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記憶を失っても心が覚えている/ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』第10話

一過性健忘の症状が出はじめたミヤビは、記憶できる時間が短くなってきた。ど、どうなるの!?

(以下、ドラマの内容を含みます)

ノーマンズランドにメスを入れるリスクを承知でも、三瓶は諦めきれずに時間を惜しんでオペの練習をする。

「分かっています、分かっています」

星前に声をかけられて、そう答えた三瓶。彼の瞳には、焦りと不安と祈りが入り混じっていた。星前のやさしさが沁みる。彼の存在は大きい。観ている私にとっても救いだ。

事実を知った藤堂院長と津幡師長コンビの、哀しみを分けあうあんぱんにしんみり。この2人、本当にいいコンビだなあ。

どうすることがミヤビにとって一番幸せなのか。

病状が進行すると、彼女は大切な人のことも、向き合ってきた患者のことも、すべて思い出せなくなる。脳梗塞が完成してしまえば、命が危うい。

だが手術は0.5ミリ以下の細い血管にメスを入れ、わずか2分で終えなければならない難易度の高さ。2分って……。「世界中の医者のひと握りしかできないオペだ」と大迫教授は言い、改めて三瓶に手を出さないよう釘を刺す。

ここでミヤビが事故にあった当初から、大迫がオペの練習をし続けてきたことが判明。まだ何か隠していることがあるのかと思ったら……。ああ、教授(泣)。彼があらゆる角度から検証して、努力してきたことがうかがえる。三瓶だけじゃない。全専門レベルの知識を得たいと努力する星前だって、カテーテルの技術を持つ綾野だって、みんなミヤビを救いたいのだ。

「やっぱりあなた医者でしたね」
「やっぱり君は……、生意気だ」

対立する2人が互いを認めたこのシーン。井浦さんの「生意気だ」の台詞のため方に、なぜかうっとり。白なのか黒なのか。立場と理想。さまざまな葛藤を抱えた奥の深い大迫を演じた井浦さんは、さすがだった。

三瓶は、「光を見つけられない」と苦悩しながら生きてきた。でも今、光はあるじゃないの。考え方は違うけれど、今ならみんなで光を灯して影をなくせるんじゃないのか。それでも、ノーマンズランドにメスを入れることは不可能なのか(泣)。1年半ずっと練習してきた大迫教授は10分、アメリカで腕を磨いてきた三瓶が寝ずに練習しても8分以上かかる。2分には到底及ばない。

ミヤビは手術しない決断をする。手術を引き受けるであろう三瓶への思いからだ。自分の気持ちを綴った日記を、毎日読み込むミヤビにポロン(泣)。思い合うふたりが切ない。突きつけられた現実に、どうにか納得しようとする私がいる(ドラマだけど)。

いいですか、言っても!?

助けてください!

森山未來くんばりに、世界の中心で叫びたい。

第10話に登場した患者は、脳腫瘍を患う画家・柏木。病気の進行によって変わりゆく柏木を、加藤雅也さんが見事に演じ切った。高校時代から知る自分を忘れていく夫。それでも気丈にふるまう妻の姿は、胸に迫るものがあった。妻の芳美役は、2時間ドラマや刑事モノでよくお見かけする赤間麻里子さん。赤座美代子さんにちょっと雰囲気が似ているんだよなあ、赤間さん。今気づいたけど、字面も似ている……。最近では、朝ドラの花江ちゃんのお母さん役が記憶に新しい。

劇中、さりげなく挿入されたのが、Dr.成増の過去。「忘れられない人が、自分と一緒になって内側前頭前野にいる」という三瓶の話を聞いて、帰り道にガトーショコラを1つだけ買って帰る彼女にジーンとした。彼の好物だったんだろうな。彼が自分の中にいると聞いたから、1個なんだよね? 短いながら、いろいろ連想させるシーンだった。みんな現実の中で、悩みながら生きている。

意識が遠のき、食事もままならない柏木。だが芳美が介助すると食べてくれる。これまでの記憶を失っても、柏木の心が芳美を覚えている。出会った頃と同じことばをかけられた芳美が思わず柏木を抱きしめるシーンは、夫婦のこれまでの年月を感じて目頭が熱くなった。

「最後は何も残らないのか」と不安に駆られていたミヤビが、彼らの姿を通して「失われないものは、きっとある」と希望を見出す姿にも涙。泣いてばかりの第10話だった。

それなのに、うぉぉーーーん。

あいみょんの歌が歪んで遠のいていく演出は、公式サイトのトップ画像と同じ。ミヤビの中で起こっていることをこんな風に表現するのか。チクチクと、胸に刺さってつらい。

そのぶん、最終回の予告をリピートしまくっている。だって三瓶とミヤビ、一緒に暮らしてるっぽいよ!? 

ふたりはどんな選択をするのか。月曜日、はよ来い。でもやっぱり来てほしくない。はぁー、落ち着かない。永遠に放送してくれないかな。

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