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温泉とラーメンと


敦と瑠璃子は小田急線に乗って「鶴巻温泉」を目指して、9時48分の快速急行に乗った。車内は、比較的若い人たちで混んでいる。推測するに、学生やフレックスのサラリーマンがか多そうだ。GUの紙袋を提げた黒のワイドパンツにベージュのニットの上に黒のレザージャケットを着た女が、目の前のつり革に立っていた。愛甲石田をこえても、降りないのは、まだまだ、遠くに向かっている。

車窓は、大山を背景に、住宅地を抜けて、畑が広がる。伊勢原に着いた。大山登山の入り口だ。伊勢と付くからと言って、伊勢海老やお伊勢さんと関係があるわけじゃ無い。伊勢丹とはもっと無関係だ。ここで、半分の乗客が降りた。ベンチシートが、ソーシャルディスタンスの様にまばらになった。次の駅が鶴巻温泉駅だ。温泉街内に住宅地や高層マンションが建設され、住宅地の中にある温泉街となっている。いつも、公営の日帰り温泉である「弘法の里湯」に行っている。鶴巻温泉には以下の施設がある。

* 宿泊施設(旅館):陣屋、大和旅館、梵天荘
* 日帰り温泉:陣屋、弘法の里湯(公営)、大和旅館

『豊かな自然に恵まれた弘法の里湯は、「秦野市第一号泉」(露天風呂)と平成22年に湧出した「つるまき千の湯」(内湯、貸切風呂)の2つの源泉が一度に楽しめる公営の日帰り温泉です。カルシウムを多く含んだ良質な出湯で身体が大変あたたまる成分の濃い温泉です。泉質は、弱アルカリ性 カルシウム・ナトリウム塩化物泉で、よく温まり神経痛、筋肉痛、きりきず、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症などに効能がある』とパンフレットに書かれている。

秦野駅北口-浅間山(せんげんやま)-権現山(ごんげんやま)-馬場道-弘法山(こうぼうやま)-鶴巻温泉駅 徒歩約2時間10分(休憩時間含まず)というルートで弘法山ハイキング(3つの低山縦走 丹沢と富士山の感動の絶景が待つ日帰り登山)が初心者に人気だ。今日も、登山靴を履いたチェックのシャツを着た女子二人が、ディバッグのリュックを背負って、弘法山登山口に向かって歩いていく姿を見かけた。通常と逆コースだが、標高250メートル以下の低山なので安全で、しかも気軽にハイキングができるので人気だ。権現山の展望台からは、晴れた日に富士山、秦野市街地、相模湾、江ノ島、房総半島が見渡せる360度のパノラマビューが楽しめるという。天候が良ければ東京スカイツリーも見ることができる。「こんないい天気の日に行ったら綺麗だろうね」と瑠璃子が残念がるが、敦の足では無理だと判断して諦めているが、一度は行ってみたいと思っている。

駅から2〜3分で「弘法の里湯」に着く。入り口前に無料の足湯がある。すでに数人が浸かっていた。秦野市が運営しているので、コロナ対策が万全だ。万全過ぎて、マスク着用を強いられる。平熱でクリアして、靴を靴箱に入れる。受付で料金を支払う。65歳以上のサービスがあるので、六百円で済んだ。しかも、スタンプが溜まっていたので瑠璃子は無料だ。靴箱の鍵を預かり、男女のそれぞれの湯に向かった。偶数日と奇数日に分けて、二つの湯を交換する。スチームサウナとドライサウナの違いがある。敦はドライサウナが好きだ。丹沢の山小屋をイメージした「石造り」の山湯、秦野の里山をイメージした「ひの木造り」の里湯の二つだ。ドライサウナの「ひの木作り」になった。サウナの分時計で12分経ったら出ると決めて、汗を流していると定数の五人になりそいうだったが、かろうじて出入りもあるので、四人になった。サウナを終わり、洗い場で、洗髪や髭剃り、体を洗い終えて、入湯。十人くらい入れる大浴場と露天風呂がある。大浴場で30分半身浴をした敦は、温泉の入り方が分かって来たような気がした。

「半身浴」は全身浴ほど水圧がかからない分、身体への負荷が少ないのがメリットで、 心臓や肺が弱い人や、高血圧の人は半身浴がおすすめだという。そんなことを瑠璃子に教わり、最近初めてばかりだが、長く湯船に浸かれるのもメリットな気がする。「温泉から出て来てからが、効果が絶大だ。ポカポカ温かい状態が続く」と敦は絶賛する。更衣室で荷物を取り出し、奥の空いているスツール椅子に座り、着替えをした。足が不重なので、下着、靴下、シャツ、パンツ、ベストの順に着るのだが、手間がかかるので、ロッカーから離れた場所で着替える。着替えに往生している高齢の老人もいる。介護が必要なほど、時間がかかっている。「お前もな」と言われそうで、失笑した。

2階に100畳くらいの休憩室がある。自動販売機で、生ビール、もつ煮込み、冷奴、チーズ&サラミを買って、チケットをカウンターに置くと飲み物、料理が出てくる。カウンターの中は、おばちゃんが一人で捌いている。「初めのいっぱいがたまらないわね」と普段ほとんどビールを飲まない瑠璃子が、「麒麟一番搾り」の生ジョッキを豪快に飲む。「幸せだな」と敦が加山雄三のような言葉を吐く。二人の笑顔で部屋が明るくなって来たような気がした。ほろ酔い気分のまま、帰路に付いた二人。「何を食う」「ラーメンがいいな」「じゃ、海老名に帰って、ビナウォークの新しい店に行こうか」と「ぐり虎」と書いてグリコという岡山本店の店に行くことにした。「制服がかっこいいよね。内装もオシャレだし。塩ラーメン食べたかったの」とベタ褒めの瑠璃子と敦も同じ気持ちだった。

そんなこんなで小さな旅は、ラーメン屋で終了した。イオンで息子に土産代わりに発泡酒を6本買って帰路に付いた。「結果、ビールを計2杯飲んだよ」酔いが回っているので、追加のように買ってきた発泡酒2本と冷蔵庫で冷やしておいた日本酒2合を飲んだ。「もう酔っ払っているから寝な」と瑠璃子に諭され、床についた敦であった。
温泉効果の深い眠りとお酒のリラックス感で深夜まで爆睡している敦は、幸せな寝顔を見せていた。誰にって、寝顔を見ていたのは猫だった。


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コミック小説のジャンルでデビューしました。登録のメールとPWを忘れてしまいましたので、作り直しました。よろしくお願いします。 続きはコチラ https://note.com/bungo03/