弥生

歴史、なかでも室町時代や鎌倉府に興味があります。 読書や美術館めぐりが好き。

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歴史、なかでも室町時代や鎌倉府に興味があります。 読書や美術館めぐりが好き。

最近の記事

読書日記『刀伊の入寇』(関幸彦、中公新書)

サブタイトルが「平安時代、最大の対外危機」。 ちょうど藤原道長の時代です。 対馬・壱岐、北九州沿岸が、海賊化した女真族(刀伊)によって襲撃された……という事件。 刀伊の入寇そのものの経過はもちろん、武家政権以前の当時の軍制がどうであったのか、中世への移行も視野に含めて記述。 「新書だしそんなに分厚くないからすぐ読めるかな?」と思ったけど、読み応えありました~。 『王朝貴族と外交』を読んだときも思ったんだけど、この時代の貴族たちの持つ近隣国への複雑な感情は、色々と示唆に富むなあ

    • 読書日記『吉野朝残党伝』(天野純希)

      室町幕府6代将軍義教の時代。馬借の下人であった少年・多聞は南朝再興を目指す勢力に加わることに…。 という感じで始まる歴史小説。 メインは南朝勢力・近畿の情勢ですが、鎌倉府も出てくるようなので読んでみた。 はい、面白かったです。 正直なところ、鎌倉府好きとしては足利持氏をもう少しじっくり描いてほしかったなと思うんだけど、メインは東国じゃないからしょうがないか。 戦乱がもたらす悲惨さや、そこに生きる人々の思惑を描きつつ、肉親からもたらされた呪縛から逃れようとする生きざまは、

      • 読書日記『王朝貴族と外交 国際社会の中の平安日本』(渡邊誠、吉川弘文館)

        室町時代好きの私ですが、最近は平安時代の本を読むことが多くなった。やはり大河のせいかな。 王朝貴族と外交と言われても全くイメージがわかなかったのですが、当時の人々の周辺地域への考え方や国際情勢がどう影響を及ぼしたのか等々……知らないことばかり。 遣唐使が派遣されなくなってからは交流なくなったのかな、と単純に思い込んでたよ(°∇°;) 記述のメインは平安時代ですが、最後に元寇についても触れられているので、中世史好きな方にもお勧め。

        • 読書日記『安倍晴明 陰陽の達者なり』(斎藤英喜、ミネルヴァ書房)

          ミネルヴァ日本評伝選の一冊。 数年前の舞台「狐晴明九尾狩」をきっかけに晴明や陰陽道の本を少しは読んだんだけど、これは未読。 「光る君へ」の晴明がなかなかいい味だしてるので、よし、読んでみるかと手に取ってみましたよ。 単純に晴明の事績を列挙というよりも、陰陽道そのものの起源など、幅広く広がる記述にワクワク。占星術からプトレマイオス、現代にも伝わる「いざなぎ流」……。 一般的な伝記とはちょっと雰囲気の違う一冊ですが、とても面白く読み進めました。 星を観る人(スターゲイザー)・

        読書日記『刀伊の入寇』(関幸彦、中公新書)

        • 読書日記『吉野朝残党伝』(天野純希)

        • 読書日記『王朝貴族と外交 国際社会の中の平安日本』(渡邊誠、吉川弘文館)

        • 読書日記『安倍晴明 陰陽の達者なり』(斎藤英喜、ミネルヴァ書房)

          読書日記『桃井直常とその一族』(松山充宏、戎光祥出版)

          南北朝時代の桃井直常を中心に、桃井一族についてまとめた一冊。 あっちにも桃井、こっちにも桃井。 幸若舞の創始者も桃井とか、幕末の橋本左内も桃井家の子孫を称したとか、予想以上に桃井一族が広がってて驚き。 現代人からすると「モモノイ?」となる人がほとんどだろうけど、 室町時代あたりには「✨足利一門の桃井氏✨」は名門という感じだったんだろうな。 室町幕府奉公衆となった桃井氏もいて、将軍邸警備の様子が記述されてるところが印象に残った。奉公衆の日常をもっと知りたいなあ……。

          読書日記『桃井直常とその一族』(松山充宏、戎光祥出版)

          読書日記『北朝天皇研究の最前線』(遠藤珠紀・水野智之編、日本史史料研究会監修、山川出版社)

