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【ショートストーリー】決められたイラスト+BGMに、2人の作家がそれぞれ異なる物語を書く!? 1⃣

現在YouTube〈ぶれるめんチャンネル〉で配信中の
【イラストに物語つけてみた! 第二弾】の前身となる企画【イラストに物語つけてみた!】(第一弾)

用意されたのは数枚のイラストとBGMで作成した3種類のジャンルの動画
Ⅰ.ファンタジー
Ⅱ.ホラー
Ⅲ.どうとでも

それぞれのジャンルに〈ぶれるめん〉のメンバーが各2人ずつ物語をつける、という企画です。

企画の詳細はこちらの動画を参照してください。


今回は『どうとでも』解釈自由な動画に、
【サワディ】
【ヒツジ合唱隊員】

の2名が物語をつけた作品。


使用されているイラストとBGMは同じですが、
書き手によってまったく異なるお話になるのが面白い!!

ぜひ二つの作品を見比べてください。

それでは、まずは一作目
【サワディ】による「夏恋ガチャ」

夏恋ガチャ


春・夏・秋・冬から好きな季節を選んでいただき、
「ガチャポン」のレバーを引いてください。


ああそう、こういう設定ね。
夏と言えば、やっぱ“海”、サイコーじゃん。

「ガチャポン」から出てきたカプセルを開けると、
部屋は浦島太郎みたいな煙に包まれて――
俺は、いまここにいる。

「海翔くん?」
浜辺美波似のビキニの女が近づいてきた。

――ガチャポンで「恋」が買える。

SNSで都市伝説的に流れている噂だった。
しかし、こんなハイスペックな彼女と恋ができるなんて、
夢にも思わなかった。

俺より2歳上の夏帆は、
「ビキニなんて、初めて着た」
と恥ずかしそうにしている。

――純情そうな“お嬢様”、
こういう設定も嫌いじゃない。

俺は、夏帆の白い手を取り、
海辺を散歩することにした。


日が暮れると、夏帆は俺をお祭りに誘った。
ビキニもいいけど、夏帆は浴衣の方が似合う。

「浴衣で好きな人と夏祭り……ずっと憧れてたの」

俺は、普段着で来てしまったことを後悔する。

「ミュージシャンぽくていいよ、その服似合ってる」

――あれ? 
俺が売れないバンドマンだって話したっけ……。

屋台で焼きそばとビールを買って、
花火を見ながら乾杯した。

「こういう夏デート、一度やってみたかったんだ」

ダイナミックな打ち上げ花火のフィナーレと同時に、
俺は夏帆にキスをした。

――驚いたな……
俺がこんなに簡単に恋に落ちるヤツ、だったとは。

夏帆と一緒に居ると、
時間があっという間に過ぎていく。


俺は、ランタンに願いを書いて飛ばした。

「来年の夏も、その先も、夏帆とずっと一緒に居られますように」

夏帆は、それを見て悲しそうにつぶやいた。

「その願いは、叶えられないかも……」

「お買い上げありがとうございます。
夏帆様、いかがでしたか?」

「海翔くん……イマイチだった……
キスもヘタだし」

「ご安心ください。一度引いたガチャは廃棄ですから」

「じゃあ、“夏恋ガチャ”もう1回やります!」

薄れゆく意識の中で、夏帆の声が聞こえた。

俺には、恋も、夏も、
二度と手に入らない。

『夏恋ガチャ』

おわり



続いて二作目
【ヒツジ合唱隊員】による「手紙~夏の海から」


手紙~夏の海から


今あなたは、どの季節をすごしていますか?

『手紙~夏の海から』


今、わたしは海にいます。
季節は、夏。
波は、不思議なほど静かです。

あの人といっしょにいます。
あなたの友だちだった人です。

わたしは、ここで
おだやかな毎日をすごしています。

黙って姿を消したこと、
ずっと謝りたいと思っていました。
本当にごめんなさい。


ふたりで思い出話ばかりしています。

笑って、泣いて、傷ついた日々。

それしか話すことがないのです。


わたし、本当は、その先の話をしたい。

めぐる季節ごとに、思い出を作っていきたいのです。
だけど……。

あの人と車で飛び出したのは、夏でした。

早く早く、遠くへ遠くへ……
それだけを必死に考えて
海沿いの道を飛ばしました。


覚えているのは、そこまでです。
そこから、ずっと夏のまま──


わたしとあの人
きっと行方不明者ということに
なっているのでしょう?


もし、この手紙が届いたら
海の底を探してみてください。

わたしたちは、そこにいます。

おわり



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