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✝️少女たちの森⛪️

あたしがまだ少女だった頃のお話
幼なじみの女の子と2人で近くの森に
遊びに行ったの
昼間なのにちょっぴり薄暗くて怖かったんだけど
森の奥にはエメラルドグリーンに輝く
見たものすべてを魅了するらしい
紺碧の小さな湖があってそこには妖精さんが現れるってお話をママからよく聞いてたから
どうしても妖精さんが見たくてたまんなくなったんだけど
1人で森の奥に行くのが怖かったから幼なじみの女の子を誘ったの
あたしたちは薄暗い森の奥へと
ゆっくり…ゆっくり歩いて行ったの
カサカサと落ち葉を踏みつけるあたしたちの靴音が森の中にこだましたり
時々ヒステリックに鳴き出す鳥さんたちにびっくりしてドキドキしたけど
妖精さんを見たいって気持ちの方が大きくなっててそんなの気にならなくなってた
どんどん進んで行くと樹木の間から差し込む木漏れ日が明らかに少なくなって行ってて不安になる気持ちはあったんだけど妖精さんを見たい気持ちには敵わなかったの
あたしたちは迷子にならないようにお互いの手をしっかりと繋いでたの
見たこともない大きな茸とか
木苺とか鮮やかな色をした揚羽蝶とか
まるでお伽話の国に来たみたいな森の景色に息の飲みながらも
どんどん進んで行くと
深緑色の木々の間からキラキラ光るエメラルドグリーンの湖が見えて来たの
あたしたちはあまりの美しさに
言葉を失ったまま立ちすくんでしまったの
そしてそのエメラルドグリーンの湖には一角獣の神話に出てくるみたいなペガサスが水浴びをしていたわ
木々の間からそっと気づかれないように見ていたんだけど
突然目の前が真っ暗になって…
どこからか知らない男の子の声がしたの
君はもう帰っていいよ…
誰?…
あたしはそのまま気を失って
その後の記憶が全部なくなってたの
それからどのくらい時間が過ぎてたかも知らないけど
目を開けると病院のベットで
寝かされていたの
パパとママが駆け寄るとあたしのことを代わる代わる強く抱きしめると
無事で良かった…
本当に良かった…って叫びながら泣き崩れたの
あたしはこの現実をどう理解して良いのかわからないまま15ヶ月の月日が過ぎて行ってた
おぞましい真実を知ることになったのはそれからすぐのことだった
あたしの幼なじみの女の子はどうなったの?
ママに聞くと
あなたは何も知らなくていいの…
そう言って目を反らしてしまう
それ以上何も答えてはくれなかったわ
それからなんとなく
あのこの子ことを聞いたらいけないみたいな雰囲気だったの
だからあたしは何にも聞かなくなった

でもなんとなく
噂みたいなのは耳に入るから
知ってしまったの
幼なじみの女の子は行方不明のまま見つからなくなってるとこを…
そしてもうひとつ
あの森は13歳の女の子だけが忽然と消えてしまうっていう不思議な出来事が続いていて女の子たちはみんな今でも見つからないまんまいたずらに時間だけが過ぎてってしまってるってことを…
じゃあなぜ?あたしだけ
戻って来れたの……
そう思った瞬間
目の前が真っ暗になった

知りたい?
えっ…
この声はあの時聞いたのと同じ男の子の声だ……
思い出したわ…
あたしはあの時目隠しされてて
耳元で
君はこのままここにいたいの?
それとも
お家に帰りたいの?
って聞かれて
お家に帰りたいって答えたんだ
そしたらじゃあ
君だけ帰してあげるって言われて
そこからのことはわかんない…
多分…
多分だけど
幼なじみの女の子は帰りたくないって言ったのかもしれない
目隠しされたままのあたしは少し空だをずらしながらほんのちょっとの隙間から男の子の姿を見たの
その男の子は瞳がエメラルドグリーンで宝石みたいに綺麗な金色の絹の柔らかそうな髪に陶器のような白い肌をした綺麗な男の子だったけど
首から下の方が図書室で見たことのある悪魔みたいな姿をしてて
ゾッとして唾を飲み込んだの
それからまた目の前が真っ暗になって気がついたら病院のベットで寝かされていた
あの男の子が一体何だったのかなんてことも
あたしには
わかんない
でも
あたしの幼なじみの女の子は
未だに見つからないまんまなの…


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