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あたたかい毛布に包まれているような【毛布 - あなたをくるんでくれるもの】

少し前に安達茉莉子さんのエッセイ「毛布 - あなたをくるんでくれるもの」を読んだ。
安達さんの20代の葛藤や心の傷、孤独を綴ったエッセイ。
安達さんほどではないが、私もそれなりに傷ついてきた。
「心無いことを言われた」「真面目にやってるだけなのに嫌味を言われた」「舐められた対応をされた」「頑張ってるのに頑張りが足りないと言われた」嫌なことを思い出すと、怒りがこみ上げてくる。
肉体に攻撃を加えられたわけではないが、心は傷を負ってきた。
そんな心の傷にじんわりと心に沁みる安達さんの文章が心地いい。
本当は全部の章について感想を書いてきたいが、長くなるので、特に心に残ったところだけを書いてみる。

過去の癒えない傷を、許すか許さないか。
あの頃の記憶を思い出しただけで腹が立っていたことも、年々そこまで怒りを感じなくなっていることに気づく。
年齢的に落ち着いてきたこともあるが「まぁいっか」とあの頃の嫌な記憶に出てくる相手を許そうとしている自分がいる。
くどくどとあの頃の怒りを引きずってもなぁ…と思う自分も確かにいるが、完全に怒りを忘れると、嫌な目にあった自分が浮かばれないような気持ちにもなる。
本の中に書かれていたのは、怒りは過去の幻影をリピート再生しているのではないかという話。
自分の中で勝手に再生を続けて、ダメージを受け続けている。
安達さんの許すも許さないも気が済むまでやるのが良いという言葉で、別にそこまで怒りに囚われすぎる必要もないし、許したとしても怒りを許した自分を否定する必要はない。
自分の気持ちを優先して、許す許さないは自分で決めて、自分の選択を大事にする。
自分の尊厳を自分で尊重することが大切だと教えてもらった。

自分の中にある満たされないものを、誰かからの承認で埋めようとしていたのかもしれない。

毛布 あなたをくるんでくれるもの

他人の評価を気にして生きていて、自分軸で生きる感覚が分からない。
他人から「使えないやつ」と思われるのが怖い。
安達さんが「「使えないやつ」ではない側にいこうと必死だった」と書いてあって、思わず「私もー!!!分かるーー!!」と首を上下ブンブンさせながら頷いてしまった。
私も「使えないやつ」と思われるのが怖かった。
誰かわからないネットの強い人たちの声や当時所属していた会社の社長の声に震えていた。
「もっと上を目指せ」って上ってどこ??上ってなに??
そう思いながらも、言われ続けるので、よく分からない上を目指して努力はしていた。
「使えない」とレッテルを貼られたら、もう人として評価をしてもらえないと思い込んでた。
だから従わないといけない、そんな気持ちだった。
会社の社長のや上司なのか、ネットで見る世間の声なのか、よく分からない誰かからの評価からなのか、とにかく逃げたくて仕方なかった。
本来は他人の評価で自分の価値が決まるわけではないのに、何を怖がっていたのか自分でもよく分からない。
自信がなくて自分が立ってる地面がグラグラしているからこそ、誰かの評価に縋りたかったのだろう。

安達さんの留学先の友人からの「少なくともあなたには選択肢がある」という言葉にもグサッと刺さった。
仕事も住む場所もなんでも自分で決められることは、日本では普通かもしれないが、世界規模で見たら恵まれていていること。
自由なはずなのに、私は文句ばっかり。
なんでもできるからこそ、誰かに支配されるのではなく、自分の生きたい人生を考えないといけない。

今までの自分の心の葛藤や傷や怒りを全部言葉にしてくれた本だった。
びっくりするぐらい、ひとつひとつの言葉が刺さる。
「生きるのに疲れた」「人生ってなんだろう」「女であることがしんどい」そんなことを考えている人ほど読んで欲しいエッセイだ。

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