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むずかしい平凡 自句自解 第一章「むずかしい平凡」

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拙句集「むずかしい平凡」の自解を行っています。もしよければ俳句を楽しみつつ、お付き合いください。
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#ヒアシンス

46 鎖をなして星潤むなり多喜二の忌

 句集「むずかしい平凡」自解その46。

 多喜二とはプロレタリア文学作家小林多喜二のこと。亡くなったのは1933年2月20日。

 貧しい家庭に生まれ、しかしその中でよく学び、優秀な成績で学校を卒業した。けれども、あまりにもひどい資本主義体制により、貧しい人たちが人間性を奪われて日々を暮らしているのを目の当たりにし、共産党に入党。非合法活動をしながら、社会を告発する作品を書き、当然、特高警察に追

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45 ヒアシンスゆっくりひらく術後の手

 句集「むずかしい平凡」自解その45。

 この句も、前回と同じく手術のあとの体験を題材にしたもの。とはいえ、体験とも呼べないほどの一瞬の景に過ぎませんが。

 麻酔から覚めて、意識がゆっくりゆっくり戻ってくるわけですが、そのとき、どうも現実感がないんですね。さっきまで手術を受けていたということが、頭では理解できるんですが、ただベッドに横たわっているだけだと、どうも現実味が欠けてしまう。自分の体が

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