          同じ出版社の最前線シリーズ(なのか?)を読んだことがあるけど(『「室町殿」の時代 安定期室町幕府研究の最前線』『戦国期足利将軍研究の最前線』)、 いや~、この本もやっぱり良かった! 室町好きの弥生さん大満足(≧∀≦) 読みやすい構成で、一般書ではなかなか取り上げてくれないテーマについて最新研究がフォローできる。 南北朝時代の北朝天皇に絞った本って、かなり珍しいよねえ。 重たくて高価な専門書は正直ハードル高いけど、このシリーズは手に取りやすくって本当に有難い。 参考文献もきちん

          読書日記『北朝天皇研究の最前線』(遠藤珠紀・水野智之編、日本史史料研究会監修、山川出版社)

          読書日記『呪いの都 平安京 呪詛・呪術・陰陽師』(繁田信一、吉川弘文館)

          「2024年の大河は平安時代だし、何か読んでみるか」と、軽い気持ちで手に取った。 おどろおどろしいタイトルだけど、内容はいたって真面目。 「読みなおす日本史」シリーズの一冊で、読みやすかった。 平安時代の人々のメンタリティ、思考回路が少し理解できたかも。オープニングから引用されている呪詛事件の取り調べ記録、なかなか面白い。 印象に残ったのは、源氏物語でなぜ呪詛が出てこないのか、という箇所。 また、安倍晴明のライバルとして描かれることの多い蘆屋道満の実像についても触れられていて

          読書日記『呪いの都 平安京 呪詛・呪術・陰陽師』(繁田信一、吉川弘文館)

          読書日記『図説六角氏と観音寺城』(新谷和之、戎光祥出版)

          2024年、今年もよい本に出会えますように。 さてさて、年の初めはこの図説。 写真・地図など図版が多く、見開き1トピック、という構成で読みやすい。 「年末年始、時間つぶしに本をストックしとか」という軽い気持ちで手に取ったけど、面白くてすいすい読み進めました。 室町や戦国時代の歴史書を読むと、断片的に出てくる六角氏。その流れがおさえられて、六角氏入門編としてもちょうど良い本だと思う。 桑実寺縁起絵巻がカラーで掲載されていて、美術好きとしては嬉しいな。 個人的に印象に残ったとこ

          読書日記『図説六角氏と観音寺城』(新谷和之、戎光祥出版)

          読書日記『歌われなかった海賊へ』(逢坂冬馬、早川書房)

          「エーデルヴァイス海賊団?ナチスへの抵抗組織だよね?それを題材にした小説なんて、珍しいかも…」 と、 軽い気持ちで読み始め、 重厚な内容に胸を突かれた。 他人を勝手にくくって自分の都合でラベリングして、分かった気になってないだろうか。 居心地の悪い真実を知らなかったことにして、都合のいい嘘に騙されたふりをしてないだろうか。 単純に善悪・白黒付けられない人間の生き様と、今にも繋がる問い。 作中で歌われる歌が、いつまでも心の中に響いているような、そんな気分で最後のページを閉じま

          読書日記『歌われなかった海賊へ』(逢坂冬馬、早川書房)

          佐竹義人メインの本も出るといいなと思いつつ。読書日記『図説 常陸武士の戦いと信仰』(茨城県立歴史館編、戎光祥出版)

          茨城県立歴史館で2014年に開催された特別展(『常陸南北朝史-そして、動乱の中世へ-』)の展示図録が元になった本。常陸国をメインに据え、鎌倉時代末期から南北朝、室町時代の歴史を辿っています。 「図説」とあるだけに写真、図版が豊富で目で見ても楽しめるし、さすが歴史系博物館の企画展ベースなだけに内容も充実(常陸国に特化した南北朝室町の本って、あまりないよね)。 ある意味、展示図録と一般書籍のいいとこ取り(*^^*) 鎌倉府好き、室町好きの私としては大満足な一冊です。 博物館の展

          佐竹義人メインの本も出るといいなと思いつつ。読書日記『図説 常陸武士の戦いと信仰』(茨城県立歴史館編、戎光祥出版)

          読書日記:足利将軍と笙の関わりが面白い『天皇・将軍・地下楽人の室町音楽史』(三島暁子、思文閣出版)

          「笙」に着目した室町音楽史。 室町時代関連の本というと政治史や戦乱メインのものしか読んだことがなかったので新鮮! 「第三章 将軍家天神講と奏楽」「第四章 将軍が笙を学ぶということ」を特に興味深く読みました。 以下、印象に残ったところをまとめてみました。 気になる方は本書を。 室町時代に興味ある方であれば読んでおいて損はないと思います。 ・尊氏以来、歴代足利将軍で笙を学んだ人が多い(笙は将軍が学ぶべきもの、という認識が形成されていった)。 ・尊氏が笙を学んだ理由のひとつは

