【徒然草 現代語訳】第百二十段
神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。
原文
唐の物は、薬の外は、なくとも事かくまじ。書どもは、この国に多くひろまりぬれば、書きても冩してむ。もろこし船のたやすからぬ道に、無用の物どものみ取り積みて、所せく渡しもてくる、いとおろかなり。
遠き物を宝とせず、とも又、得がたき貨を尊まず、とも、文にも侍るとかや。
翻訳
支那の輸入品は、薬以外、取り立ててなくとも困らない。書物の類いは、すっかり本朝に行き渡ってしまったから、必要とあらば書写すればいいだけのこと。それでなくとも苦難に満ちた海路をたどり、要りもしないものをわんさと積み込み、ぎゅうぎゅう詰めにして持ち帰るなんて、莫迦莫迦しいにも程がある。
遠来よりの物を無闇に重宝しない、めったに入手出来ないものをやたらとありがたがってはならない、とも書物に記されておるらしいですよ。
註釈
○唐
読みは「もろこし」。
○書
読みは「ふみ」。
○得がたき貨を尊まず
難得之貨、令人行妨。(老子)
メイドインチャイナへの幻想が完膚なきまでに廃れたのは、昭和の遺産じゃないでしょうか。
それを700年前に見抜いていた兼好は慧眼ですねぇ。
追記
とは云え、個人的には明の時代の家具は世界最高峰だと思っています。