「シャアの二面性」と「いちばんの近道」
「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」をご存知ですか?
最も影響を受けた映画のひとつです。公開は1988年。触れる度に感想が変わります。優れた文学作品がそうであるように。
惑星アクシズを地球に落として寒冷化させ、人類による汚染から守ろうとするシャア・アズナブル。すべての人間が宇宙に出てニュータイプへ進化することが彼の理想です。
シャアは連邦政府との和平交渉でアクシズを入手すると、あっさり条約を破って戦闘を再開します。一方フィフス・ルナの戦いでは、実力を発揮できないアムロを見逃しました。しかもサイコフレームの情報を密かに提供し、ライバルが搭乗するνガンダムを強化させている。
汚い敵に対しては卑怯な策も辞さない。でも実力を認めている相手とはイーブンな条件で競い合う。狡猾な政治家と真っ直ぐなパイロットの二面性に魅力を感じます。ゆえにかつてはシャアに賛同し、同じ過ちを繰り返す人類を革新するにはこれぐらいのことをやらなきゃダメだと考えていました。
しかしいまは100%アムロの側に立ちます。寒冷化なんて傲慢の極み。宇宙に出たくても様々な事情で出られない人だっているのです。地球に留まって既得権益を貪る輩と一緒くたにして潰すのは乱暴すぎる。
「貴様ほど急ぎすぎもしなければ、人類に絶望もしちゃいない!」
アムロのこのセリフがすべてです。以前シャアから「いますぐ愚民どもに叡智を授けてみせろ!」と責められたことへのアンサー。愚民とか叡智とか、もうその時点で違う。みんながシャアだったら世の中は収拾がつきません。
自分は正しい。だからそれをわからぬ馬鹿は力で粛清していい。そんなことをしていたら次は己の番です。フランス革命におけるロベスピエールのように。
時間をかけ、丁寧に伝えてわかってもらう。少しずつ味方を増やす。結局はそれがいちばんの近道。そう信じて諸々に取り組んでいきます。