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愛するということ

愛するということ
著 エーリッヒ・フロム
訳 鈴木 晶
出版 紀伊國屋書店

この本のタイトルを時々、ネタにしたりする僕だが、決してネタにしているだけではない。

積算中の真夜中、休憩がてら再読していた。

「愛は技術である」と言い切るフロム。
訳者のあとがきが良くまとまっているので要約すると、

人間が社会的存在である以上、愛も社会構造の大きな影響を受ける。
いまの僕らの愛=社会の特徴を反映したものであり、産業革命以降、社会の特徴はほぼ市場原理に基づいた「市場原理」、すなわち、「資本主義」であろう。
資本主義の中では全てが金に換算され、「公平」に交換される。
しかし、本来、「愛」は、その中に含まれないものである。 訳者のあとがきの要点

まさしく、その通りだろう。

消費活動が推奨され、GAFAらに勝手なマイニングをされ、あわよくば目に見えない全体主義的な「トレンド」が正義となりかねない現代では、「愛は崩壊した」というフロムの言う通りかもしれない。

こうした現代社会に生きる我々にとって、愛を語ることは、説教でしかない。
自分に対して、忍耐力と集中力を持って敏感になる=自分をよく「分析」すること。
自分を省みたり、コーザリティを考えることも放棄し、他人の話に耳を塞ぐ人ほど、自分の痛みは訴え、自分の正義を振りかざし、非難する。
闇雲に他人を信じるというのは良くないが、協業会社や身近な人々まで、社会において、自身の関わる他者をフロムの言う「『信念』を持って信じる、可能性を信じる、信じる勇気を持つ」というのは良くわかる気がする。

たまに、この本を読み返すと、恋愛や結婚生活だけでなく、「心なき経済」やGAFAに対する懸念なども考えを巡らされる。

それだけではなく、もちろん身近な家族のことも考えさせられる。

迎合することなく、時間をきちんと割いて深く考えること。

昨日のことが秒単位で消耗され、翌日には忘れ去られるような現代では、かなり意識して時間を取らねば、難しいことでもある。

火花のような情熱的な恋とは違い、灯火のようにゆっくりと持続される愛は全てを救い赦す。

1989年旧チェコスロバキア民主化運動のスローガン
「愛と真実は憎しみと虚偽を征服しなければならない」
ヴァーツラフ・ハヴェル
チェコ劇作家、チェコスロバキア大統領(1989年 - 1992年)、チェコ共和国初代大統領(1993年 - 2003年)

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