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第1章#11 負担を減らす行事の在り方~やめてしまわない選択

もくじRemake『ホワイトな学校へ』

(約3400字)

「先生方の負担を減らす」ことを考えたとき、行事の負担に思い至ると思う。
しかし、学習指導要領の「特別活動」に「学校行事」のねらいが示されており、学校ではこのような行事をするべし!ということが決められている。
やめてしまえばいいというものではない。

だから行事を見直す際には、子供たちの教育活動の質を落とさず、各行事のねらいを達成できるという大前提で、行事を精選する必要がある。
そして、同時に先生方の負担も軽減できたらさらによい

これから述べるのは、そのための、一案である。


文化的行事の負担を減らす

文化的行事とは、地域によって違いがあるが、私が勤めている地区では、学芸会、音楽会、展覧会のこと。
連合行事(※)と関連して、この三つの行事が3年サイクルで行われていた。
ところが、数年前、地区の教育委員会がこの三つの行事を含む連合行事全体を見直し(多くは廃止)したことで、文化的行事の3年縛りというサイクルがなくなった。
(※連合行事とは…近隣の学校同士が集まって、一緒に行事を行うこと。子供の活躍の場は増えるが、会場までの移動や係の先生の派遣などの負担も大きい。)

つまり、各校で考えて取り組んでよいことになったわけです。


学芸会のメリット・デメリット

学芸会は、私の地域では劇などを行うことが一般的。
華やかで、文化的行事の中では、保護者に一番の人気である。

子供たちにとっては、セリフを覚え、人前でしっかり声を出して演技をすることで、今日的に求められている表現力を身に付けられることが期待できる。
一つのものを皆で創り上げたという、終わった後の感動も大きい。

しかし、低学年、中学年はいいのだが、高学年は、それなりの内容でそれなりの仕上がりの劇を見せるとなると、実は相当時間がかかる。
3年に1度しか行っていないから、4・5・6年生ともに同じ経験値であるにもかかわらず、「6年生が一番すごいはず」という、親の期待感も強い。
各教科等の授業時数の確保のため、練習時間の確保が難しいこともあり、高学年で学芸会を行うことは、いろいろな意味で担任の負担が大きい
また、練習期間は体育館の割り当てが余裕なく埋まり、取り合いになる。

音楽会・展覧会のメリット・デメリット

音楽会は、学芸会の次に人気がある。しかし、音楽専科教員の負担がとても大きい
もちろん担任も協力はするが、音楽専科の実力が、出来栄えを大きく左右する。
そして、展覧会が一番人気がない。子供たちの作品は個性にあふれ、実のところ一人一人の力を最大限に引き出すことができるのが展覧会なのであるが、展覧会当日に子供の活動している姿が見られないことが、地味な印象を与えてしまうのだと思う。
展覧会の年に当たった6年生の親は、「はずれ」という感じをもつらしい。
こちらも、図工専科の負担が大きいことは、音楽会と同様である。

3サイクルのデメリット

この3サイクルのもっとも大きなデメリットは、子供たちの体験が平等でないことである。例えば、1・4年生で学芸会を行う学年と、3・6年生で行う学年では、内容も、身に付けられる力も、準備にかける時間も全く違う。同じ学校で、教育的効果に差がある計画でいいのだろうか?

担任、音楽専科、図工専科と3年サイクルで、負担がのしかかる
また、先生方にとっては、3年に一度しか行われないため、反省を次回の実施計画に生かすことが難しい
先生方は、だいたい6年以内で異動してしまうし、管理職は、さらに短いサイクルで異動してしまうことが多い。
次回行う時に、わかっている人が少なく苦労する、ということが繰り返される。

学習発表会のメリット・デメリット

この3年縛りがなくなったことを好都合と、すべてやめて、「学習発表会」に変えた学校も多い。
学習発表会であれば、会の運営そのものは毎年同じ実施計画で行えるので、全体的な運営の負担は減る。
しかし、学習発表会となると、今度は、毎年担任が中心となって内容を考え、指導しなくてはならず、各担任の負担が増えることになりかねない。

そこで、思いついたのが、「げいじゅつ祭」
(実は、私は学芸会が大好きで、学芸会をなくしたくなかったというのもこれを思いついたきっかけ( ̄ー ̄)ニヤリ。)


「げいじゅつ祭」とは!

