スマホの先の世界
朝起きると、右手の親指でスマホを開けている敦。「指で認証して、スマホを開く方がいいよ」とソフトバンクの中国人スタッフからスマホを買う時に、しつこいくらい指認証を勧められた。ソフトバンクと言っても、看板だけで、ノジマの社員だと言う。「ノジマのソフトバンクなの」「ノジマからお給料もらってます」なんとも正直な女性からだろうかと、感心した敦であった。その強引な勧めで、重宝している。
敦の家には、スマホが敦の1台しかない。息子は、朝帰りの日に排水溝に落としたまま、契約を解除した。妻の瑠璃子も「無ければ無いで生きていける」と苦しい家計を知って、更新しなかったままだ。ついの間まで、Wi-Fiを使って、iPhone4でメールをやり取りしていた。しかも、重要な原稿の話などを編集さんとやっていた。「最近、ipadを買ったので、メールもできるよ」と喜んでいた。敦も電話をほとんど使わない。ショートメールかGmailでことが済む。電話は、LINEかファイスブックの電話機能を使う。「便利ちゃあ、便利な世の中になったもんだ」と息子に微笑みながら言った。
「昔は、固定電話で、プッシュフォンだっから、今みたいに、記憶しているわけじゃ無かった。記憶は、人間の脳を使う。だから、100件200件の電話番号は暗記していた。プシュフォンの数字の配列で覚えんだ。意外に覚えられるものだよ。今じゃ、自分の電話番号さえ忘れる。そんなもんだ。昔がすごい訳じゃなくて、やらなければ、ならないと人間は俄然張り切るもんだ」と自慢話と違い、敦は、昔話をした。
携帯の歴史も長い。iPhone前は、ガラケーの携帯電話で、厚さも厚かった。ノキアを最初に契約したと思う。アナログの時代、いわゆるガラケーしかない時代だった。流石に、平野ノラが持っていた化け物みたいな携帯は、持っていなかったが、胸ポケットには入らない大きさだった。しかも、100km以内なので、それを超えると圏外になり、浮気などがばれるリスクがあった。1991年頃の話だと思う。2007年にiPhoneが発売された。敦一家は、2010年にiPhone4を買った。初めてのスマホだった。息子も高校1年生で買ったが、その頃はクラスで2〜3人しか持っていなかった。3年後の高校3年になると一気に80%がスマホに変わったという。衝撃的なスマホ時代の到来であった。
たった20年で激動の携帯電話の変化に敦も驚いている。今や携帯がPC代わりになっている生活だ。ポケットに中に、大量のデータがクラウドも含め詰まっている。「人間の脳みそと同じようにポケットの中身が脳と化している。こんな時代になると誰が予測しただろうか」と自問自答する敦であった。「ただ、スティーブ・ジョブズ亡き後、革命的な技術革新は何も起こっていない。世界中で、世の中のためになる革新が起こるとは想像しにくい。出来るなら、破天荒な人物が現れ、世界を変えられればいいな」と敦は思っている。
スティーブ・ジョブズが最後に言った言葉がある。
『物質的な物はなくなっても、また見つけられる。しかし、一つだけ、なくなってしまって、再度見つけられない物がある。
人生だよ。命だよ。
あなたの家族のために愛情を大切にしてください。あなたのパートーナーのために、あなたの友人のために。
Treat yourself well. Cherish others.
そして自分を丁寧に扱ってあげてください。
他の人を大切にしてください。』
死ぬ間際まで、いいこと言うなと思ってしまう。世界中を不幸にする悪徳商人たちに教えたいが、彼らは自己中の悪魔たちだから聞く耳を持たない。世界制覇を狙うディープステートの存在。「ディープステートとは、アメリカ合衆国の政治が陰で操られているとする陰謀論で、影の政府や国家の内部における国家と重複する。政治システムの中に共謀と依怙贔屓が存在し、合法的に選ばれた政府の中に隠れた政府を構成していることを示唆するもの。」とネットで書かれていた。
「コロナ後の世界」をめぐる闇世界として、フリーメイソン/ディープ・ステート/「13血族派」イルミナティ/「グノーシス派」イルミナティ/ロスチャイルド/ロックフェラー/米ナチス派/P3ロッジ/GAFA/Qアノン などが挙げられている。こんなに暗脈する団体や企業があることに驚いている。悪の世界は、蜘蛛の巣のように張り巡らされているのに、正義の道は閉ざされている。大きく変えられそうなのが、アジア諸国なのかもしれないと敦は思った。世界に蔓延した悪の枢軸。それを壊滅できるのは、アジア以外ない。「なぜなら、経済と消費の推進力にある。ヨーロッパやアメリカは、終焉国家だと踏んだ。この先が無い」と敦は常々思っている。
中国の驚くほどの経済発展と先端技術革新に対抗しているアメリカも、力尽きてしまう。全ての面で負ける。人権問題や民族問題などで攻撃する以外、世界との歩調は合わない。それさえ、クリアして仕舞えば、驚異の国家になってしまう。21世紀は、アジアの時代になる。アメリカの闇社会も壊滅されてしまう。「世界地図が変わる瞬間が訪れる。その日まで生きたいな」と瑠璃子に言った。「その日が日本の命日になるかもよ」ブラックユーモアにしてはキツイ一言だった。