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グルメと昼ドラとサスペンスごちゃ混ぜで、死生観を描く/ドラマ『雪女と蟹を食う』

初回から、目をそらしたくなるシーンが登場して狼狽えた。

(以下、ドラマの内容を含みます。自殺願望のある男が主人公のため、読みたくない人は飛ばしてください。でも書き記したくなるほど、主人公役の重岡くんの演技に驚いています)


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重岡大毅さんが演じる主人公の北は、冤罪によって人生を狂わされた男。第1話では、部屋に紐をつって何度も自殺を試みるのだが、死にきれない。紐の輪を前にして、人生への絶望と死への恐怖に正気の沙汰ではない北。何度も躊躇する姿には、正直色々なことを考えてしまい、辛くて見ていられない。なのに引き込まれてしまった。咽び泣く彼が、今この状況に至るまでのことをどんな風に考えているのか、生と死を天秤にかける気持ちが現実味を帯びて伝わってくる、壮絶なシーンだ。

重岡くんと言えば、『これは経費で落ちません!』の山田がけっこう好きなんだけど、その後『知らなくていいコト』で演じた、主人公の豹変する彼氏のインパクトが大きすぎて、山田のイメージが吹っ飛んでいった。昨年の『#家族募集します』ではシングルファーザーを演じ、こっちでも泣きじゃくっていて、「彼の泣きの演技は、いい人とヤバい人の両極端すぎて、メーター振り切れてるなあ」と感じていた。

この夏『雪女と蟹を食う』を観て、またも「振り切れてる」感じに圧倒されている。なんなんだ、この人は。本来の彼が醸し出すものなのかわからないのだが、真っ直ぐな人の危うさ、これがあるのが魅力なんだろうと思う。

物語は「死ぬのは北海道の蟹を食べてからにしよう」と思い立った主人公が、偶然出会ったセレブ人妻の家に強盗に入ったことから動き出す。人妻・雪枝彩女を、GLAYERにはお馴染みの入山法子さんが演じている。透明感と浮世離れした入山さんの佇まいは、竹久夢二の描く美女を思い起こさせる。ドラマでは、雪女のように現実の世界には存在しない(たぶん)、体温を感じさせない女性として登場する。

この2人のシーンは、車を走らせているか、食べているか、抱き合っているかが多い。ちょっと不思議な、昼ドラロードムービー風(って、どんなや……)。昨年、同じ頃に放送されていた『うきわ-友達以上、不倫未満-』とは正反対の主人公たちだ。

そんなドラマなんだけど、回を重ねるたびに、死を選ぼうとしている北の中に「生」の部分がよみがえってくるのが切ない。同じく死を選ぼうとしている彩女との間に少しずつ溝ができてくる様子に、余計切なくなる。

昨夜第5話が放送され、物語は急展開。原作の漫画は読んでいないので、結末は分からない。この2人、どうなっちゃうのだろう。このまま死に向かっていくのだろうか。虚無感で光なんか全然入ってこない北の目に(←重岡くんの笑ってない目がね、怖いんですよ…笑。彼がジャニーズ所属であることを忘れますよ、ええ。)、いっぱいの光が入ってくる日は来るのか。それともそのまま沈んでしまうのか。最後まで見届けたいと思う。

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※主人公たちは蟹を求めて北海道に渡ったけど、わが家はイワシの蒲焼きで夏を乗り切ります(笑)。

イワシと大葉、白ごまの相性が最高です。


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