Seiji Kato (仏光)

神奈川県大磯で仏像専門の骨董店を営んでいます。 もともと編集者として働いていたのですが…

Seiji Kato (仏光)

神奈川県大磯で仏像専門の骨董店を営んでいます。 もともと編集者として働いていたのですが、 改めて古典文学の魅力を広く知っていただければと考え 投稿をはじめました。 普段は地域の骨董市などにもお邪魔をしています。 「仏光」の名を見かけたらお声をかけてください。

最近の記事

【徒然草 現代語訳】第八十七段

神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文下部に酒飲まする事は、心すべきことなり。 宇治に住み侍りける男、京に具覚房とて、なまめきたる遁世の僧を、小舅なりければ、常に申しむつびけり。 或時、迎へに馬を遣したりければ、遥かなる程なり。口づきのをのこに、先づ一度せさせよとて、酒を出したれば、さしうけさしうけよよと飲みぬ。太刀うち佩きて、か

    • 源氏物語 現代語訳 須磨 その4

       方や入道宮も、東宮の御将来がございますから、お嘆きは通り一遍ではございません。前世よりの因縁と考えれば、浅いご縁などとは到底思えません。ここ何年もの間、口さがない世間を恐れられ、ほんの少しでも気のある素振りを見せてしまったら、どんな尾ひれをつけて云いふらされるであろうと、それだけを心に念じて想いを封じ込められ、あれほど熱烈に寄せられた求愛もすげなく受け流し、ことさら冷たくあしらってこられました、この度の事態を招いた情け容赦ない世間の風評を掻い潜られて何方の口の端にも上らなか

      • 源氏物語 現代語訳 須磨 その3

         月の出を待って山へと向かわれます。お供をほんの五、六人だけお連れになり、下人も馴れ親しんだ者のみで、御馬にての出発です。今更云うまでもありませんが、在りし日のお姿は見る影もありません、お供の者全員がなんとおいたわしいと胸打たれております。中にあの賀茂の祭の禊の日、臨時の随身に抜擢された右近の将監の蔵人がおり、得てしかるべき位からも洩れ、ついには官すら取り上げられて途方にくれておりましたので、お供の一人として加わっております。下鴨神社が遠く見渡されて、ふいにあの日の出来事がよ

        • 【徒然草 現代語訳】第八十六段

          神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文惟継中納言は、風月の才にとめる人なり。一生精進にして、読経うちして、寺法師の円伊僧正と同宿して侍りけるに、文保に三井寺焼かれし時、坊主にあひて、御坊をば寺法師とこそ申しつれど、寺はなければ、今よりは法師とこそ申さめといはれけり。いみじき秀句なりけり。 翻訳惟継中納言は、溢れんばかりの詩歌の才能

        【徒然草 現代語訳】第八十七段

          源氏物語 現代語訳 須磨 その2

          源氏の君とのお別れに娘を失った悲しみが加わり悲嘆一色となりました、お帰りになられた後も、見苦しいほど号泣し合っております。  自邸の二条院にお戻りになりますと、お側に仕える女房たちも、どうやら一睡も出来なかったようで、あちらこちらに群れ集い不条理な世の中を思ってただただおののいております。侍所には、常日頃より親しくお仕えしております者たちに限っては、お供する覚悟を決めておりますので、各々の私的な別れを惜しみに出掛けてしまったのでしょうか、人影もありません。さほど親密でもない

          源氏物語 現代語訳 須磨 その2

          【徒然草 現代語訳】第八十五段

          神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文人の心すなほならねば、偽りなきにしもあらず。されどもおのづから正直の人、などかなからむ。おのれすなほならねど、人の賢を見て羨むは尋常なり。いたりて愚かなる人は、たまたまた賢なる人を見て、これをにくむ。大きなる利を得むがために少しきの利をうけず、偽りかざりて名を立てむとすとそしる。おのれが心に違へ

          【徒然草 現代語訳】第八十五段

          源氏物語 現代語訳 須磨 その1

           世の中はままならぬもの、見下げ果てたことばかりが増えてゆきますから、なるたけ我関せずを貫こうとしても、今以上に屈辱的な目に遭うこともるまいと思われるようになりました。  あの須磨は、過去にこそ人の住まいがありましたけれど、今やすっかり鄙びてしまい、漁師の家ですらぽつぽつとしかないなどと聞き及ばれておりますが、やたらと人の行き交うようなざわついた家に住むというのも本意ではありませんでしょう、とは云うもののやはり都から遥かに離れてしまうのも、里心が募って考えものだし……、とあ

          源氏物語 現代語訳 須磨 その1

          源氏物語 現代語訳 花散里

           人知れず自ら望んで物思いに耽りますのは、いつものお約束ですけれど、昨今はすっかり右大臣一族が幅を利かせている世の中ですからそれでなくとも鬱陶しくて悩み事は尽きません、そぞろに心細く、この世全般が厭わしく思われますが、かと云って出家するにはいろいろと差し障りが多いのでした。  麗景殿の女御と呼ばれた方は、故桐壺院との間にお子様がいらっしゃらず、院がお亡くなりになられて後は、かつて以上にお気の毒な境涯となられ、今やこの大将源氏の君の御庇護だけを頼りに暮らしておられるようです。

