純愛の中で人は強くなる
伊藤左千夫の『野菊の墓』は、15歳の少年・斎藤政夫と2歳年上の従姉・民子との淡い恋を描いている。夏目漱石が絶賛した小説でもある。夏目漱石は左千夫あての手紙で、「自然で、淡白で、可哀想(かわいそう)で、美しくて、野趣があって」こんな小説なら「何百篇よんでもよろしい」と評したという。敦もシンクロしてしまうほど民子が好きだった。主人公政夫がまだ少年のころ、家にきていた従姉の民子との幼い恋を回想したものであり、実話に基づいていると言われた伊藤左千夫の処女小説である。周囲の無理解から清