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これまでのできごとが千年の物語へと繋がる/大河ドラマ『光る君へ』第31回

突然やってきた道長に、まひろが驚くシーンで終わったラストから2週間。待ち遠しかった!

(以下、ドラマの内容を含みます)

「もう一度思い出して、同じものを書けぬのか?」

道長よ、むごい。
それができたらどんなにいいか。トホホなのよ。
「“てにをは”ひとつ違ったら、もうなんか違うんだもん」と思うのは、私だけ?
君は原稿を書いて、保存する前にデータが吹っ飛んだこと無いでしょ!

というツッコミを入れながら観ていた。

道長の執筆依頼に応えるために、まひろはききょうが書いた枕草子を和泉式部から借りることに。もっとも、恋多き和泉式部は「枕草子には人肌のぬくもりがない」とバッサリ。これは、今まで劇中で描かれてきたウイカ様演じるききょうと、吉高さん演じるまひろの性格や考え方の対比にも近い。まひろには強い陰影がある。「人肌のぬくもり」とは、そういう部分を指しているのだと思う。弟の惟規に「姉上は根暗でうっとうしい」と言われたことからも、なんとなく想像できる。大事な人たちを失い、何者にもなれず、愛する人とは紆余曲折。真面目過ぎることもあって、ひとり葛藤してきた。そんなまひろを見てきたので、「その経験があれば書ける、書けるぞ」と、彼女の背中を押したくなった。

道長がまひろのために用意したのは、越前和紙。大量の高級紙を、ドドーーンと百舌彦に置かせたときの道長のドヤ顔といったらなかった(笑)。「どれだけでも使いな!  いくらでも用意できるぜ、俺なら」とでも言いたげだ。土御門の屋敷にも高松殿のところにも居場所のない道長だが、任務とはいえ白昼に好きな女に会いに行ける。そこには、娘の彰子を思う父親の顔も混在している。もう彼には、素直に頼れる人がいないのだ。

中宮・彰子にではなく、本当は帝に読んでもらうための物語だと知り、まひろの心に火がついた。帝の生い立ちから現在に至るまでを、道長から聞き取り調査。取材に丸一日かけた。濃厚な一日の終わりに、月を見上げながら口にしたのは友の名前。ふたりを強固に結びつける直秀の存在の大きさを、改めて知るシーンだ。

「誰かが今、俺が見ている月を一緒に見ていると願いながら、俺は月を見上げてきた」

当然、「誰か」とはまひろのことだろう。「この人は自分と同じ気持ちで月を見上げていたのか」という気づきと、道長との結びつきの深さに、まひろは少し戸惑っているように見えた。いつもひとりで眺めていた月を、彼も見上げていた。それを知って、悩む道長の役に立ちたい、また内側に閉じてしまった帝の心も救いたいと、より深く感じたのではないだろうか。

この流れで、そのまま道長が帰ることはあるまい。そう思っていたが、えーー、帰るの!?

今こそ渾身の「帰るのかよ!」を月から放ち、つっこんだに違いないよね、直秀は(涙)。逢瀬はなかったものの、道長がまひろを見つめる眼差しには、止むことのない愛が伝わってくる。この矢印を知ったときの倫子と明子が恐ろしい。

来る日も来る日も、帝のためにどんな物語を書こうかと構想を練るまひろ。創作の神様が舞い降りてきたときのシーンは、目がらんらんとするまひろと劇伴がマッチしていて、とても印象的。ああ、この音楽の勢い、雰囲気。そうだ、映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』に似ている! この回は、冒頭の劇伴に惹きつけられて物語に入り込んだけど、このシーンの音楽も好き。ついに、ついにまひろが『源氏物語』を書き始めた。

もう一つの見どころは、道長と賢子の対面。期せずして親子水入らずのほのぼのシーンとなったが、すべてを理解しているいとは複雑な表情を見せた。乙丸もなんとなく気づいているのか? 賢子の年齢を聞いても(そもそも宣孝が伝えてはいるけど)、道長は「俺の子?」とまでは考えなかったのだろうか。それとも飄々とした態度とは裏腹に、気づいているのか。彼の心がまったく読めなかった。ただ、帰るべき場所に居場所のない彼にとって、三郎に戻れるこの場所が、今は唯一の癒しの場となっているのは分かる。この回ほど長く、白昼にまひろと道長が時間を共にすることは今までなかった。

帝はまひろの書いた物語を読み始めたが、すぐにパタリと閉じてしまう。自分と定子のことが書かれていると察したからだろう。でも帝、これは……興味をそそられているとみた。

すでに清書したものは帝の元へ運ばれているのに、まひろは推敲の手を休めない。私たちが見てきた、好奇心を持ち、妥協のない彼女ならそうする。「物語は生きておりますゆえ」ということばは、納得の台詞。

水を得た魚のように、創作するまひろはキラキラしている。されど次回予告では、倫子探偵が爆弾発言をしており、ヒヤヒヤ。鈍感な道長は対応できるのか!? おそろしいよーーー。明子も倫子もこわい! でも、もとを辿れば道長自身の「やさしいけど冷たい」が原因なのよなあ。そしてどうやら晴明との別れが近づいている……。次回も見逃せないことがたくさん詰まっているようなので、45分があっという間に過ぎること間違いなし。

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