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グウェン・ステイシーがウルトラにかわいい映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』

『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』を観る。

今回、異様に宣伝が多かった印象である。前作は、映画館で観たときも人は少なかった。然し、傑作だった。
前作にはマルチバースが今ほど飽和状態ではなかったので、新鮮な目で観られたし、何よりもアニメーションとマルチバースの親和性、そしてそれを成立させているその技術演出に感服した。

で、今作は、もうマルチバースはどうでもいいので、その辺の話は置いておこうと思う。
と、いうのも、もはやマルチバースというこの別の可能性の並行世界的な感じのものも、こう何度も続けられるとただの隣町のようなものであり、それはもはや同じ世界ではないかという疑念が湧いてくる。マルチバースというのはある種の阿片のようなもので、一度手を出すと止められなくなり収拾がつかなくなる。
今作は、よくわからない、カノンイベントを阻止するとその世界の崩壊の可能性がある、という、展開が中心にあって、まぁ、スパイダーマンがスパイダーマンであることに悲劇は避けられない、なので、その体験をスルーしてしまうと、何故か世界が崩壊するのだが、何故スパイダーマンという存在がそうまで神格化というか、その世界において特異点になるのか、よくわからない。それならば、その世界にも70億の民がいるのであれば、彼等にもカノンイベントあるのではないか?超人主義が感じられて嫌な話である。

まぁ、それも何か理屈があるのかもしれないが、結局は焼き直しであり、つまらない焼き直しで、前作には及ばないのが正直な印象だが、一つ、グウェン・ステイシーがあまりにもキュートに描かれているため、その全てが帳消しになるほどであった。
彼女のアースでは、その背景が美しいアートのように色合いが常に変化する、優しい水彩の世界である。この美しい色合いの世界でのやりとりは最高だし、マイルスのアースで、二人でビュンビュン飛ぶシーンなどは楽しくみられるのだが、あとは最早どうでもいい。特にマイルス関連はどうでもよく、グウェンの物語、まぁ、今作はグウェンがほぼ主役であり、彼女の輝きは増し増しである。
女性のキャラクターだから優しく美しい世界、なのではなく、グウェンの世界だからあのように美しいのだと思えるほどに、その説得力があった。

後半のクライマックスシーン。親父との邂逅……。

そして、何よりも今作のアニメーションの凄まじさである。この、100億円を超える制作費のアニメーションには本当にたくさんのアニメーターが関わっていて、最先端技術の粋を見せつけられた思い。
けれども、やはりアニメーションの快楽がなかったように思える。あの、宮崎駿のアニメーションにある魔術的な快楽である。だからこそ、私は『君たちはどう生きるか』が今年ウルトラに楽しみな映画なのである。

然し、今作は実は前後編の前編なのである。え!嘘やん!まだこの話続くのかよ…もう勘弁してよ……というのが私の感想である。
何よりも、前後編というのを伏せての宣伝は、『DUNE』を思い出すではないか。
そう、『ロード・オブ・ザ・リング』も映画公開時は『旅の仲間』は出していなかった。いやー、続きもんだと思われると、売れなくなるからさ、ってやつであるが、まぁ、確かに重い腰が更に重くなりそうである。
そして、最近ついに『DUNE』パート2の予告編も公開されて、これも楽しみな1本である。なにせ、オースティン・バトラーのフェイド・ラウサ・ハルコンネンのビジュアルも登場し、最早これも1本、この秋最大の楽しみの一つであるが、1がそんなに面白くなかったので、不安でもある……。

オースティン・バトラーは目がキレイだ……。

まぁ、『スパイダーバース3』は来年春頃公開らしいので、そんなに待たされるものでもない。映像体験的には大変に素晴らしい作品でした。

暫定2023年ベスト(映画館で観たものに限る)

1位:ザ・フラッシュ…96点
2位:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー.Vol.3…93点
3位:フェイブルマンズ…83点
4位:AIR/エア…80点
5位:スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース…78点
6位:クリード/過去の逆襲…75点
7位:アラビアンナイト/三千年の願い…74点
8位:シン・仮面ライダー…62点


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