました。飢饉には人災的な側面もありますが、基本的には自然がもたらす災害と言えます。報われずとも民衆のために生きた姿は、コロナという災害に直面する私にとって他人事とは思えず、思わず心動かされました。

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「想い」と「縁」が切り拓いた、編集者の道。

(中西)
曽我さんは以前、他社で違う職種についておられましたが、どういった経緯で編集者になられたのですか?

(曽我)
もともと、中高生の頃から物語が大好きで、就職活動では映画や出版を中心に受けていました。その中でご縁があったのが書籍の流通を担う販売会社(取次)でした。多くの書店や出版社との取引があり、業界全体のことを学ばせていただきました。ただ心の中では、クリエイティブに直接関わりたいという想いも残っていました。そんなとき、文響社で働く大学の先輩から編集アシスタントのお誘いをいただいたのです。自分に編集の才能があるのだろうかという迷いもありましたが、大きなチャンスだと思い飛び込みました。

(中西)
そうだったんですね。その決断は正しかったと、今思われますか。

(曽我)
もうすぐ文響社に入社して2年になりますが、挑戦して良かったと思っています。自分の編集スタイルや判断基準はまだ確立できていませんので、日々迷いの連続です。結果を出すまで、自信は持てないと思います。しかし、昼夜本気で考えられる仕事ができることに満足しています。今作でも、真山先生に原稿を書いていただき、世の中になかったものを出せたことに大きなやりがいがいを感じました。

後悔しないように、生を全うする。

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(中西)
『泣ける日本史』は、どんな読者の心に響くと思いますか。

(曽我)
日本史好きの方はもちろんですが、人生で辛いことを経験しておられる方に共感していただけると思います。コロナ禍で日常を失い、理不尽な事柄に直面されている方も増えていることかと思います。そんな方々が、昔の日本でも度を越えた理不尽さの中でもがきながら、なんとか自分の人生を全うしようとした人々がいたことを知り、少しでも生きる活力のようなものを感じていただけたらと思います。

(中西)
コロナや不景気など、私たちもなかなか「泣ける」時代を生きていますが、今をどのように生きていけばよいのでしょうか。

(曽我)
あくまで自分自身の話なのですが……、この本を編集して「後悔しないように生きたい」と強く感じました。本書の偉人たちは、死に際まで真っ直ぐで、自分の心に嘘をついていません。報われない偉人たちは、生きるのが上手いとは言えませんが、きっとその人生に悔いはなかっただろうと思います。その生き方は、幸せの形が多様化し、必ずしも金銭面での成功を収めなくても、納得した人生を歩みたい人が増えている現代の価値観にも通ずるのではないでしょうか。非業の死を遂げながらも生き様で後世に名を遺した偉人たちから、現代を生きる勇気を受けとっていただけたらとても嬉しいです。

(中西)
曽我さん、今日はお話をありがとうございました。『泣ける日本史』は、11月11日(木)発売です。ご期待ください。

著者 真山知幸(まやま ともゆき)
著述家、偉人研究家。1979年、兵庫県生まれ。同志社大学法学部法律学科卒業。上京後、業界誌出版社の編集長を経て、2020年独立。偉人や歴史、名言などをテーマに執筆活動を行う。『ざんねんな偉人伝』『ざんねんな歴史人物』は計20万部を突破しベストセラーとなった。他にも『企業として見た戦国大名』『ざんねんな三国志』『偉人名言迷言事典』など著書多数。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義(現・グローバルキャリア講義)、宮崎大学公開講座などでの講師活動も行う。

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