新生R-1グランプリを観て、賞レースは人間同士のぶつかり合いだと再認識した。
昨日開催された新生R-1グランプリ。
それまでのR-1ぐらんぷりから、ルールや構成など大幅リニューアルされた大会だった。
賞レースの面白さといえば、もちろん芸人さんたちのネタなのだが、もう1つ大きな魅力として「芸人さんたちの人生模様」があると思う。
この賞レースに人生を賭けて挑む姿。無名芸人であっても決勝で爪痕を残せば、文字通り、''人生が逆転する''。
そんな1人の人間のとんでもない人生の岐路を目の当たりにすることが、賞レースの魅力なのだ。
(これはお笑いに限らず、甲子園なんかもそうだ。球児の野球への熱情や、これからの将来に想いを馳せ、青春を肌で感じる。)
今日までのそれぞれのストーリーがあり、人間同士がぶつかり合っている。
そして、今回の新生R-1グランプリを見て、私たち視聴者がその人間同士のぶつかり合いを感じるには、「余白」が必要だと感じた。
▶出場資格の変更
新生R-1グランプリの大きな変更点といえば、出場資格に芸歴の制限がついたことだ。
芸歴10年以内の若く新しい芸人達が、テレビに出る機会を与えるという試みだ。
確かに、R-1ぐらんぷり決勝出場者は常連が多く、テレビ好きや毎年R-1を観る人間からしたら、目新しさは無かったかもしれない。
その点、今回の変更によって、若手がテレビに機会を与えることに成功したし、結果的にエントリー数は例年より多かった。鉄壁の常連がいなくなり、ハードルが低くなったとも言えるだろう。
しかし、あまりにも発表が突然だった。
多くのピン芸人にショックを与え、最終的には常連たちを悲しむ声から別のピン芸賞レースができるほどだった。
若手にはプラスになったが、中堅の''遅咲き''という夢を掴むチャンスは失われた。
(むしろ、このR-1改正で最大のチャンスを掴んだのは、若手ではなく、おいでやす小田とこがけんである。)
そのため今回は、がむしゃらに頑張って、やっと日の目を見た!的なストーリーを感じることは出来なかった。いわゆる遅咲きスターの誕生の瞬間を見られなかったように思う。
やはりみんながフラットに出場できた方が、様々な人間模様が見られて面白いと思う。
▶審査員の批評
私は前から審査自体ナンセンスと言っているが、それは一旦置いておいて、審査の重要性は主張したい。なぜなら''スター輩出の機会を与える''という素晴らしい賞レースだからだ。
審査自体ナンセンス、かつ、審査員なんて何を言っても叩かれるのだからやりたくない。けど、引き受けてくれる豪華な審査員たちには頭が上がらない。
不正等よっぽどの事がない限り、審査員を引き受けてくれた芸人さんたちに、私たちが文句を言う筋合いはないと思う。
むしろ、今までいろんな苦労や経験をしてきた審査員たちがそれぞれどんな基準で審査をするのかも見所だ。
まさに、審査員の芸人人生という''目''を借りることができる。
ここでも、1人1人のストーリーが感じられる。
今回の審査員の選抜は非常に良かったと思う。
ピン芸は、1人であることが条件なので多種多様な芸風になる。漫談、コント、フリップ芸、歌ネタ……、キングオブコントよりも多種多様だろう。
それを審査するにあたって、いろんな芸風の方を入れてくれたのは素晴らしい!
現役でピン芸を極めている方や決勝進出経験者もおり、さらにはモノマネのホリさんもいたので、審査の視点は幅広かったのではないだろうか。
(欲を言えば落語家がいたら良かったが、落語家は審査員やりたくないのかな……)
これだけの豪華な審査員で期待が高まったこともあり、今回の最大の残念ポイントは、審査員のコメント(批評)が聞けなかったことだ。
それぞれの採点基準が分からない!教えてほしい!
先程述べたような''目''を借りる体験が、全く出来なかったのだ。
もちろん点数から推測することも可能だが限界がある。
個人の最高点や最低点などを細かく見てみると、審査員によってバラつきがあるからだ。
特に今回は番組自体の「時間が足りない」雰囲気があった。
1人ネタ時間3分という短さもさながら、1人ずつオープンしていた点数が一気に開票するシステムに変更されるなど、元々少ない放送時間がさらに押していたようだった。
そもそも2時間という放送時間の中で、審査の方法を丁寧に検討する必要がある。
例えば、各芸人に対して100点満点の審査をする絶対的審査より、今まで通りの3組ずつの相対的審査の方が時間がかからない。
もちろん前者の方が、審査員の「人間性」が分かるのだが、コメントが出来なくなってしまうなら本末転倒である。
それなら後者で「こういう基準で比較させてもらいました」「ここを見た時にこっちの方が良かった」と少しでもコメントをしてくれた方が分かりやすかった気がする。
せっかくの豪華審査員が活かせていないことが残念でならない。
▶まとめ:余白が足りない
やっぱり人間同士のぶつかり合いを見るには「出場者の熱意」「敗退者の想い」「審査員の批評」「優勝者のコメント」などを聞く時間が必要であり、審査中の時間などで視聴者がピン芸の余韻に浸る時間も必要なのだ。
淡々とネタ→点数→ネタ→点数と続いてしまうと、1人1人の人生を賭けるほどの笑いへの熱情が薄れてしまう。
ただ単に点数をつけるだけの大会になってしまうのだ。
それが残念であった。
考えたり感じたりする余地を、幅を、与えてほしかった。
そして、人間同士のぶつかり合いを感じたかった。
しかし、新生して1回目の大会。いろいろな不平不満が出て当たり前である。時間が無くアクシデントもある生放送、さらにはコロナ禍で進めなければならなかったこと、非常に厳しい環境であっただろう。
これからのR-1グランプリに期待していきたい。
改めて、ゆりやんおめでとう!芸人さんたちに幸あれ!
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