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子役とは言わせない名演が続く/金曜ドラマ『妻、小学生になる。』

このドラマには、初回からびっくりさせられっぱなしである。

主演のビジュアルに驚いた初回

まず、その数週間前まで、ふかっちゃんとのラブなドラマ『恋ノチカラ』を配信で繰り返し視聴していたせいか、堤真一さんの「冴えないおじさん」演技はかなり衝撃的だった。

顔色が悪く、頬はたるみ、髪はボサボサで猫背。いくらこないだまで20年前のドラマを観ていたからって、こんなにギャップを感じていいものなのか。「ちょっと老けすぎじゃないのかしら?」と思うほどだった。

(以下、ドラマの内容を含みます)


10年前、事故によって妻であり母である貴恵(石田ゆり子さん)を失ってから、完全に時が止まってしまった新島家。堤さんが演じるのは貴恵の夫・新島圭介。そして、娘の麻衣を蒔田彩珠さんが演じている。

新島家にとって、この10年がどういうものだったか。圭介のビジュアルからいっぺんに理解できる。

考えてみれば、映画『容疑者Xの献身』や『俺はまだ本気出してないだけ』では地味な天才役やだらしない役を演じているので、ギャップを感じるほどでもなかったのかもしれない。だけど、何しろ『恋ノチカラ』の貫井功太郎がかっこ良かったもので、圭介の覇気の無さとビジュアルに「ええーー」という感想になってしまった。

しかし圭介は、貴恵の生まれ変わりに気づくと、みるみるうちにパワーをみなぎらせていく。その様子が見事で、やっぱり役者さんの本気は凄まじい。

見た目は子ども、心は大人を演じる毎田暖乃

そんな堤さんを相手に初回から名演技を繰り広げているのが、貴恵の生まれ変わり・白石万理華役の毎田暖乃ちゃんである。

「暖乃…………、おそろしい子!」(ちょっと言ってみたかった)

彼女の喋り口調が完璧に石田ゆり子さんで、「憑依!まさにこれが憑依ってやつ!!」と、初回は興奮のなか視聴し終えた。見た目はリアルに子ども、中身は大人の新島貴恵。ともすれば視聴者は、「子どもが大人の口真似をしている」といった、嫌悪に近い感情、いや“全否定”しかねない状況だ。

なのに、暖乃ちゃんにはそういった違和感がない。

「暖乃…………、おそろしい子!」


特に先週の第7話。認知症を患った母・礼子を前に、自分の思いを吐露しながら涙を流す貴恵(ビジュアルは万理華)に見入ってしまい、しばし呆然とした。子どもの泣きのようで、そうじゃないのよ。……って、何言ってんのか、私は。母親より先に逝ってしまった、ある大人の女性の泣きになっている! どう感じたかは人それぞれと思うけれど、少なくとも私にはそう感じられる演技だった。

姉を失ってから、一人でもがいてきた友利

貴恵の頼りない弟・古賀友利を神木くん(いまだに“くん”付けしてしまうの、ごめんなさい)が演じているのだが、彼の第7話も涙の回だった。漫画家としてデビューがほぼ決まり、順調に人生が進みかけていたところで大好きな姉を突然亡くし、夢や理想を放り投げてしまった友利。万理華のことを「本当に姉ちゃんかも」と気づきつつ、いまだ半信半疑の様子だった。しかし、幼い頃からの秘密の隠れ家まで追いかけてきた万理華が、ふがいない自分をいつも叱咤激励してくれた貴恵そのもので、友利は死んでしまった姉への思いを初めてぶつけ、子どものように泣きじゃくるのだった。

歳の離れたわが家の姉もしっかり者で、私は今でも心配され続ける末っ子なので、このシーンにはためらいなく涙をこぼした。姉が進学のため遠くに行ってしまったとき、その日の夜「この家、どうするの? やっていけない、私」と、ひとり泣いたことを思い出した。

途中石田ゆり子さんが登場するとはいえ、下手すると変な感じになりかねないのだけど、そういったことはまったく感じられない。互いの演技に呼応する暖乃ちゃんと神木くん。個人的名シーンのひとつとなった。暖乃ちゃんを「ちゃん」付けで呼んでいいのか悩むほどだが、今は「ちゃん」付けで呼ぶことにしよう。

難しい役どころが、もうひとり

最後に、吉田羊さんが演じている万理華の母・白石千嘉にも触れたい。これまでの人生に降りかかった不幸なできごとについて、娘に当たり散らしてきた。「あわわわわ、千嘉、こわい、こわい……」と毎回思わせてくれた。

目の前の万理華が自分の娘であって娘じゃないと理解してからの、不器用ながら鎧を外していく演技にも魅了される。友達とはいかないけれど、貴恵と徐々に心を通わせていく様子、万理華への間違った執着から親としての愛を取り戻していく様子。千嘉も難しい役どころのひとりなので、終盤のさらなる変化が楽しみだ。

新島家と白石家、2組の家族がどのような生き方を選ぶのか。生まれ変わりの話なので、最後は「リスタート」が描かれるのではないかと考えられる。どうかあたたかな結末となってほしい。

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