アンコール 14 「一年」
いつの間にか、そんな生活が一年と少し経とうとしていた。
季節は冬に差し掛かり、半袖のワンピースの上に羽織るようにと、カーディガンやパーカー、ジャケットなんかを購入して、シロに渡すようになっていた。
その頃になると、僕は必ず彼女の演奏と歌声を聴きに行く、と言うこともなくなって、時々気が向いた時にだけ、あのバーを訪れるようになっていた。
シロは、はじめの方こそ、一緒に行こう、と僕に声をかけることもあったが、仕事で疲れていたり、酒を飲むような気分ではない日だってあるのだ、と説明をすると、しつこく誘うこともなくなり、大人しく一人で出掛けて行く。
そんな日々の中、変わったことが一つ。
眠っている間に、シロが僕の片頬に触れて来ることがあった。
たまに、だったそれが毎晩になり、僕はいつの間にか傲っていたのかもしれない。
彼女は、このままずっと自分の側にいるに違いない、と。
それをシロが望んでいるのだ、と。
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