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2020年センター試験古文「小夜衣」を15分で解いた結果・・・【現役ライターの古典授業・番外編】

今年も!センター試験が無事に終わりました。
受験生の皆様、お疲れ様でした。

来年からはセンター試験ではない、ということにはなっています。
すったもんだあった記述試験は「一旦は見送り」という判断にはなりましたが、記述試験なんぞ早く断念していただきたいと切に願ってやみません。

だってですよ。国語記述なんてものは採点ブレと手間がめちゃめちゃ激しいってことは、現場の丸つけしてる国語科教員たちがよくよく知っています。
じゃあ「採点しやすい記述試験にしよう」なんて考えるならば、浅ーい浅ーいことしか尋ねることが出来なくなり、結局表現力や読解力を測る物差しにはならないと考えられます。表現力を測りたいなら、表現力を求める各大学が二次試験で課せばいいだけの話(つまりこれまで通りでよい)ということです。

・・・と、今年のセンターじゃなくて、いきなり来年以降の話に脱線してしまいましたが。

今年もやりました!「15分でセンター古文を解いてみる」のチャレンジ。

注:なぜ15分なのかは、単に時間がないからであります。
(詳しくは前年の記事をご覧ください)

では、いってみます。

■2020年(令和2年)1月実施 センター試験・国語「古文」を15分で解いてみる!

2020センター

まず、今回のセンター試験で出題されたのは『小夜衣』という中世の擬古物語でした。
(ちなみに擬古物語とは、鎌倉時代以降に書かれた「昔のみやびな平安時代っぽい物語」のことを言います。有名なのは『とりかへばや物語』『狭衣物語』あたり。2015年のセンターでは『夢の通ひ路物語』が出ていて、センター御用達ジャンルといっても過言ではありません。
なお、設定的には、めちゃめちゃ源氏物語オマージュが多いです。今回も、垣間見の場面に近いです。源氏物語スゴイ)

まぁ基本、『小夜衣』含め、出典については知らなくていいです。
随分前に『源氏物語』が出題された年がありましたが、そんな超有名な出典が出ることは稀の稀で、誰も知らなさそうな古典や場面を、センター出題者の先生方が毎度必死になって探して(超お疲れ様です)出題しているのですから、いちいち気にしていてもしょうがないです。

大事なのは導入文

●導入文(30秒):読みながら登場人物をマルなどで囲んでいく。

次の文章は寂しい山里に祖母の尼上と暮らす姫君の噂を耳にした宮は、そこに通う宰相という女房に、姫君との仲を取り持ってほしいと訴えていた。本文は、偶然その山里を通りかかった宮が、ある庵に目をとめた場面から始まる。これを読んで、後の問いに答えよ。

はい。この時点で私がやったことは、登場人物をマルやシカクやサンカクなど、自分で模様を決めて囲むことです。

そうすることで、途中カギ括弧で会話が出てきたときに「これは宮(マルの人)の言葉だ」「宰相(サンカクの人)の言葉だ」と、カギ括弧の右上なんかにスピーディーにマルサンカクシカクを入れることができ、ぱっと見で誰の言葉か分かる(見直しがしやすい)ようになります。

とりあえず、宮がマル。姫君がサンカク。宰相をシカクにしよう。
(この作業が後から効いてきます。いや効いてくるはず)

そして、本文。

「ここはいづくぞ」と、御供の人々に問ひ給へば・・・

いきなりカギ括弧から始まりますが、導入文の最後に「宮“が”目をとめた場面」とあるので、マルの人、宮のお言葉から始まっていると分かります。

●問1ア、イ(1分):知識(語彙)を知っていたらすぐ解ける。

そして早々に、傍線部アやイにたどり着きます。

全部読んでから解いてもいいんですけど、問1は語彙力と前後の文脈で解く問題なので、私はぶち当たったときにそのまま解いています。

ふむ。アは「ゆかし=見たい、知りたい、聞きたい」なので、この時点でほぼ3に決まり。
会いたい、という言葉に若干ひかれはしますが、文脈的に合わないのでパス。

イは「やをら」・・・ってこれ、現代語じゃないですか?^^;
まぁ・・・落ち着いてのぞくイメージなので、「静かに」が合っているだろう。2だね。

えらい短くて簡単やな・・・(逆に不安)。

●問3(2分):心情説明問題。「何に対して」は、前後(特に前)にあり!

つらつら読んでいくと、問2より先に、問3がきたので、先に問題文だけを見ます。
(選択肢は見ない。迷うから)

ふむふむ、「宮は何に対してうらやましく思っているのか」という問題なのね。
心情説明もまた前後に理由が書かれていることがほとんどなので、前後の文を頭の中で訳していく。

「この世にてもつれづれならず、後の世はいと頼もしきぞかし」とあるので、「現世も退屈しないし来世もバッチリ、ああうらやましい」ってことね(超意訳)。

じゃ、3だな。

●問2(2分):敬語問題で登場人物把握の威力を発揮!