          源氏物語 現代語訳 花散里

          【徒然草 現代語訳】第八十四段

          神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文法顕三蔵の、天竺に渡りて、故郷の扇を見ては悲しび、病に臥しては漢の食を願い給ひけることを聞きて、さばかりの人の、無下にこそ心よわき気色を、人の國にて見え給ひけれと人のいひしに、弘融僧都、優に情ありける三蔵かなといひたりしこそ、法師のやうにもあらず心にくく覚えしか。 翻訳法顕三蔵がインドに渡り、

          【徒然草 現代語訳】第八十四段

          源氏物語 現代語訳 賢木その9

           父君の右大臣もまったく預かり知らぬある日、突然の豪雨に見舞われ、雷が激しく轟いた夜明け前、右大臣家のご子息達、大后の近習などが大騒ぎしはじめました、そこかしこに人目がありますし、女房どもも怯えきって宮の近辺に寄り集まってしまい、いかんともしがたく、源氏の君は身動きが取れなくなったまま夜明けを迎えてしまいました。御帳台の周りはぎっしり人で埋まっていますから、源氏の君も気が気ではありません。お二人の仲を知る女房が二人ほどが困惑しております。  雷がおさまり、雨が少し小降りにな

          源氏物語 現代語訳 賢木その9

          【徒然草 現代語訳】第八十三段

          神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文竹林院入道左大臣殿、太政大臣にあがり給はむに何のとどこほりかおはせむなれども、めづらしげなし。一上にてやみなむとて、出家し給ひにけり。洞院左大臣殿、このことを甘心し給ひて、相国の望みおはせざりけり。 亢龍の悔ありとかやいふこと侍るなり。月満ちてはかけ、物盛りにしては衰ふ。萬のこと、さきのつまり

          【徒然草 現代語訳】第八十三段

          源氏物語 現代語訳 賢木その8

           司召があり、こちらの宮の人たちは賜るべき官位に就けず、慣例に鑑みましても、中宮の権利である年爵の面におきましても、当然あってしかるべき昇進すら果たされず、大勢が嘆いております。かくの如く出家され、ごく自然な流れで中宮の位から退かれても、すぐさま収入が途絶えてしまうなどということはまず考えられないのですが、落飾されたことを口実に処遇が変わってしまうことが多々あるのです。何もかもを捨て去ってしまわれた世の中とは云え、身内の宮人たちが所在なげに悲しんでおります姿をご覧になられます

          源氏物語 現代語訳 賢木その8

          源氏物語 現代語訳 賢木その7

           十二月十日過ぎには、中宮の御八講がございます。なんと尊いことでしょう。日々の供養のためのお経はもとより、玉の軸、羅の表紙、帙簀の飾りに至るまで、二つとないほどご立派に整えられます。お普段のちょっとした催しでも美意識高く設えられますから、当然のことと申せましょう。仏さまのお飾り、花机の覆い物までにも気を配られ、極楽浄土もかくやと思わせるばかりです。  初日は亡父先帝のための御供養を、翌日は母后のため、そしてその翌日が故桐壺院のための御供養となります。その日が法華経の第五巻を

          源氏物語 現代語訳 賢木その7

          【徒然草 現代語訳】第八十二段

          神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文うすものの表紙は、とく損ずるがわびしきと人のいひしに、頓阿が、羅は上下はづれ、螺鈿の軸は貝落ちて後こそいみじけれと申し侍りしこそ、心まさりて覚えしか。一部とある草子などの、同じやうにもあらぬを見にくしといへど、弘融僧都が、物を必ず一具にととのへむとするは、つたなきもののすることなり。不具なるこそ

          【徒然草 現代語訳】第八十二段

          源氏物語 現代語訳 賢木その6

           源氏の君が天台六十巻の書物を読まれ、疑問に思われたいくつかの箇所を説かさていらっしゃいますのを、この山寺に修行の甲斐あってありがたい光が射した、み仏が御面目を施されたと、下々の法師たちまでが歓喜に咽び合います。物静かに世の中を思いやられておられますと、ついつい山を降りてお帰りになるのが面倒になりますが、ただ一人のお人を想い続けるのも足枷となりますので、長居も出来かね、寺には丁重なお布施をなさいます。僧侶全員、上の者へも下の者へも、辺りの山賤に至るまでお品を賜り、尊い功徳の限

          源氏物語 現代語訳 賢木その6

          【徒然草 現代語訳】第八十一段

          神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文屏風、障子などの絵も文字も、かたくななる筆やうしてかきたるが見にくきよりも、宿のあるじのつたなく覚ゆるなり。 大方も持てる調度にても、心おとりせらるることはありぬべし。さのみよき物を持つべしとにもあらず。損ぜざらんためとて品なくみにくきさまにしなし、めづらしからむとて用なきことどもしそへ、わづら

          【徒然草 現代語訳】第八十一段