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2.バウムクーヘン

子どもの頃に大好きだった絵本がある。
「バウムクーヘンどこへゆく」
バウムクーヘンが大好物のくま、ポンデはある日、いつものカフェでバウムクーヘンを注文。いただきます!と食べようとしたら、そこには見知らぬ小さなくま。
お皿から逃げ出したバウムクーヘンを追って、ポンデは駆け出す。

私はこの絵本の、ポンデが見ているカフェのメニューが好きだった。様々な味の、カラフルなバウムクーヘン。

「プラムに メロンに ベイクドチーズ ブルーベリーに チョコレート きょうはどのあじたべようか」

見ているだけでワクワクして、幼い私は目をキラキラさせて何度も読んでいた。

私はバウムクーヘンの、層が重なっている所が好きだ。
1枚ずつ剥がして食べることはできるだろうか、と考えてみたり、線をなぞってみたりするという変な子どもが
またここに誕生していた。
層つながりでいうと、ミルフィーユ、ミルクレープも
大好きで、こちらはフォークで上からズダダッと層を
感じながら切るのが気に入っている。
これに関してはミルクレープの感触が圧倒的勝利。

なぜこれほどまでに「層」に惹かれるのか?
幼稚園の頃、私は木登りが好きで、切り株に腰掛けたりするのも好きだった。
木が生きてきた証である年輪。バウムクーハンの年輪。
バウムクーヘンの生きてきた証…。
いやはや、そんなものはどうでもよくて、美味しいバウムクーハンを、感じるままに楽しめばよい。

大人になった私は、バウムクーヘンが有名な会社を3社程受けた。食べ比べてみたり、お菓子への愛を語ってみたりしたけれど、その中で唯一内定が出た1社に、私は行かなかった。
今いる場所は、バウムクーヘンとはまた違うお菓子を売っているけれど、年月を重ねた私のおなかの中には
ぐるぐると、何層もの思い出の年輪が重なっている。


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