見出し画像

【徒然草 現代語訳】第百十九段

神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。

原文

鎌倉の海に、かつをといふ魚は、彼のさかひにはさうなきものにて、この比頃もてなすものなり。それも、鎌倉の年よりの申し侍りしは、この魚、おのれら若かりし世までは、はかばかしき人の前へ出づこと侍らざりき。頭は下部もくはず、切りて捨て侍りしものなりと申しき。

かやうの物も、世の末になれば、上ざままでも入りたつわざにこそ侍れ。

翻訳

鎌倉の海にあがる鰹という魚、あちらでは比べるものとてないほどこのところずいぶんと持て囃されいる。とは云うものの、鎌倉の古老が申すには、この魚、私どもの若い時分には、それなりのご身分のお方の御膳に出すようなものではございませんでした、頭なんぞは下々の者すら口にせず、切って捨てていたもんでございます、ということだ。

こんなような物ですら、末世でしょうかねぇ、上流にまで入り込んでくるようになったんです。

註釈



青魚を決して口にしない父も、高知の鰹だけは食べていました(但したたきのみ)。

追記

マグロなんて、江戸時代は畑の肥やし、寿司の屋台でマグロ(醤油漬け)を喰ったなんて恥ずかしくて人に云えなかったそうです。殊に大トロは猫またぎなんぞと云われ、動物さえも食べようとしなかったらしいですよ。大トロを売りにする江戸前寿司屋を贔屓にして食通ぶってる人、けっこういますけどね。

この記事が参加している募集

#古典がすき

4,004件