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初代仮面ライダーを全く知らない女(26)がシン・仮面ライダーを観てみたら

今日(3/18)から公開のシン・仮面ライダーを観てきました。

仮面ライダーが好きなの?
いやいや、世代の龍騎しか観てない。
それももう20年前近くだろうからほとんど覚えてない。
彼氏の影響?
いやいや、女一人で観に行きましたよ。

何故なら、庵野秀明が大好きだからね!

えーまず初めに、
デートには全く向かない映画です。
土日を楽しくお過ごしのファミリー層にも向かない映画でしょう。

想像以上にグロテスクだったり、
エロティシズムなシーンがあって、
さらには、ザ・「男のロマン」という内容になっており、
女性は楽しめないかもしれない。
実際、場内はほぼ満席だったけど、同年代の女性は一人も見当たらなかった。
おそらく旦那さんと来たらしき中年の女性がちらほら程度。

庵野特有のあの独特のアングルカット、いいですね〜
私が生まれ変わったら、あれの発案者を名乗りたいくらい好きな技法。

役者どアップのシーンから、突然魚眼レンズみたいな引きのシーンに切り替わるところ。
あれも庵野らしくて好きですねえ。
エヴァンゲリオンを彷彿とさせる。

シン・ゴジラ、シン・ウルトラマン、シン・仮面ライダーともにエヴァンゲリオンを思い出させるシーンやセリフがたくさんあったけど、
それはおそらくシンシリーズにエヴァっぽさを引っ張り出してきてるんじゃなくて、
そもそも庵野は特撮がめちゃくちゃ大好きで、
その愛がエヴァに反映されていて、
そして彼の原点である特撮でようやく本領発揮できたんじゃないかと、そういう逆輸入さを感じた。

原作を知らなくても十分楽しめたけど、
「え、これ原作のあいつじゃん!激アツ!」みたいなことはもちろん体験できなかったから、
初代リアルタイム世代のおじさま方が羨ましい。

他のシンシリーズと違うところは、
市民がほとんど出てこないところ。

あくまで仮面ライダーとオーグの話だから、
世界の人々は仮面ライダーにどんな思いを抱いているかはさっぱりわからなかった。

シンゴジラやシンウルトマランは割と、一般市民の生活が映ったりして、政府と国民とゴジラって構図がわかりやすかったから、
「世のため人のため」という、ヒーローの役目がはっきりしてたんだけど、
シン仮面ライダーにそれは感じなかった。

人々を守るためというよりは、自分の身近な存在(家族だったり友人だったり仲間だったり)を救うために戦ってた印象。
だからこそ、エゴイズムを感じて良かった。
人間らしさの根底みたいな。

あとこれは私の性癖なんだけど、
主人公の仮面ライダーが泣き虫の弱虫なのがとても素敵。
彼らはさ、スーパーマンじゃなくて、ヒーローだからさ。
感情に流されたりするんだよね、人間だもん。

改造されてる時点で「人間」じゃないって声もありそうだけど、手を加えられていようと、
人間だから、ヘルメットの闘争本能増強能力を頼るわけで…

ヘルメットの話で行くと、仮面ライダーってベルトの印象が強かったけど、今作はヘルメット?マスク?メインだった。
それは原作初代のリスペクトですか?
関係ないんですか?

私は、人の強さは優しさから来るものだと思っていて、人の優しさは弱さから来るものだと思ってる。
庵野作品はそれを強く感じるし、今作もそうだった。
だから、主人公(の心)が弱いところは、正義のヒーローたりえる所以で、いいなあって思った。

「お互いを理解したい」というテーマは、シンシリーズの全てに共通すると思う。
理解するために、個人の尊厳を失ってみんなで一つになるのか、
理解するために、共存を選ぶのか。

庵野のメッセージは一つ、
「あなたと私は違う存在だからこそ、そばにいたいと思える、理解したいと思える」
…そんなところだと私は勝手に解釈している。

そういう意味では、今作はいろんな愛情の形があった。
仮面ライダー1号と2号の友情はもはやある種の愛情レベルだったし(だってヘルメットを通じて一生共存するわけだから)、
ルリ子とハチオーグの友情もそう、「あなたを大切に思うからこそ私に負けて欲しい」と「あなたを大切に思うからこそ私の手で殺したい」の対比は愛情と思えた。
(百合が描きたいの?って思わせるほどだった)

庵野作品における愛情の醍醐味といえば、
母と息子、
父と娘、
だと思うんだけど、それもしっかり描かれてた。

庵野作品の人間は、
どんなに大人になっても、異性の親の愛情に固執する、
良くも悪くも。

それは血の繋がりとは関係なく、
「男性とは女性に母性を求める生き物」、
そういうことをひしひしと感じる。
庵野作品における女性の描き方には、いつもそういうところが根元にあると思う。
そしてその母親像や母性観はちょっとノスタルジックな、昭和感のあるものだったりして、
そこもまた魅力的だと思う。

実は私は昨年だか一昨年、都内で開催されていた『庵野秀明展』にも行ったんだけど、
そこでは、庵野秀明がいかに仮面ライダーが大好きかがのくわかる資料がたしかたくさんあって。
そこで見たような、庵野の思う「仮面ライダーらしさ」がたくさん詰まっていた気がする。

仮面ライダーが宙を舞う時の、空のちょっとレトロな色彩やざらざらした質感だったり、
そういうところ。

全体的に暗い雰囲気が続く印象の映画だったけど、
それは主人公が全然笑顔を見せないからだろうか。
というか作中で「笑顔」ってほとんど出てこなかった気がする。

戦い方も仮面ライダーらしくて、
スーパー武器を使ったり大勢で抗争するようなこともないから、
アクション自体で(良い意味で)派手さがないところも関係してるのかもしれない。

庵野作品ではお馴染みの、工場地帯とか線路とかそういうロケーションも、
どこか影を感じる要素の一つになってるのかもしれない。

シン・エヴァンゲリオンほど重苦しさもなく、
シン・ゴジラほど切迫感もなく、
シン・ウルトラマンほどさっぱりもしておらず、
じんわり悲壮感漂う雰囲気がたまらなかった。

つまり、ノスタルジックを感じる作品だった。

もう一度言いますが、女性はあまり楽しめないかもしれません。
「男のロマン」が詰まった一作だと思うから。
あと、もちろんだけど子供向けではないね笑

賛否両論分かれてるってネットで見かけたけど、
仮面ライダーファンからすると微妙ってことなのかな?
それとも、仮面ライダーファンじゃないと微妙ってことかな?

庵野秀明ファンの私は大満足です。

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