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🍒チェリーパイの誘惑🍒

草原を渡る
甘い匂いは
マリーゴールドの髪飾りを揺らし
少女のワンピースの裾を
くすぐる

おはなの真ん中で
深呼吸する少女は

目を閉じると
かすかに遠くから
少女を呼ぶ声に
耳を澄ます

小高い丘の上に見える
教会へお祈りするのをうっかり忘れそうになったことを思い出し
慌てて教会にお祈りしに
行こうと
思ったけど

めんどくさいから
今日はお休みすることにした


少女は

どこまでも続く
お花畑を通り抜け

息を弾ませながら
甘い匂いのする
赤い屋根のコテージへと
向かう

白いテーブルの上に
ギンガムチェックのテーブルクロスを敷き
溢れそうになるくらい
薔薇の花びらをたくさん浮かべた
ティーカップに
お湯が注がれると
少女は一気に飲み干した

ふぅ…
小鳥のさえずりと午後の
ローズティ

頬杖をつく少女はバスケットの中から読みかけの詩集を取り出す
しおりを挟んだページを開くと
同時に
パラパラと
いたずらな風のせいで
読みかけの
ページが
わからなくなった

もぉ…
女の子は柔らかな午後の
日差しにうとうとしてきて
だんだん眠たくなっていた

お待ちかねのチェリーパイが焼き上がったわよ

甘い匂いをふんだんに
漂わせながら
少女が待つテーブルの上に
無造作に
ドスンとチェリーパイが
置かれた

わあ…とってもいい匂い
甘いチェリーの匂いがたまらないわ…

少女は待ちきれずに
チェリーパイを頬張った

カリカリ
カリカリ
あれ?
なんだか変だわ

カリカリ
カリカリ
なかなか噛めない
ちっとも
それに甘くないわ

カリカリ
カリカリ
ちっとも
美味しくないわ

女の子は
チェリーパイ
ペッ!と吐き出すと
食べかけの
チェリーパイの中から

ドロドロに蕩けた
目玉が2つ
ギョロリと
少女の事を
まるで
臭いものを
見るかのように
凝視すると


お祈りを怠けた罰だ
お前なんかチェリーパイになってしまえ!
そう叫ぶと


少女の目は
2つ共
ポトリとこぼれ落ちてしまった

少女の目はチェリーパイの

少女の目はチェリーパイの中

お祈りを忘れた
悪い子は
チェリーパイの
マクロの
宇宙に
スポイルされちゃった

チェリーパイの
誘惑に
墜ちた少女は
マクロの宇宙に
閉じ込められちゃった




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