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帰省ついでのひとり旅。

4月、5月と忙しく過ごしたため、少し長めに帰省することにした。この時期は梅雨に入る前だし、人の多いゴールデンウィークに動くよりもずっとゆっくりできる。

いつものルートで、いつものお昼というのも味気ないと思い、早めに出発して寄り道することにした。

目的は次の2つ。

1、「旧豊後森機関庫」で写真を撮る
2、「金太郎」でとり天を食べる

どちらも帰省ルートの途中、大分県玖珠町にある。

機関庫は昔から知っているが、国道から見るだけで実際に足を運んだことがなかった。「また今度でいいか」と言いながら、たぶん15年ぐらいスルーしてきた(ごめん 笑)。


あの人気映画の聖地なの? 旧豊後森機関庫

旧豊後森機関庫は、昭和9年(1934年)に建てられた蒸気機関車をしまう車両基地で、当時の技術を駆使してつくられた扇形の機関庫だ。鉄筋コンクリート造りの機関庫と、機関車を方向転換させるための回転台が残っており、国の登録有形文化財に指定されている。戦時中には軍事輸送で重要な役割を果たし、外壁には米軍機から受けた弾痕跡も残っている。周辺は公園になっていて、木陰にベンチもいくつか用意されている。

近代化産業遺産にも認定されている。
すっきりしない天気だったのが残念。

何が凄いって、九州ではもうここでしか見られない扇形の機関庫がそのままの姿で存在するのと同時に、朽ちていく美しさがあること。さらに、どこか違う世界線とつながっている空気が漂うこと。え、そう感じるのは私だけ?

外壁は蔓が縦横無尽にのびて、
時の流れを感じさせる。

割れたガラス、蔓が一面に絡まった外壁、放射線状の線路……。ここに立つと、往時をしのぶノスタルジックな雰囲気と、「ずいぶん先の未来や遠い遠い昔と行ったり来たりできる場所なのでは?」(地獄のオガワがやって来たら大歓迎)と、時空の歪みのようなただならぬ佇まいを感じるのである。

朽ちていく美しさを保つって、一番難しいのではないだろうか。この先どのように保存されていくのか、とても興味がある。

ところでこの機関庫、立ち寄る前にちょっとネットで検索したら、アニメ映画『すずめの戸締まり』に登場するシーンのモデルではないかと言われているらしい。昨年6月には、シーンに出てくる扉を地元の高校生たちが制作。この場所に1年間(予定)設置されるというニュース記事があった。

ん? ということは、私が立ち寄る際にはまだその扉があるってこと?

というわけで、こちら。

高校生たちの力作。
5月末にはまだ設置されていた。

あるね。
あったよ。

私は映画を観ていないので、聖地巡礼の感動を味わうことはできなかったが、ここに立つと、何かが起きそうな気がしてくる。

何十年も放置されていた機関庫は、地元の有志らによって保存委員会が発足した後、署名運動などを経て、平成24年(2012年)に国の登録有形文化財となった。歴史を物語るその姿に、いろいろな人がいろいろな思いを重ねている。

機関庫の前には、大正8年(1919年)に製造された蒸気機関車SL29612号が展示されている。

蒸気機関車SL29612号(キューロク)。

こちらは、公園内にある機関庫ミュージアム。

水戸岡鋭治氏デザインのミュージアム。入館料100円。

小さな小さな城下町でとり天を食べる

機関庫の撮影後にミュージアムへちょっと寄って、次は同じ玖珠町にある「金太郎」へ向かう。店があるのは、「日本一小さな城下町」といわれる森町だ。かつては森藩という小さな藩で、そのルーツは村上水軍なのだとか。日本のアンデルセンとして知られる久留島武彦は、ここで生まれた。彼は村上水軍の末裔、第9代森藩主・久留島通容の孫でもある。

昔の面影を残しながら、人々の暮らしが続く森町。

古民家を改装したお食事処「金太郎」は、趣のあるレンガ通りにひっそりとある。

築120年以上経つ古民家の趣きをそのままに。

とり天定食にするか、かぐや姫セットにするか悩みに悩み、とり天とだご汁が両方楽しめるかぐや姫セットをオーダー。ふわっふわのとり天と具だくさんのだご汁でお腹いっぱい。どちらも、柚子ごしょうを添えていただいた。

やわらかくふわっふわのとり天。米もおいしかった。
小麦粉ともち米粉の2種類のだんごが入っただんご汁。
かぐや姫セットは、アイスコーヒーorバニラアイス付きだった。

カボス県出身といえども、わが家は県北「唐揚げ王国」のため、とり天は食べない。実は高校を卒業後、県外で暮らし始めてとり天を知ったという……(笑)。とり天に唐揚げ、そりゃ鶏肉消費量が多い県なのも納得する。考えてみたら、水炊き、チキン南蛮、地鶏の炭火焼、唐揚げ、とり天など、九州には鶏肉を使ったソウルフード的なものがたくさんある。どの県も鶏肉の消費量は多いと思う。

2つの目的を果たして、満足。

本草学者・賀来飛霞の植物画を愛でる!

玖珠町から宇佐市院内を通過し、最後は県立歴史博物館に立ち寄った。6月9日(日)まで開催されている「博物館で美の探検 」に、賀来飛霞かくひかの植物画が数点展示されていることを知ったからだ。図譜集は持っているが、実物を見る機会がなかなかなく、これを逃したら次回いつ見られるかわからない。福田平八郎の没後50年ということもあり、写生に傾倒した画家(平八郎)の目で描かれた植物画と、医者・本草学者(飛霞)の植物画を比較する展示となっていて、大変興味深く観覧した。

同じ柿でも、葉脈や種まで緻密に描いた飛霞と、鮮やかな色彩でのびのびと描いた平八郎。それぞれの個性がとても分かりやすく出ていて、こうした展示はおもしろい。もっとも、私のような素人でも比較しやすいのは、2人が同じ植物を描いているから。全国を歩いて写生した賀来飛霞と、写生狂とも称された福田平八郎だからできることではないかと思った。

そういえば、大分県先哲叢書編さんについて、賀来飛霞篇の普及版の執筆者と挿絵担当者が会議で決まったと、先哲史料館のHPに資料が出ていた。ついに飛霞の普及版が制作されるのか。楽しみだな。

展示は撮影できなかったので、平常展示の中央にある国宝・富貴寺大堂の復元をパチリ。

私の子ども時代には教科書に出てきたけど、
今も出てくるのかな、富貴寺大堂……。

翌日は、昔からある喫茶店で「グラタンライス」を食べ、偶然知った麹屋さんへ足をのばして味噌玉を、そしていつも前を通って気になっていたスイーツ店でケーキを買って帰った。

ドリアじゃなくて、グラタンライス。
確かに中身はライス!白いごはん!

〆はもちろん、唐揚げである。

手ごね味噌を製造している渡邉こうじ屋のみそ玉、かわいい! 

墓参りではクロちゃんに会えず、少々残念。お盆には会えるだろうか。

少しのんびり、なんて言っておきながら食べてばっかり。しかも、これも実家で書いていて、結局のんびりなんてしていない。悲しい性よ(笑)。


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