趣味で小説を書きます。スキマとスケブでコミッションも受け付けています。ちょっとだけニッ…

趣味で小説を書きます。スキマとスケブでコミッションも受け付けています。ちょっとだけニッチな嗜好が趣味です。

最近の記事

短編 怪物にされた令嬢

 カタリナは恋をしていた。  恋の相手はヨセフという名の青年で、青みがかった銀髪に紫水晶の瞳のとても美しい青年だった。  ふたりが出会ったのは一年前。  カタリナの父の領地の村の祭りの夜だった。   ヨセフは異国から来た旅人で、各地の風俗や名産を研究する学者のたまごなのだと語った。  領地の村から出たことのないカタリナにとって、異国の話をたくさんしてくれるヨセフはとても頼もしく、楽しく、瞬く間に恋に落ちた。 「カタリナ、僕のような一介の学者のたまご風情が、貴女のようなひ

    • 神託の巫女-聖都へ-

      「わ、わぁ〜〜〜聖都!!」  馬車から降りたエリシャが、賑やかな街の様子にはしゃいだ声をあげる。 「いいえ、巫女様。聖都まではまだ三日以上かかります。ここはティーノバの街。今日はここに宿を取り、明朝に出立します」  それをエリシャの世話係として同行するアデレードが穏やかに丁寧に訂正する。 「えぇ〜まだ!?……聖都って遠い……こんなに広くて賑やかな大きな街なのに、ここがまだ聖都じゃないなんて……」  エリシャは呆然としながら街並みを見渡す。  立派な城壁に囲まれて、綺

      • サキュバスと聖職者-10

        獣魔を無事倒して司祭様と別れてからほどなく、東の空が白んできて夜が明けた。 翼が消失する前に、私はハジノ村近くの街道の端になんとか降りたって人の姿へと再び転身した。 ここからハジノ村まで、ゆっくり歩いたらどのくらいだろうか。空を飛ぶと思った以上に速く進んでしまうから徒歩による距離感の把握が難しかった。 村の人たちの朝は早そうだし、朝一番でもそんなに迷惑にはならないかな?でも不審に思われるかもしれない?そんなことをつらつらと考えながらも私の足は村の方へと進んでいった。 太陽の

        • サキュバスと聖職者-9

          果てて気を失うように眠りに落ちた司祭様をちょっと狭いベッドに寝かせ、私は森の中を行く。 獣魔の魔力の気配を辿りながら。 体には力が漲っている。さっきは黒い障気のモヤの中に入っただけでも体が重く感じたけれど、これならきっと戦える。 森の中を進むごとに獣魔の気配は濃くなっていく。さっきまでの私なら、この濃厚な魔力の残滓程度にもあてられて気分も悪くなっていただろう。 少しだけ肌がピリピリした。 すえたような嫌な臭いが強く匂ってくる。 土がぐちゃりとぬかるんで、ボコリと沸き上がる気

        短編 怪物にされた令嬢

          サキュバスと聖職者-8

          私たちが獣魔から逃げて休んでいるこの小屋は、普段は森番や木こりが休憩に使っているものらしい。 薄くて硬そうなベッドと丸太の椅子とテーブル、簡素な石のかまど。室内にあるのはそれくらいだった。 傷は塞いだとはいえ怪我人の司祭様を固い床の上に寝かせておくのも忍びないのだけれど、ベッドもあまり快適とは言えそうにない。 背の高い司祭様には少し窮屈そうなサイズ感でもあった。 悩みに悩んだすえ、私はこのまま床で司祭様を好きにすることに決めた。 「せっかく司祭様からのお誘いだし、ホントは

          サキュバスと聖職者-8

          サキュバスと聖職者-7

          日が暮れて空の色が青から橙、赤、夜の群青へとグラデーションしていく。 私は部屋の窓から空を眺めて、ジリジリと身を焦がすような思いでいる。 せっかくの綺麗な夕焼け空も楽しめる心の余裕がなかった。 早く。早く夜が来て。 街を散策して司祭様と教会に戻ったとき、ハジノ村から早馬を……早カパルという方が実状には則しているけれど……飛ばしてきた男の人が、司祭様に村の窮状を伝えたのはもう数時間も前。 司祭様は手早く身支度して慌ただしくハジノ村へと向かってしまった。挨拶もしなかった。 た

          サキュバスと聖職者-7

          サキュバスと聖職者-6

          朝が来た。清々しい目覚めだった。 司祭様が紹介してくれた老婦人サーニャさん。彼女が貸してくれた部屋は、司祭様の私室と同じくらい簡素なものだった。 質素な一人用のベッド、クローゼット、小さな書き物机。それから小ぶりのドレッサー。クローゼットに入れるべき着替えも、身を飾る化粧品もなにひとつ持っていない私には、これでも十分過ぎる部屋ではあるのだけれど。 ドレッサーの前に座って、鏡に映る自分を見てみる。 薄い栗色の髪と同色の瞳。綺麗な色合いではあるけれどとても地味だ。目は垂れ気味で

          サキュバスと聖職者-6

          サキュバスと聖職者-5

          司祭様を抱えて空を飛んでいる間、私の心は満たされてとにかく幸せだった。 とうの司祭様は緊張してこわばり、ただでさえ恐い顔をさらにいかめしく引きつらせていたけれど。 大きな体をできるかぎりぎゅうっと縮こめて、必死に私のピッチリと体にフィットして掴めるゆとりもないはずの衣装に捕まり体を寄せてきていた。きっと無意識だっただろう。もし気付いたら慌てふためいて離れ、空の高いところから石畳の地面に叩き付けられてしまっていたに違いないと思う。 いっそいつまでもこのまま夜空の散歩を続けてい

