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*都知事選応援企画*「沖縄そば屋の息子に一票を」の裏側|Report

沖縄はいま県議選の真っ最中です(6/15現在)。
来月には都知事選があり、なんといっても米国の大統領選が11月に予定されています。終わった選挙も含めて、2024年は国際的に熱い熱い選挙の年=民主主義を謳歌する年ですね。

おっと、わたしの沖縄そば脳内データベースにも選挙絡みの記事がありましたよ。どれどれ

市政を市民の手へ

<前略>我が黨は公認候補として中里誠吉君(34才)を立候補させました。<中略>尚中里君は萬人ソバ屋の息子苦しい生活の中で鍛えられた青年で現在の那覇市民の苦しみを共に苦しみ得る人間であります。沖縄人民黨中央委員會

1949.11.11 うるま新報

沖縄人民党は、米国の施政権下の頃にあった左翼政党で、現在の日本共産党沖縄県委員会の前身だと言われています。革新にせよ保守にせよ、選挙に勝つためには有権者に共感してもらわなければならないわけで、「清く貧しい」という勝てる候補者像を刷り込むのに、そば屋の息子というのは格好のアイコンだったんですね。

ところで、そば屋経営はそんなに儲からないものだったんですかね?

うどん50箱盗まる

10日夜12時から翌朝7時迄の間に那覇市1区10組の商業新垣善秀さん(31)が倉庫から白うどん約50箱(時価1万6千5百円)が盗まれたと那覇書に届出た。
賊は倉庫の鍵を鉄棒の様なものでこじ開けて侵入しており、短時間で持出して自動車で運搬したあとがあり、集団窃盗犯の仕業とみられている。

1952.12.13 沖縄タイムス

当世風土記/ソバ食い人種 亀川正東 絵・山元恵一

<前略>琉球人とソバ・・・まるで親類みたいなもんだ。それにしても何というソバ屋の林立そして客衆の繁昌、試みにスボヤの食堂という食堂に入って見給へ。<中略>
映画の帰えりに一寸入ったソバ屋ののれん、よごれすすけた部屋に湯気がもうもうと立ちこめてプンと華をつく下町臭気、おばさん、もっと、きれいにしたら?と忠言したら返す反語にギョッとした。「ソバ屋の不潔は当り前です。きれいにでもしようもんならお客は入りません」<後略>

1953.02.16 沖縄タイムス

前者は直接的にはそば屋とは関係ないですが、盗難・窃盗が起きやすい時代で、その対象は食料品も例外ではなかったと読み取れます。もしそばの麺が盗まれたら、原価率にしわ寄せがくるでしょう。

後者はそば屋が汚いという記事で、経営者はそれを客の嗜好だと詭弁しますが、実態はきれいにする余裕がないといったところでしょうか。設備投資の資金も清掃をする時間もなく、貧しく忙しくオペレーションに追い立てられている情景が目に浮かびます。

そば屋で働いても稼げないという風評が定着しているからなのか、労働者の確保に悩む記事もみられます。

ソバ屋、求人に悲鳴 店員になりてがいない

那覇市内のソバ屋さんは店員不足に悲鳴をあげている。給料が安いうえに労働時間が長く、一日中立ち働いて疲れるからだというのが、ソバ屋さんを敬遠する理由という。そのうえ最近ふえた中華料理店にも客足を奪われたとあって、ハサミ打ちにあったと大ボヤキ。アルバイトを雇ったり、家族や縁故からの手伝いを頼んで切り抜けに苦肉の策をこらしているがサッパリ。食欲の秋を前に“ソバ屋戦線異常あり”を描いている。
そば屋さんの話では給仕の場合もっとも長く勤めて一カ月くらい。給料のよい店かまたは給料は安くてもハデで楽なバー、キャバレーなどに転職してしまうという。
那覇職業安定所の調べによると、ソバ屋さんから毎日求人はあるが就職する者がいないという。一日に2,3人も辞められたソバ屋さんなど大アワテで今すぐ世話してくれとかけ込むが、一月かかっても求人出来ない状態でまったくのお手あげ。<中略>
職安の話では「遊んでいてもいいから安◉◉の仕事はイヤだ。苦しくても一人前になるまで働いてのれんを分けてもらうという気質がなくなったのではないか」と若い人たちの仕事にたいする“新しい波”を語っている。

1961.08.18 琉球新報

身につまされますね。
わたしの会社も求人への応募が激減しています。これは少子化の影響によるところ大ですが、この記事の1961年もまだ初期のベビーブーマー世代でさえ十分な労働年齢に達していない頃なので、売り手市場の状況はいまと似ていたのかもしれません。

でも、その結果こうなります。

沖縄残コック物語 浜比嘉宗輔

これは残酷物語ではない。沖縄の味覚最低のまことに残念な調理法つまり残コック物語である。<中略>
冷蔵庫からよく冷えたそばを出して、丼に盛り肉、かまぼこを適当に乗せ、熱い出しじるをザブリと掛けてハイ一丁出来上がり。こんな店でそばを注文した人こそ災難。ハリ金のシンが入ったような固いソバが、どんぶり発ノド元経由、胃袋行きと、ソバで継つづってしまい目を白黒させる。
どの食堂でもソバは一番よく売れる。そのソバを冷蔵庫に入れるのは、よほどはやらない食堂か、またはソバを冷蔵すると風味が落ちると言うことさえ知らないコックがいると言う事である。第一いくら熱い出しじるでも冷いソバ、冷いどんぶりに入れたら、トタンにぬるま湯になってしまう。
知らないソバ屋では半ソバを注文し、うまければお代わりを注文する方が無難である。<後略>

1962.11.24 琉球新報

そうです。従業員の質、オペレーションの質が落ちるのです。
そしてこうなります。

那覇のソバ代上がる 材料の豚価上昇や求人難で

さいきん那覇市内の目ぼしいレストランが、ソバ代を値上げした。上がった額は5セントていど、15セントのソバが20セントになっている。外人相手のレストランでは、10セント上げたところもある。コのほかにカレーライスやトンカツの値上げもみられる。
直接の原因としては、材料に使う豚肉が、昨年末から値上がりしたことがあるが、一般的な“値上げムード”や、求人難をカバーするため、従業員の待遇改善にせまれていることなど、いろんな要素があるようだ。<後略>

1963.02.11 沖縄タイムス

明確に、給料アップして雇用確保するために販売価格を上げます、という理屈になっていますね。消費者は納得するしかないですよ。

令和の値上げも一面で同じ理由だとわかってはいるんですが、懐が苦しいなあ。いっちょう政権交代でもしてみませんか?

6月23日は慰霊の日


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