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フールナイトの6巻を読む

『フールナイト』の最新6巻を読む。


5巻の感想はnoteには書いていなかったので、併記する。

『フールナイト』はディストピアSFで、太陽光の届かない雲のために、酸素に乏しく、人間は人間を植物に変える技術で転花させて、それで生きる糧を得ている世界である。
転花1000万円というこの世界での大金を受け取れるが、それは緩慢な尊厳のない死刑への同意書に判子を捺すのと同義であり、4巻ではその対象にならざるを得ない貧者の境遇が描かれており、作中屈指のヘビーな巻である。

まぁ、あまり書くとネタバレになるので、あまり書かないが、物語のスケールが大きくなってくるのが5巻からであり、6巻はかつてないほどにゴア描写に気合が入ってくる。
転花院(この建物のデザインは何度見ても良い。良すぎる……。私が愛する『ブレードランナー2049』の匂いがする)と、転花反対派の衝突が次第に大きくなる情勢で、それぞれの立場の人間が、それぞれの守るべきもの、価値観の葛藤を突きつけられる話であるのだが、3巻では意思があり殺人しまくる転花人アイヴィー(このキャラが核心にいる)のゴアシーンもなかなか激しいのだが、今作は傭兵隊V転花反対派の張原とのバトルが凄まじい。まぁ、人体破壊につぐ人体破壊で、『HUNTERXHUNTER』が好きな人は好きだろう。

最近は、週刊少年ジャンプの『サカモトデイズ』などのように、バトルシーンの構成や演出、視線の誘導があまりにも巧い漫画家さんが多く、空間構成が映画のそれを切り取ったようで、美しさすら感じる。
武闘は舞踏であるから、一枚のイラストでは表現しきれない、コマ割りという武器がある種活動写真の原点を思わせ、漫画と映画の共通項を改めて見た思いである。
とにかく、嫌な話であり、救いのない話であるが、青春なシーンも無論登場する。どのようなディストピアであれども(例えば、今の世界もディストピアではないか?)、青春や喜怒哀楽はその時代その世界の人々は、人生の中に見出していくのである。

とにかく、6巻は話が核心に進み、そして、酷い死に方をする人がたくさんいる巻である。


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