学芸会、音楽会、展覧会を、毎年すべて行う。
1年生・5年生…展覧会
2年生・4年生…学芸会
3年生・6年生…音楽会

毎年、同じ学年で行えば、子供たちに平等に同じ体験をさせることができる
2年生と4年生の担任は、学芸会の指導をすることになるが、授業時数に比較的余裕があるので、ゆとりをもって取り組み、しっかり仕上げればよい。
学芸会を行うのは2学年だけだから、体育館練習もゆとりをもって行える
そして、専科教員にとっても、2学年分だけの準備で済み、ほぼ授業時間内で計画できるので、大幅に負担が減る
なにより、毎年同じ実施計画で行えるのだから、先生方の負担も大幅に減る

問題点か?

毎年同じ学年だと、ネタが尽きるのでは?
心配ご無用。数種類用意して繰り返せば大丈夫。
同じ演目だったとしても、子供は毎年変わるではないか。
保護者にしても、我が子の出番を見るのはその年だけである。
それに先生方は、異動で少しずつ入れ替わるので、毎年新しい風が入ることが期待できる。

もう一つ、場所の問題があった。
展覧会の展示スペースについては、時期をずらして体育館で実施するか、他のスペースを使うことになる。
書き初め展などと同時に行うのであれば、時期をずらすのもよいと思うが、「げいじゅつ祭」と銘打っているのだから、同時に行いたい。

そこで、廊下などのスペースを活用することをお勧めする。

私が勤務していた学校には、幸いなことに広い玄関があり、その上の2階、3階と同様の広いスペースがあった。
合わせて特別教室棟の廊下を使えば十分な展示スペースになる。
そこを活用して、三つのイベントを同時開催することにした。

それぞれの学校にあるそのようなスペースを生かせば、十分同時開催できる

忘れてはいけない、予告(根回し)

これを思いついた時、先生方には例の順番で話をした。
まず教頭。
そして主幹教諭に話したところで、教務担当主幹Y先生が素案を作ってくれた。そのお陰で、先生方はすんなり理解してくれた。

次に、保護者等への説明。
ここも、順番が大事。

まず、PTA役員会と学校評議員会で予告した。
私の説明に、皆さん半信半疑だったようだが、一応納得はしてもらえた。
そして、年度初めの全体保護者会で説明した。

最初の年は移行期間として、この計画で6年生までに2回学芸会を行えない学年は学芸会を行ってリセットする予定だった…ところが、あの忌まわしき感染症の流行で移行期間対応はできなくなった。
でも、何もできなかったのは皆一緒なので、予定通り2年後から「げいじゅつ祭」を実施した。

前例のないことを企画するのだから、文化的行事の長(=教務担当主幹Y先生)は大変だったと思うが、よくやってくれた!


ここで、気になるのが保護者の反応 果たして…

大好評!

本来であれば、展覧会の年であったことも功を奏した。
特に6年生の保護者が、音楽会が見られたことをとても喜んでいた。
学校評議員も絶賛だった。
「こんなにいいこと、どうして今まで気づかなかったのか!」とまで言っていただいた。

子供たちにとっては、自分が翌年取り組むことへのイメージをもつことも容易になった

斯くして、毎年、同じ実施計画で先生方の負担を減らし子供たちには同質の体験をさせることができる「げいじゅつ祭」が定着することになった。


私の「学芸会をやりたい」というこだわりから、子供たち、先生方、保護者、いずれにとってもWin Winのいい計画ができました。
手前味噌ですみません💦
(すべてY先生のおかげです!ありがとう(*´▽`*)

後日談

そのY先生の話によると、「げいじゅつ祭」について、他校からの問い合わせが増えているという。

私は、「げいじゅつ祭」を始めるに当たり地区の校長会などでも説明してきたのだが、校長先生方にイメージがわかなかったらしく、あまり積極的ではない方が多かった。
しかし、ここに来て、噂を聞きつけて問い合わせがあるという。

噂の元は、保護者であろう。
学芸会は、保護者に最も人気が高い。
「うちの子の学校では、劇が見られるよ。」
という噂はすぐに広まる。

「げいじゅつ祭」は、おススメです。

次回は、「#12 さらに会議を減らす~年度末反省の負担を減らす」です=^_^=


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