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食べもの屋さんとソーシャル、スマフォの蜜月な関係とは?(2)

今回は「マーケティングが上手なお店とおいしいお店は違う(でも油断はできない)」という話です( 食べもの屋さんとソーシャル、スマフォの蜜月な関係とは?(1) では飲食店がサンフランシスコでソーシャルメディアとかスマフォを利用して、上手にプロモーションしてる例を紹介)。

先週、ロボットがハンバーガーを作ってくれる話題の $6 Robot Burger Restaurant "Creator" に行ってきました。サンフランシスコの人たちはこういう新しいものが大好きなので、もうお店は毎日大混雑。私は開店と同時の11:30に行ったので大丈夫でしたが、  食べ終わって出るときにはすでに下記の写真みたいな感じ。

上記のメニューでもわかるし、上記の"SF EATER" の見出しでもわかりますが、このお店のロボット以外のもう1つのウリは1個のバーガーが$6ってとこです。日本と比べるとちょっと高めですが、サンフランシスコだと安い方です。アメリカは総じて食べ物は日本より高いです。なので、みんな、話題にもなるし、いっちょ行ってやろうかという気持ちになっています。 

私は一番人気のメニューの "Creator VS. The World" っていうバーガーとレモネード、あとお店のタダ券でゲットしたフレンチフライという組み合わせ。これで$10ちょいなので、サンフランのランチとしてはちょい安。

上の写真を見るとわかるんですが、ここのハンバーガーは普通のと上下が逆です。下記の写真のように機械が横並びになったバンズを上下別々に仕上げていくっていう特殊事情と、野菜が上側だと刻んであるレタスをかぶせるのがハードル高いという事情によるものと思われます。味には特に影響はありません。

で、味はどうか?って話なんですが、おいしくないです。マック以上、バーガーキング以下。 "Five Guys"  を100とすると、"Super Duper Burgers" と "In-N-Out" が85、"Shack Shack" が80、ここが50くらいって感じです(感想には個人差がありますが、日本人なら割と同じくらいのスコアじゃないかな)。1. お肉がウェルダンでパサパサ、2. バーガーとフライがホカホカじゃない、3. チーズが溶けきってないが理由です。

しかし上記の理由、1 は中近東系、ラテンアメリカン系(サンフランシスコに沢山いる人たち)はそもそもウェルダン目が好き、2 は食べ物の温度にそんなに真剣なのは日本人と Anthony Boudain くらい、なので問題ないのかも。ただ 3 はチーズにはいつも真剣勝負なアメリカ人にはイマイチだろうなと思います。

しかしなんども書きますが、めっちゃ混んでます。みんな話題の店に行きたいのと、製造過程の写真撮りたいから(笑)めっちゃインスタグラマブルな店ですからね。 製造過程のムービーはこちら(音が出ます!)。

この店はとにかくメディア対応がうまいです。ちゃんとストーリーテリングして、沢山記事になってるし、取材の受け方もうまい。みんなもメディア対応がうまいだけでレピュテーションを保ってるクソみたいな会社やプロダクトを沢山知ってると思いますが、極端に言うと、そういうのに近い感じ。でも今はそういうのすごく大事だから!!今時、ストーリーテリング出来てないモノなんて誰も買わないし、「ハンバーガー」を売ってるんじゃなくて、「ロボットが作ってくれるハンバーガーを情報に敏感なクールな奴らと楽しむ体験」を売ってるというのをお店がすごく自覚してるんですよね。来るのか?! 記者の大量失業時代という記事でも書かれてましたが、まずくてもクラフトビアにはストーリーがあり、人をひきつけるのはそこです。なので、AIにとって変わられないためには、マーケターの資質も"Enhancing MARCOM strategy with story-telling" というのがこれからは必須の条件と思います。

また、デジタルマーケティングのチームもついてるんでしょうが、彼らのソーシャルメディアへのケアもバッチリです。インスタグラムにはおいしそうな写真がならび、Yelpの画面のよくマーケ界隈の人たちが言う above-the-fold (パッと見の範囲に見える画面)も、このお店が撮った美しい写真が全てのスペースを占めるように設定されています。レビューサイトなのに(笑) 

話はちょっとそれますが、私には仕事上のお父さんお母さんと呼べる人がいます。お母さんはすごいバランスが取れた性格の人で、私に仕事の仕方やら何やらを教えてくれた背の高い美人。で、お父さんですが、もうなんていうか会社に、ペットショップで勢いで買っちゃったオウムを連れてきたりする型破りな人で、でもビジネスに関してすこぶる勘がよく、彼がよく言っていたのは、「コンペのやつが偽物だと思っても油断するな、努力し続けてるうちに相手が本物になることがある、そのときに敵にまわすと面倒だ」というものでした。この言葉は真実で、油断したばかりにシェアを奪われる会社とかサービスを見るたびに、だよなーって思ってました。

で、私は今回このエントリーを書いてるときにも彼の言葉を思い出しました。この店について思ったのは、ハンバーガーの味も改善するだろうし、どんどんいい店になっていくかもねってことです。上の写真のように彼らのメニューはコピー用紙をパウチしただけのもの、ネット上のレビューをみると、ローンチした当初はお肉の焼き加減も選べたり、メニューの形状も違ってました。努力してます。急速に進化してます。もしこれからも今の彼らのスピードでランチタイムにハンバーガーを提供できて、$6で、しかもそれがおいしくなってたら(すでにマーケティングサイドやストーリーはバッチリだし)、ずっと人気のお店でいるだろうなと思います。新宿のクリスピークリームみたいにはならないでしょう、多分。日本は一度評判が悪くなったお店や、会社、人が信頼を回復するのはなかなか難しいですが、アメリカだとすぐにみんな忘れちゃうので、そういうのがいいところです。

ちなみにロボットバーガーを食べた私と友人ですが、Creatorのハンバーガーのお肉のパサパサぶりにストレスがたまり、夜の11時に Super Duper Burgers に行って (一日二回バーガー!)、超ジューシーなハンバーガーを食べ、大変満足したことをみなさんにお伝えしてこのエントリーを終了したいと思います。ではまた。

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