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誰かに勧められた本は読みたくなる 。 Vol.2

先日、ご好評いただいた「勧めたい本」シリーズ。
https://note.com/booklabtokyo2020/n/nc88d472f6885

今回もブックラボユーザーの皆さんからの「誰かに勧めたい一冊」をコメントとともにご紹介します。

今回は全て小説。物語の設定と共に、読んで感じた想いを語ってくださいました。

■蜜蜂と遠雷(恩田陸/幻冬舎)

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何年か前に、どうしても小説が読みたい衝動に駆られたことがあり、ちょうどそのころ買った数冊の中に「蜜蜂と遠雷」がありました。
あらすじは見ずに、作者が恩田陸というだけで買ったのですが、これがまたとてもいい出会い

物語の舞台になっているのは国際ピアノコンクールで、予選から本戦まで、いろんなコンテスタントや審査員の視点から話が進行していきます。
気づけば、彼らの演奏を聞いて(実際には読んでいるのだけど)、演奏ホールの観客席に座って拍手している自分がいるほどに没頭しました。

非凡な登場人物たちの、音楽に対する尊敬とか感謝とかそういう感情を体験できたのも面白かったのですが、なによりも、頭の中の映画監督になって、人とか情景、音まで自分の想像力の限り描写していくのはとてもいい気分でした。

これが小説の醍醐味だったなと改めて。 映画化されてますが、本で是非!


■マチネの終わりに(平野啓一郎/文藝春秋)

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「たった三度会ったあなたが、誰よりも深く愛した人だった」という、超ロマンチックなキャッチコピーで、福山雅治さんと石田ゆり子さん(神キャスティング)が映画化もしています。
ふたりの雰囲気と音楽は最高なのですが、シナリオはやはり原作の圧勝です。でも映画のおかげで、原作読んでも福山と石田ゆり子で脳内再生されるのはありがたいですね。

パリ在住のジャーナリストが、東京で天才ギタリストと出会い、ニューヨークで再会するお話。3回だけ会った人のために婚約破棄とか、現実では起こらないドラマに浸れるとこが良いです。
2人のすれ違いを軸に、生と死、親と子、戦争と世界、芸術と苦悩など、色んな問いを投げてくるのですが、一番象徴的なのが「過去は変えられる」というくだり。
 「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど本当は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられる、とも言えるし、変わってしまうとも言える。過去はそれくらい繊細で、感じやすいものなんじゃないですか?」 「間違ってなかったって言えるのは、今この瞬間。私の過去を変えてくれた今。」全編を通したこのシークエンス、めちゃくちゃ美しいです。


■わたしを離さないで ( カズオ・イシグロ / KADOKAWA)

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小説は、ハラハラして最後に大どんでん返しがあり衝撃で終わる、ものもあれば、読み終わった後に静かに考えさせられるものもあると思います。
この物語は確実に後者。
日常生活の様々な場面で、ふと登場人物を思い出す瞬間があり、そういえばあの場面って…と再び物語に引き戻されたりもします。

この物語の舞台は外界から隔絶された全寮制の学校で、「提供者」という残酷な使命を背負った子供達の施設。自分の運命を知らされながらも、人間関係、恋愛での葛藤する姿は、切なくもなり、勇気づけられます。
もしかしたら本当にそのような世界があるのではないか、と思わされるその設定と細かい描写に読み入ってしまうはずです。(ちなみにわたしは健康診断の時にいつもこの物語を思い出します)
2017年、ノーベル文学賞受賞で注目となったこの作品。綾瀬はるかさん主演でドラマ化もされています。
この物語でしか感じることができない、感情があると思います。
まだ読んでない方、ぜひ一度読んでいただきたいです。


■失はれる物語 ( 乙一 / KADOKAWA)

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暗め・ホラー要素強めのミステリーを多数執筆する小説家・乙一の短編集。一方、本書は「きれいな乙一」と呼んでいいほどほのぼのした話が詰まっています。 とはいえ、乙一らしさが失われていないのがすごい!と感嘆せざるをえない! 個人的には「乙一ベスト集」くらいに思っています。

中でも一番好きでおすすめなのは、「幸せは子猫のかたち」
 事故物件に住むことになった主人公が、その物件に住みついている子猫と、件の幽霊との不思議な共同生活を送ることに。人間・子猫・幽霊間のコミュニケーションを通じて、とある事件の核心に迫っていくことになります。 キーワードがホラー要素多めなのに全く怖くなく、むしろほっこりと和ませてくれます。 前半のほのぼのしたトーンから、後半の真相に迫っていく描写はミステリー作家である乙一さんならではの展開でどんどんと引き込まれていきます。

いずれの作品も心温まる話で、でもなぜか最後には何か切ないようなもどかしいような、不思議な感覚になるのものばかり。 

ぜひこの感覚を本書で楽しんでいただきたいです。

熱い紹介文を読むと、どれも読みたくなってしまいます。早速、今週末は小説を読んで過ごします。

BOOKLABTOKYO 富澤

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