          サキュバスと聖職者-5

          サキュバスと聖職者-4

          眩しい光が体を焼く、その痛みはたいしたことじゃなかった。 肌がしゅうしゅうと焼けて薄らと煙が出る。特に汚れたわけじゃなかったけれど、煤を払うようなつもりでパサッと髪を払った。 ひどく心が冷えている。もしかしたらそれはそのまま視線にも現れていたのかもしれない。 私は空に浮かんだままで、尖塔の屋根の上で相変わらずこちらに手のひらをかざしたままの司祭様を見下ろす。あからさまにたじろぐ様子は少しおかしかった。 「で?……約束もろくに守れない司祭様は、これからどうなさるおつもり?……

          サキュバスと聖職者-4

          サキュバスと聖職者-3

          お爺さんの荷馬車に同乗させてもらって、私は司祭様と共に街へと向かう。 「ヘルムート・クローヴェル、街の教会で司祭を勤めている」 司祭様はそう名乗ると、手を差し伸べて私を荷馬車の上にエスコートしてくれた。夜に見たいかめしく怖い顔でもなく、踏みにじられて追い詰められ歪んだ顔でもなく、紳士的で落ち着いた穏やかな顔だった。 ますます吸血鬼みたいだわ。と失礼な感想を抱いてしまう。 当の本人は荷馬車に乗り上がる時にまごついたり膝を打ったりして、どうも本当に鈍臭い方なのだと確信させられ

          サキュバスと聖職者-3

          サキュバスと聖職者-2

          バサ、と翼をはばたかせ初めて飛ぶ空は最高に楽しいものだった。 司祭の肩を踏み付けて逃げることに成功はしたものの、相変わらず自分のこともここのこともわからないままの私。 あてもなく羽ばたいているうちにすっかり飛ぶ楽しさの虜になってしまった。ただ考えてもわからないことを考えるのに飽きただけなのかもしれないけれど。 空から見下ろす街並みは、なんにも覚えてない私でも、なんだか物語の街並みのようだわ、と思うものだった。 赤っぽいレンガ造りの家々、石畳の道、ランプのようなものが吊り下

          サキュバスと聖職者-2

          サキュバスと聖職者-1

          ※もともとなろうムーンライトに連載し完結させたものを転載しています。 ※女攻め、軽いスパンキングや言葉責めなどの少し特殊な嗜好とプレイが主です。 ※ストーリーとしては純愛です ーーーー 「あれ、ここ、どこ……?」 意識はもやがかかったようにはっきりせず、私は所在なく立っていた。 街灯のない路地、綺麗な石畳の道。 ふるふると頭を振って、パチパチと瞬きを何度か繰り返した。 やっぱりなにもわからない。 「もしかしてこれって記憶喪失ってやつかしらん?」 胸に沸いた疑問を

          サキュバスと聖職者-1

          神託の巫女-Ⅳ-

             エリシャはとにかく走っていた。  いてもたってもいられず、焦る気持ちのそのままに。  あまりにも必死な形相で駆けていくエリシャの姿に、それを見た村人たちは、何事かと首を傾げ顔を見合わせる。 「どしたんだありゃ……」 「大蛇でも出たかな?」  呑気に笑い合う村人たちだったが、こりゃあレイクに知らせておくか、と誰ともなく言ってまた頷くのだった。 「ハンネ……!」 「え、エリシャ?どうしたの、こんな朝早くに……」  バンと扉を押し開けてハンネの家に飛び込んだエリシ

          神託の巫女-Ⅳ-

          神託の巫女-使者団Ⅲ-

          「どうなさいますか。神殿長は速やかに巫女をお連れせよとの仰せでしたが……」  夕食を終えて部屋に戻る前、使者団の神官がライセルに耳打ちで問う。 「ぅ、む……、そうだな、空気は良いし水も美味いが、そう何日もここに逗留するわけにもいかんしな。明日、ご両親には先に通告し、巫女様ご本人にも折りを見てお話しするのがいい、かなぁ」  使者団は皆若く、新たな巫女をお迎えするなど誰も経験していない。戸惑いは強いものだった。  新たな巫女への所感がどういったものか、ライセルは多少の興味

          神託の巫女-使者団Ⅲ-

          神託の巫女-使者団II-

           ライセルたち使者団が丁重に案内された宿は、よくいえば庶民的で牧歌的な風情だった。  扉を入ってすぐカウンターがあり、その右横に繋がる扉の向こうは大テーブルがふたつほど並んだ食堂。  カウンター左側には階段があって客室階へと続いている。  掃除は隅々までよく行き届いてはいたが、年月を感じさせる床や壁の風合いまでは消しきれてはいなかった。 「質素な宿ではございますが、代わりに食事には自信がありますよ。神官様方は、口にしてはならない食材などはおありでしょうか?」 「あぁ、いえ

          神託の巫女-使者団II-

          神託の巫女-使者団Ⅰ-

          「おぉ〜いエリシャ!聖都からなんとも物々しい御一団がおいでだぜ!なんだと思う?」  エリシャが川で冷やしていた野菜を運ぶその途中、村の方からレイクが息急き切ってやってきた。その顔は興奮で赤らんでいる。 「なに、レイク。私いま忙しいんだけど。もったいぶらずにさっさと言ってよ!」  頬を上気させニヤニヤ笑いを抑えきれずに話す青年の土に汚れた顔をエリシャがハンカチで拭く。  つれないそぶりで答えるエリシャだったが、その実彼女も好奇心を抑えきれてはいなかった。  エリシャの榛色

          神託の巫女-使者団Ⅰ-