鏡獅子と平櫛田中
最近読んだ本に、『平櫛田中回顧談』という本がある。
私はなんでも鑑定団の大のファンであるので、毎週欠かさず観ているが(然し、観られないときもあるので、再放送はありがたい〜)、その中でよく平櫛田中が出てくるのである。
なのでこの本も購入し、読んだのだが、これは自伝的な回顧談で、平櫛田中の語りおろし的な内容である。なので、平櫛田中のヒストリーが丸わかりの本なのだ。
平櫛田中は有名な彫刻家で、私の平櫛田中の知識はう○こレベルなので、まぁ、この本を読んで少しは勉強しようというわけである。
平櫛田中といえば、『鏡獅子』であるが、まぁ、これもなんでも鑑定団で仕入れた知識なのだが、この制作ヒストリーもこの本の中でー章分設けられており、誰に依頼されたのかという話から、平櫛田中自身の気に入っていない点や改善点などが書かれていて、非常に楽しめる。
大富豪である浅見さんという方が予算3,000円(昭和10年、『春琴抄』が昭和8年だ)出してくれるというので作るのだが、然し、実際にはそれ以上にかかるのは間違いない、という見立てでどうしようかと言うと、その仲を取り持った方が、とりあえず3,000円で出来ると言って作り出してしまえば、後で追加予算はどうとでもなる、的なことを言って作り始めるのだが、その下りはなかなかに、うーん、山師的な、興行的な感じでええなぁ、と思えた。
『鏡獅子』は六代目尾上菊五郎をモデルとしており、出資者の浅野さんが六代目の大ファンだったから、このように仕事として頼んだとのことである。
平櫛田中は六代目の裸の姿でも木造を作り、そのフォルム、筋肉を堪能、いや違った、きちんと理解した上で完成品を掘り上げている。1時間ほどポーズを取ってもらい観察していると、太腿を押すように言われて、押して見るとまぁ硬くて、なるほど、ここが自慢なのだな、と思ったというエピソードなど面白い。
この『鏡獅子』の制作エピソードはなんでも鑑定団で語られており、本でも読んでにっこり。製作者の実の声を聞けて嬉しい限りである。
また、私のような素人には、木の特性や風土(湿度や気温など)が作るものにも大変な影響を及ぼすことなど思いもよらず、勉強になった。
岡倉天心の話が途中語られるのだが、作品が売れないことを岡倉に伝えると、「諸君は売れるものを作るから売れないので、売れないものを作れば必ず売れる」という名言が飛び出たという。
この言葉は非常に重要である。私は早速心のノートブックにメモを取った。
この本の刊行に当たって、お孫さんの平櫛弘子さんの言葉が冒頭に書かれているが、この本の原稿は、東郷青児の女性が描かれた自由が丘の洋菓子店の缶にずっと収まっていた、という言葉がとても印象に残っている。
なんというか、とても素敵にしまわれていた言葉たちなのだなと思う。
調べてみると、恐らくはモンブランという洋菓子店だと思われる。
私は甘党なので、モンブランは大好き。今年も美味しいモンブランを食べたいなぁ〜。
まぁ、平櫛田中に関しては、私の知識は塵芥ほどしかないが、然し、このように本で読むと、新しい世界が拓けるようで大変に楽しい。
やはり、読書は楽しい。
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