          読書日記:足利将軍と笙の関わりが面白い『天皇・将軍・地下楽人の室町音楽史』(三島暁子、思文閣出版)

          読書日記『足利将軍たちの戦国乱世』(山田康弘、中公新書)を読んで足利好きが増えるといいな

          『足利将軍たちの戦国乱世 応仁の乱後、七代の奮闘』(山田康弘、中公新書)を読み終わりました。 戦国時代を描いたドラマは多いけど、足利将軍がメインのものはあまりない気がします。 そんな、一般的にはあまり人気のなさそうな足利将軍について書いた本。 現代世界となぞらえるなど、歴史書を読んだことのない方でも大丈夫な読みやすさ。 そこで描かれるのは、波乱万丈な七人の足利将軍たち。貴種とはいえ、決して楽な人生ではなかった将軍たちの生涯。 室町幕府の仕組みなど彼らの生きた時代背景も記述さ

          読書日記『足利将軍たちの戦国乱世』(山田康弘、中公新書)を読んで足利好きが増えるといいな

          読書日記『天皇の音楽史 古代・中世の帝王学』(豊永聡美、吉川弘文館)

          古代から室町時代の後花園天皇まで、歴代天皇の音楽との関わりをまとめた本。面白かった! 帝王学の一環として音楽の嗜みが求められていた、前近代の天皇。 琴、琵琶、笙、箏、笛……。 天皇はどんな楽器を主に演奏するのか、時代によって変わっていったそう。 嫡流のみ演奏する楽器、大覚寺統と持明院統ではそれぞれ別の楽器、室町幕府との関わりから足利将軍も演奏していた笙を選択など、当時の家系意識や政治状況が反映されています。 ううむ、単に天皇個人の好みで楽器を選択したのではないんだね。 とこ

          読書日記『天皇の音楽史 古代・中世の帝王学』(豊永聡美、吉川弘文館)

          読書日記『乱世の天皇 観応の擾乱から応仁の乱まで』(秦野裕介、東京堂出版)

          飢饉で苦しむ民衆をよそに、御所を造営する足利義政。後花園天皇は、そんな彼を漢詩で諫める――― 歴史の本で何度か見かけたこの逸話。 真偽のほどはともかく、このエピソードの意味するものとは。 ややこしく皇位の移り変わる南北朝を経て、天皇の役割はどのように変化したのか。 後花園天皇をメインに、歴代天皇で辿る室町史。 室町時代好きとしては非常に興味深く、楽しく読み進めました。 後花園天皇の名前は知っていたけど、想像以上に主体的に政治に関わっていたんだね~。 実の父親との見解の相違

          読書日記『乱世の天皇 観応の擾乱から応仁の乱まで』(秦野裕介、東京堂出版)

          読書日記『平安京の下級官人』(倉本一宏、講談社現代新書)

          古記録に残る、平安時代の下級官人や庶民の姿にスポットライトをあてた一冊。 歴史書だとどうしても身分が高い人の記述が多くなってしまうので、なかなか新鮮な視点だな、と思いつつ読み進めました。例えて言うなら当時の新聞の社会面を読んでる気分。 印象に残ったのは、やはり疫病や災害のこと。 当時の人たちなりに対処していた様子がうかがえました……うん、でも、やっぱり科学や医療が発達した現代で良かったと思ってしまったよ。 今は台風が近づいてくることがあらかじめ分かるけど、当時はもちろん無理

          読書日記『平安京の下級官人』(倉本一宏、講談社現代新書)

          読書日記『室町・戦国時代の法の世界』(日本史史料研究会監修、松園潤一朗編、吉川弘文館)

          室町時代&戦国時代の法の入門書といったおもむき。 「この時代の法?幕府とか戦国大名が定めたものかな」という感じで読み始めたけど、それ以外にも公家法・村法・町法・寺社法と幅広い。こういうテーマで一般向けの本はおそらくないかと思うので、貴重な一冊。 一番印象に残ったのは、第Ⅱ部第二章の「身分と法」。 当時の身分制、ちょっと深めてみたいテーマだと思ったよ、うむうむ。 「中世身分制のありようをわかりやすく説明することはむずかしい」(本文より) 専門家の方がこう書くくらいだから、素人

          読書日記『室町・戦国時代の法の世界』(日本史史料研究会監修、松園潤一朗編、吉川弘文館)