メンヘラホイホイ-45 正夢

彼女との結婚を視野に入れた食事で、彼女の母親が運転する車に乗った俺達。

開けた道で車内の空気が張り詰める。

彼女の母親「何故車内でもスマートフォンを出してはいけないのか?その理由は右を見てみて。」

そこには拳銃を持った兵士が等間隔に配備されていた。

彼女の母親「ココはね、韓国と北朝鮮の国境なの。本来は一つの国だったけど、何故、韓国と北朝鮮は分断されたか分かる?あなた達、日本人が原因でそうなったのよ」

彼女の翻訳でそう言っていた。

俺は何も言えなかった。

理由は分断が仮に日本人だとして、俺自身は一切加担していない。

話しは続く。

彼女の母親「独島(竹島)はどっちのものだと思う?」

俺は面倒臭くなった。

俺「どちらでも構わない。世界の全てが人間の物ではない自然の物だから地球のものだと思う。つまり、あらゆる国は自分達人間が地球からの借り物なんだと思っている。」
そう言うと、彼女の母親は笑い始めた。

彼女の母親「あなたは面白い考え方をするわね!すごく気に入ったわ!」
そうして何故か高級菓子をトランクから取り出して娘をよろしくねとプレゼントしてくれた。

韓国に行ったのはそれが3回目だった。
毎回俺は韓国に行く時にお土産で高級菓子を持って行き、彼女に家族で食べてと渡していた。歴史や差別とか良くも悪くもあまり興味が無いんだ。
1人の人間として、俺は彼女を大切に想っていたから。ただその存在をこの世に作ってくれた彼女の両親にもお礼がしたかった。たったそれだけの事。

俺はホテルに着き、彼女も一緒に来た。
彼女の母親は結婚するまで肉体関係を結んではいけないよと彼女に釘を刺し、帰って行った。もう少し夜が更けたら彼女はタクシーで帰るそうだ。



ホテルで彼女は言った。
彼女「お母さんが認めてくれたから、次は私があなたの両親に挨拶しないとね。あと、あなたがどれだけ私を愛しているか証明して。」

俺「どうやって証明すればいいんだ?」

彼女「あなたが韓国にいる三日間で私を10回抱いて。」

俺「わかった。」

結局俺は8回しか無理だった。


翌日、彼女と一緒にメシを食った。
トンカツ屋があったからそこに決めた。

食事中に彼女は言った。

彼女「トンカツは韓国発祥なんだよ。」

俺「そうか。韓国は色々とすげーんだな。」

彼女は自慢げにしていたが、俺の言葉がダブルミーニングだなんで気付いちゃいなかった。

その夜に彼女とセックスをした。

が、



正直に言おう。

途中で俺はウンザリした。
セックスは飽きる。
四六時中、彼女は俺の股間を弄ってきた。
三日間で10回だなんて俺はした事が無い。

暇さえあれば一人で眠りたかった。
ホテルのゴミ箱はティッシュで埋もれて行く。

まるで仕事をしているかの様だった。

別に彼女と身体の相性が良いか?って言われると、悪くは無いが特別に良い訳でも無い。



帰りの飛行機を待つ間も彼女は股間を弄って来た。
彼女「あと2回しなきゃね。」

ウンザリだ。

とは言え、韓国の空港の女性用トイレで一回やったけど当分セックスをしたくなくなった。


帰りの飛行機で気絶する様にヨダレを垂らして寝た。

帰国してからもすぐに寝た。明日は仕事だ。


数日後に俺は発熱し、寝込んだ。





数ヶ月後に彼女は俺の両親に会いに来た。

両親は彼女を喜んで向かい入れ、イタリア料理と焼肉のどちらが良いかを聞かれた。迷っているので俺はイタリア料理で良いと答えた。

イタリア料理屋で彼女はシルクの生地を両親に渡していた。韓国では結婚する相手にそういった贈り物をするそうだ。


彼女は帰宅後に焼肉が良かったとか言っていたが、この子はずっと親からお金をもらって遊んだり買い物をしてきた人だから、感謝とかの感覚が欠落してんだなと今更ながら思った。




そこから数ヶ月後、韓国に婚姻届を提出する為にホテルと航空チケットを予約した。

いよいよ明日出発。

そんな時に彼女から電話が来た。

彼女「やっぱり来ないで。
私は結婚して両親と離れて日本に住むのは嫌だ。それにお母さんが日本人との結婚は許せないって怒り始めたの。ホテルと航空チケットは私が払う。私が全部悪いの。ごめんなさい。」

俺「そうか。わかった。幸せになりなよ。」

彼女「どうして嫌だと言わない?」

俺「一方的な感情で結婚はできないだろ?それに君はマンションとワーゲンのビートルを持った男がいいと言っていた。俺の給料も安いと言っていた。だからもっとお金持ちの方が良いよ。」

彼女「アイゴー(韓国語で、あー。とか、そんなぁー!とか、信じられない!とかそんな意味)」

俺「楽しかったよ。ありがとう。」

そう言って俺は電話を切った。



職場では新年会が一週間後に開催された。

参ったな。店長に彼女と結婚が決まったって言っちまったせいで、みんなに「おめでとう!」って言われまくった。

別れたってイチイチ話すのがすげー面倒くせーなと思った。



と、同時に、
やっぱ俺の夢って当たるんだなと思った。



そしてこのジェットコースターみたいな人生はまだ続く。

次回は

生死の境目。

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