問2はいつも、文法問題が出ます。今回は敬語のうち、「敬意の方向」と言われる問題。

これは基本、波線部の近くに動作主(誰が)や動作の受け手(誰に、誰を、など)を書き込むとわかりやすい。

・入れ奉る→謙譲語、「宮を」入れ申し上げる
・ものし給ふ→尊敬語、「宰相が」いらっしゃる
・わづらひ侍る→丁寧語、病気でいます(「宮と」の会話)
・聞こえ給へば→謙譲語、「老い人に」申し上げなさると

敬語の種類を瞬時に判断し(ここの判断を迷ったり間違えたりしたらそもそも解けない)、対象を書き込む。
1だな。

●問4(3分):心情説明。傍線部を訳してから問題を解く。

問4は、傍線部が「つてならでこそ申すべく侍るに」と傍線部が長いパターンなので、まずはしっかり傍線部を訳します。

直訳すると「“つて”ではなくて、申し上げるべきですのに」となる。

これは、さっきから「宮様が直接お見舞いに来られるなんて、ありがたやありがたや」という話をしているので「直接こちらからすべきだ」ということを言いたいはず。

となると、選択肢に合うのは5しかない。

●問1、ウ(1分):聞き慣れないものは、文脈でカバー。

先ほど解き残した問1ウにぶつかります。
「重なれるあはひ」・・・重なっている、淡い。
何が淡いって?これは文脈による問題だなぁ。

「艶も色も」「衣」「直衣」「染め」・・・とくれば、これは色の話だな。連想ゲーム的に判断。4番。

●問5(3分):心情説明はやっぱり文脈。

また心情説明か。これも前後を訳すに限ります。

ふむふむ・・・これは「宮と姫が並んだら」っていうのは、お内裏様お雛様みたいに、「結婚して二人が並んだら・・・キャー♡(意訳)」という想像をしてるわけね。

だったら、迷いどころなく2しかない。

●問6(3分):内容合致問題。“事実”としっかり照らし合わせる。

読み終わって、全体を通して合致するものを選ぶ問題が最後にくる。

これは、書かれてある事実への反論を言っていくに限る。
特に主語(登場人物)のすり替えに注意。これはマルサンカクシカクの書き込みがあると超便利。

1:「仏事にいそしむ女性=姫君」いやいや。これは宰相だ、ってことだったから話が進んだんだよね。
2:「宰相は兵衛督を読んで」いやいや、呼んだのは宮様でしょう。
3:「姫君についても懇願され」いや、懇願してない。
4:「宮は出家して暮らしたい」そもそも出家したら、姫君と結婚できないやん(話が成り立たない)。

てことで、答えは5。

●終了!ギリ15分ぐらい。採点結果。

よし。

今回も、なんとか15分で50点満点が取れました。
(よ、よ、良かった~~~!)

ただ、見直しもせずにかなりサクサク解けたので、今回は簡単だったんじゃないかな?というのが個人的な見解。

普段なら、選択肢の残り2択で迷うってこともあるんですが、今回はズバリと解けました。

2択で迷ったときは、その選択肢をよーくよーく見比べることにしているんですが、今回の古文に関してはそういうこともあまりなく。
(現代文の方ではやりました。暇があればそちらも更新したい・・・)

■【まとめ】2020年センター古文の個人的所感。

ということで、2020年センター古文のまとめ。

●個人的には素直~~で解きやすかった。
(和歌もないし、共感しにくい出家でもないし、設定的にも変なところはなかった)
●登場人物把握、大事!(問2,問6あたり)
●「心情説明」問題が多かったけど、基本的に前後の文脈が正しく訳せるなら、間違えにくい。
●問題は見るが、選択肢は見ないのがベター(迷うから)。

人によって感じ方は違うとは思いますが、私はこういった印象を受け、こういった感じで解きました。

■閑話休題。教え子も満点を取りました。

ところで、今日嬉しかったことは。

私の教え子が、自己採点の後で「先生!」とやってきて

先生、古文、満点とれました^^

と報告に来てくれました!(やった~~~~~!!!!!)

しかも

「解いているとき、問1で『“ゆかし”は見たい・知りたい・聞きたい!』っていう授業で先生が唱えてくださった声が降ってきて、あ、これはもらった(笑)と思いました」

幻聴でも活躍できるなんて!(笑)

いやほんとに、嬉しい限りです。

ほんとに本番って緊張するので、「授業通りだ」「学んだ通りだ」と思えることは何よりも安心につながります

練習は本番のように、本番は練習のように。

これまで学んできたこと、模試でくやしい思いをしたこと、それらの全てが本番につながるのです。

私があれこれ言っていたことが、本人の力になったのであれば、教師冥利に尽きます。


さあ、センターは終わっても、二次試験はまだまだこれから!という高校生も多いことと思います。

今からでも間に合う!
今からでも、やれる!

受験生、頑張って!

(追記:2021年版はこちら)


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